ニュージーランドで働く Vol.3 看護実習 その1

コラム

ニュージーランドの看護実習

私は、ニュージーランド(以下、NZ)の看護学校で看護を学びました。中でも看護実習では、いろいろな体験をしました。両国の実習に関して、形式など似ているのか、違っているのか皆さんに感じて頂けるとありがたいです。

私が住んでいた町には、実習ができる病院や施設が限られていたので、実習は近隣の町まで行くこともありました。。一番遠いところで、片道、車で1時間半ほどの施設まで3週間、毎日通いました。NZは町と呼ばれるところ以外は広大な土地が牧草地などで、町と町の間には、ほとんど何もありませんでした。訪問看護の実習では、患者さんの処置をしている時間よりも、移動時間の方が長かったこともありました。

忘れられない実習先

精神科の実習先の1つは、罪を犯した人が社会へ戻る前の、クッションのような施設で20人くらいが共同生活をしていました。刑務所から出所した後、その施設に入り、感情のコントロールの仕方や、人とのつながり方、働き方などを学ぶところでした。そこが精神科の実習先となるのも、すごいと思いますが・・・。

入所者全員とハグ

その施設では、ほぼ全員が男性で、体格の大きな人が多く、慣れるまでは、背後が気になって仕方ありませんでした。ちょっと怖いなと思ったのは、毎朝ミーティングをした後、全員が全員とハグをしなければいけなかったことです。非常に男臭い感じの人もいて、一緒に実習をしていたNZの友人もそこでのハグは遠慮したいねと苦笑いをしていました。

ドキドキだったあの日

この施設でドキドキした経験の1つに、健康診断の引率というノルマがありました。刑務所から出てきたばかりの人を、GP(町医者)まで連れていくという使命を負ったときの経験です。どういう訳か、学生の私が古いバンの運転手となりました。ミッション車だったので、車の運転もドキドキでしたが、その人が逃げようとしたり、暴力的になったりしたらどうしようかと不安でいっぱいでした。

しかし、話しているうちに、優しい人であると分かり、なぜこの人が罪を犯してしまったのか、不思議でした。この施設で、しっかりと厚生して、新しい人生をスタートさせて欲しいと強く思いました。

あれから、十数年経ちますが、今でも、あの日の深い茶色のバンとその古さ、そしてその人の顔をはっきりと思い出せます。印象的な1日でした。

あの施設でみんなと一緒に作った石鹸のカービング(彫る)、またゆっくりと製作してみたいなと思います。何かを作って、それを売るというのも大切なリハビリの1つでした。NZでは動物の骨や天然石のカービングをお土産屋さんでよく目にします。マオリ族の文化の1つです。