ニュージーランドで働く Vol.5 看護実習 その 3

コラム

初めての皮下注射

忘れもしない、人生初の皮下注射のお話をしたいと思います。

Geriatric Ward(老人病棟)での実習時、パーキンソン病と認知症を発症し、既往に糖尿病のあるMさんに、インスリンの皮下注射を施行することになりました。

私が実習を経験した病棟などでは、積極的に学生をケアや処置に参加させて下さいました。

 大きくて優しいMさん

Mさんは白人男性、70代、大柄な方で、ヨーロッパ生まれのニュージーランド在住の方でした。

実習初日から、関わらせていただいた心優しい患者さんでした。

パーキンソン病であったこともあり、前のめりに歩く方で、わりと歩くのが早く、大変歩くのが好きな方でした。

私が注射をしてもいいですか?と尋ねると即答で「OK」とウィンクしながら了承してくださいました。

 当日・・・

初めて注射を打つ当日、指す場所の角度を何回練習しても、インスリンの量を何度確認しても、ドキドキが止まらず、手が震えていたのを覚えています。

担当の看護師さんの監視下で、その時はやってきました。

Mさんの大きな腹部をアルコール綿で消毒し、注射針の角度を看護師さんに2~3回確認しながらインスリン投与を行いました。

「もう終わったの?痛くなかった。」と言ってくれましたが、その日の夜は、Mさん大丈夫かしら?何か不具合は起きていないかな?などと考えては不安になり、眠れない夜を過ごしたことを今は懐かしく思い出します。

 チャーミングなMさん事件

Mさんは、数字を覚えるのがとても得意な方で、看護師や医療者が病棟から出る時にドアを開けるピン・コードを何度も盗み見ながら覚えたようで、ある日、病棟からいなくなってしまいました。

大きな通りをパジャマで歩いているのを警察の方が保護してくださり、病院まで連れて帰ってきてくれました。

その時のMさんのいたずらっ子のような笑顔は忘れられません。

失敗して、見つかっちゃったと、言って笑っていました。

数年後、Mさんが亡くなったと、看護師さんから教えてもらった時には、涙が止まりませんでした。

 

実習先が少なかったため、同じ病院内で何度も実習をしたので、看護師さんとも仲良くなり、実習先に挨拶に何度も行っていました。

ですから、自分が担当した患者さんが退院されたことや、亡くなったことも何度か教えていただきました。

おまけのお話し

上記の実習中のお話しです。

私が通っていいた学校に日本人の学生は当時私1人でした。

また、病院でも日本人は珍しいらしく、ある日男性の患者さんの食事介助をしようとしたところ、「おまえは誰だ、〇〇国のスパイだろう!」「スパイだー、スパイがいる!」と叫ばれたことがありました。

周りの患者さんも看護師さんも大笑いでしたが、食べ物を投げられたり、叩かれたりするのではないか?と不安になり、あたふたしていました。

スパイと間違われたのは後にも先にもこの1回だけでしたが、海外で働くと、日本では経験しないような出来事にたまに出くわしていました。