埼玉県立循環器・呼吸器病センターの病院長、星永進先生は、
心臓外科医として10年におよぶ研鑽を積まれた後、呼吸器外科へ移られました。
その転科の経緯も含めて先生のご経歴や、院長としての目下の課題をお尋ねしました。
胸部疾患専門病院
中:今回は埼玉県立循環器・呼吸器病センター病院長の星永進先生にお話を伺います。
先生、どうぞよろしくお願い致します。
星:よろしくお願いします。
中:まず貴院の特徴を教えていただけますか。
星:当院は循環器と呼吸器の専門病院です。
診療科としては、循環器系は循環器内科と心臓外科、血管外科、脳神経外科を、
呼吸器系は呼吸器内科と呼吸器外科を標榜しています。
その他にも腎臓内科、消化器外科などがあります。
郷土の偉大な先人
中:次に、先生が医師になられようと思われた動機をお聞かせください。
星:私は福島県会津の出身で、郷土の偉大な先人として野口英世先生がいます。
子どもの頃に母親が野口英世の話ばかりするものですから、
いつの間にか「医師になりたい」と思うようになっていました。
中:地元の大学にお進みされたのでしょうか。
星:私は山形大の一期生です。
山形大は一県一医大構想に基づき開設された新設医大の一つです。
初年度の入試が、私が浪人生活を送っている10月に行われ、それに合格して11月に入学し、
1年目は4か月ほどしかありませんでした。
トータル5年数か月で卒業しました。
友人に助けられた大学時代
中:どのような学生時代でしたか。
星:小学生の頃から剣道をしておりましたので、大学でも剣道部に入りました。
あとは麻雀です。
非常に不真面目な学生で、医師国家試験にも受からないのではないかと心配していたのですが、
幸い合格できました。
中:スポーツをされながら、ご友人との良い思い出もたくさん作られて、ご卒業されたのですね。
星:同級生に助けられて卒業できました。
当時の仲間とは今までもずっと付き合いがあります。
心臓外科医としての研鑽
中:ご専門分野はどのように決められたのでしょうか。
私どもは看護師、看護学生対象のWebメディアで、
医師のキャリア形成を詳しくご存知ない方もご覧になっているため、ご経歴を少し詳しくお聞かせください。
星:外科医になりたいという希望があり、当時の山形大にあった消化器外科がメインの第一外科と
胸部外科がメインの第二外科のうち、第二外科に進みました。
第二外科は主に、心臓外科、呼吸器外科、血管外科、小児外科の四つの領域をカバーしていて、
その中で私は心臓外科を選び、卒業後は心臓外科を中心に四つの部門の診療を行っていました。
卒後7年目に国立がんセンター中央病院に半年間研修に行く機会があり、
それがきっかけでその後は肺癌の治療を専門にしたいと考え、
医局の先輩と二人で当時の教授にお願いして呼吸器外科専門にしてもらいました。
呼吸器外科へ転科
中:心臓外科医としてご経験を積まれた後は、どうされましたか。
星:今の専門である呼吸器外科に移りました。
それから26年たちます。
中:心臓から呼吸器へ移られた理由をお書きかせいただけますか。
星:国立がんセンター中央病院では、
呼吸器の進行癌に対しても非常にチャレンジングな手術を行っていました。
それを見ていて「自分もあんな手術を将来やっていきたい」と思ったのがきっかけです。
心臓と肺の手術の違いは何かと言いますと、心臓の場合は心機能を回復・改善する目的で行うのに対して、
肺の場合は肺癌の手術が主体ですので手術に成功しても呼吸機能はどうしても低下してしまいます。
さらに成功率も心臓手術に比べると低く、困難です。
しかし、癌を治して命を救うという達成感があるように感じました。
中:そういう意味ではどちらもチャレンジングではあるけれども、
より新たな挑戦を求めたということでしょうか。
星:私が大学に籍を置いていた当時、胸部外科の医師は全員、
心臓外科と呼吸器外科の両方を担当する体制でした。
しかしそれでは呼吸器の患者さんの診療が手薄になりがちで、手術の合併症も減りません。
そこで先輩と相談し、医局の中で呼吸器外科を独立させて専門化させることにしました。
院長に就任
中:それも大きな新しい挑戦ですね。
その後のご経歴をお聞かせください。
星:その後3年ほど大学にいまして、呼吸器外科の後輩を育てました。
それからは一時期、地元会津の民間病院に勤務した後、当院に就職したという流れです。
当時ここは結核療養所でしたが、
私が就職した3年後には現在のようにセンター化する構想が決まっていました。
そして平成6年に県立の循環器センターとして再スタートしました。
循環器センターという名称ですが、今と同じように呼吸器疾患も非常に多く扱っていました。
現在の名称になったのは平成10年のことです。
中:院長に就かれたのはいつ頃でしょうか。
星:呼吸器外科医長を経て6年ほど前に副病院長になり、病院長就任は3年前です。
医師の働き方改革
中:院長就任に備えて病院経営の準備勉強などはされていたのでしょうか。
星:それが全くしていなかったので、いま苦労しています。
副院長時代にもある程度は運営会議に出席するなど、経営に関する仕事もしてはいたのですが、
まだ手術をしている方が楽しかったもので。
病院長になった今は、そうは言っていられないという状況です。
中:院長として現在、取り組まれていることはどのようなことですか。
星:いま世間で話題になっている働き方改革です。
当院の場合、特に循環器系の先生の時間外労働が非常に多いので、
私の任期中にそれをなんとか改善したいと頭を悩ましているところです。
脳神経外科についても、医師数を増やしたいと考えています。
後編に続く