湘南・藤沢で開院15年目を迎えたクローバーホスピタルは、
地域包括ケア構想を先取りした医療を展開してきているようです。
院長の鈴木勇三先生に病院の特徴や先生のご経歴を伺いました。
嶋田:今回はクローバーホスピタル院長の鈴木勇三先生にお話を伺います。
先生どうぞよろしくお願い致します。
鈴木:よろしくお願いします。
嶋田:最初に貴院の特徴をお聞かせください。
鈴木:当院は今年が開院15年目に当たります。
開院当初からあえて急性期医療ではなく、
地域の急性期病院と在宅医療、医療と介護を結ぶという立ち位置で続けています。
嶋田:後ほどその辺りの特徴をもう少し詳しくお聞かせいただきますが、
まずは先生が医師になろうとされた動機を教えていただけますか。
鈴木:父親の実家が代々、医師の家系だったことが大きいと思います。
嶋田:何代ぐらい医師が続いている家系なのでしょう。
鈴木:だいぶ続いています。
ご先祖様は源頼朝の侍医でした。
実家は頼朝が流罪された伊豆にあります。
ただ、父親は医師でなく、父の兄が医師だったのですが台風に被災し亡くなってしまい、医師の系統がいったん途絶えていました。
そういった話を聞かされて育つうちに、医師という職業に次第に興味を持つようになっていきました。
嶋田:医学部に進まれてから何か思い出に残るエピソードはございますか。
鈴木:大学は山形でしたので冬はスキー、雪がない季節はテニスをしていました。
嶋田:スポーツがお好きですか。
鈴木:そうですね。
スポーツは大好きで、今はひたすら走っています。
嶋田:マラソンでしょうか。
鈴木:トレランといって山を走るレースです。
ウルトラトレイルという山の中を100㎞ほど一晩かけて走るレースにも月1回出ています。
嶋田:月1回とは凄いですね。
では普段から鍛えていらっしゃるのでしょうか。
鈴木:はい。
当院は急性期病院ではないので年配の職員が多いのではないかと思われるかもしれませんが、
実は常勤医10人の平均年齢は40歳前後です。
まだバリバリの若い医師が多く「医者は体力勝負」と言って、
みんな筋トレをしたりプロテイン飲料を飲んだりしています。
なにしろ自分が健康でなければ、患者さんが納得する話をできませんから。
嶋田:患者さんへの説明の一助として身体を鍛えていらっしゃるのですね。
もっとスポーツのお話をお聞きしたいのですが、話題を先生のご経歴に戻しまして、
ご専門領域をお決めになられた頃のことをお聞かせいただけますか。
鈴木:私は呼吸器とアレルギーを専門としてきました。
きっかけは大学6年生の時に実習先の病院で、
30代前半で末期の肺癌の患者さんを担当させていただいた時のことです。
リンパ管に沿って癌細胞が浸潤する癌性リンパ管症のため血液の酸素化がされず、
いくら呼吸管理を工夫しても低酸素血症が改善されない病態で、
癌の末期でも最も患者さんを苦しめる状態でした。
その患者さんを担当し、人にとって呼吸ができないことほど辛い事はないことを痛感し、
呼吸器を志しました。
大学を卒業し研修期間が終了した後は横浜市立大の大学院で喘息の研究に携わりました。
喘息では、ふだんは普通に生活している人が突然発作で苦しみ、時には亡くなることもあります。
その急変の機序が不思議だったのです。
嶋田:呼吸器やアレルギーの診療に、どのような魅力をお感じになられますか。
鈴木:呼吸器疾患と聞いて、みなさんがどのようなイメージを持たれるのかわかりませんが、
実は一般内科を受診される患者さんの最も多い主訴は「咳」です。
しかも咳の診断・治療は容易でなく、
慢性咳嗽のためにドクターショッピングを繰り返している患者さんも少なくありません。
ですから実臨床において、咳をしっかり診て治療することは非常に大事なことだと思っています。
嶋田:確かに少し風邪ひいて咳が止まらないだけでも眠れなくなったりしますね。
鈴木:ADL低下に直結します。
また肺癌や結核など、見逃してはいけない咳もあります。
結核は決してまだ稀でなく、早期に診断しなければ感染が拡大してしまいます。
高齢者の咳では誤嚥の問題がいま、大きなウエイトを占めています。
誤嚥をどのように予防するか、誤嚥性肺炎にどのように対応するのかといったことは、
国民全体で考えるべきことではないでしょうか。
嶋田:貴院には嚥下障害のある高齢患者さんも入院されていらっしゃいますか。
鈴木:そうですね。
当院の4つの病棟のうち地域包括ケア病棟では、
誤嚥性肺炎の急性期で他院に緊急入院した患者さんを早目に引き受け、嚥下評価や嚥下リハビリを行い、
食べられる方はしっかり食べられるようにし、
食べられない方は今後どのような人生を過ごすかを一緒に考えるというスタンスで診療しています。
在宅復帰が困難な方の場合、
ご家族とともに少しでも良い時間を当院で過ごしていたいただくことも当院の役目の一つです。
後編に続く
シンカナース株式会社 代表取締役社長
看護師として勤務していた病院において、人材不足から十分な医療が提供出来なかった原体験を踏まえ「医療の人材不足を解決する」をミッションに、2006年に起業。 現在、病院に対しコンサルティングおよび教育を通じた外国人看護助手派遣事業を展開。25カ国以上の外国人看護助手を育成し、病院へ派遣することで、ミッションを遂行している。 東京都立公衆衛生看護専門学校 看護師 東洋大学 文学部 国文学科 学士 明治大学大学院 グローバルビジネス研究科 経営管理修士(MBA) 日本大学大学院 総合社会情報研究科 総合社会文化博士(Ph.D.) ニュージーランド留学 帝京大学医学部附属病院 東十条病院 三井住友銀行 元東京医科歯科大学非常勤講師 元同志社大学嘱託講師 元日本看護連盟幹事 元東京都看護連盟幹事 日本看護連盟政治アカデミー1期生 シンカナース株式会社/代表取締役社長 著書 『わたしの仕事シリーズ2 看護師』新水社 『医師の労働時間は 看護業務の「分業化」で削減する』幻冬舎 『外国人看護助手テキストブック』幻冬舎