No.36 ケリー・ヤン様 (Farrer Park Hospital/ファラーパーク病院) 後編「外国人は当たり前」

インタビュー

前回に引き続き、ファラーパーク病院のケリー・ヤン看護部長へのインタビューをお送りいたします。

海外からの看護師でも大丈夫

国外から来た看護師でも、問題なく働いていけるのでしょうか。

ケリー: 国外から来る看護師は、シンガポールで働く上では必ず、国が定めた面接を含む看護師試験を受けなければいけません。

試験の形式は色々ありますが、無事通過した人のみが働けるようになります。

彼らに対する教育制度はどのようなものがありますか。

ケリー:海外からの看護師に対して3カ月のオリエンテーション期間があります。

その中で病院の紹介をするのは勿論、シンガポールの医療業界で働いて貰うわけですから、この国の規則に沿った看護技術、患者さんと信頼関係を築く方法を身につけて頂いています。

そしてこの期間が終わる頃には配属される部門の仕事を、ある程度は理解できている状態にし、配属後も3ヶ月間は病棟内で指導をする人をつけています。

プリセプター制度も導入していますので、一定期間常に一緒のシフトに入って貰ってOJTも行います。

3ヶ月が終了すると今度はリーダーの看護師により、看護知識やプロセス、勤務態度など多方面からの査定を受けるようになっています。

試用期間は6ヶ月あるのですが、それが終わってからも半年に1回は面接やケーススタディにより評価を受けます。

国外からの看護師でも2年程度経つと、シンガポールで教育を受けた看護師とほぼ同じように仕事ができるようになります。

私自身も職員に対するサービス研修を担当しています。

この研修は全職員が受けるもので、全部で12回ありますから、私も新しい方と顔見知りになれます。

そしてその研修時に困っていることや問題があれば、直接私に相談ができるようにしています。

シンガポールは多文化共生社会ですから、患者さんもそうですが、英語がわからない方もいます。

もしスタッフの中で英語に不安を抱えている人がいれば、病院として、彼らに英語教育をすることもあります。

それとは別に、専門性を深める希望を持っている方にはセミナーですとか勉強する機会を提供しています。

プリセプターはどのように決められるのでしょうか。

ケリー:アメリカ発祥のマッチングシステムを使っています。

新人にはオリエンテーション期間が終わる前に質問票に答えて貰うのですが、それにより回答者の性格や学習スタイルがわかるようになっています。

そして、その人と相性の良い先輩を選出してプリセプターになって貰っています。

ただ勿論、この結果も絶対ではありませんのでその2名の関係性によっては適宜変更もします。

シンガポールでは外国人は当たり前

他の国出身の方と働くのは珍しく無いことなのでしょうか。

ケリー:シンガポールは元々国際的な国なので、他の国から来た方と働くのは慣れています。

看護師ももちろん病院では他の国から来た方と働きます。

みな、違う文化や生活背景を持つ彼らを尊敬しています。

国外からいらっしゃる方は、彼らの文化のみならず、良い看護の習慣や情報をシンガポールに持って来てくれますから貴重な存在です。

海外の人と一緒に働くのは当然、という環境になっているのですね。

こちらの病院ではシンガポール以外から来ている方はどのくらいいらっしゃいますか。

ケリー:70%はシンガポールの方で、30%が国外の方です。

国外で一番多いのはフィリピンで8%、あとはインドと中国が5%ずつという構成になっています。

フィリピンやインドでは英語が公用語になっています。

言語の問題が無いので来やすいのだと思います。

ケリーさんから日本の看護師へメッセージ

看護師であることはとても名誉なことです。

私たちは患者さんだけでなく、患者さんのご家族の方も含めてケアをしています。

看護師になるということは人の命を救うこと、人を健康にすることであり、本当に尊い職業に就くことを意味しています。

時々は患者さんや病院組織の中で意見が対立することや、壁にぶつかって大変な思いをすることもあります。

でも忘れないで欲しいことがあります。

私たちは、日々ただ看護師として働いているだけではなく、看護師という同じ職業に就いている人たちを導いているということです。

これはとても素敵なことです。

看護師になるという尊い決意をされた皆さんが、困難な場面に於いてもその中に意味を見出されることを願っています。

人を健康にする時に大切なのは、生きる喜びを人に与えたい、と思うこと。そして人と共に喜ぶことです。

皆さんにも、楽しみながら看護師を続けて欲しいと思います。

シンカナース編集長インタビュー後記

シンガポールにおける看護環境について、ケリー看護部長からとてもポジティブなお話が沢山伺えました。

英語も堪能なケリー看護部長は、多国籍の看護チームを実際にマネジメントされています。

文化の違い、基本的な教育の違いを乗り越え、いかにしてチームを形成するか?ということに尽力されていらっしゃいました。

ケリー看護部長が勤務されている、ファーラーパーク病院と同ビル内にあるのは、以前シンカナースインタビューでご紹介したニチイインターナショナルクリニック

日本人が、ニチイインターナショナルクリニックを受診し、更なる検査や、時として入院などが必要になった時は、こちらのファーラーパーク病院にて継続した医療を受けることが出来る連携が取られています。

日本では、まだそれほど外国人スタッフとの協働を体験した看護師は少ないかもしれませんが、いつか来る未来のために、こうした先駆者の考えを知ってもらえたら幸いです。

ケリー看護部長、この度は本当にありがとうございました。

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ファラーパーク病院inシンガポール