No.184 横浜甦生病院 澤田傑 院長 前編:人との出会い、そして努力

インタビュー

今回は横浜甦生病院の澤田先生に、病院の特色とともに、先生が多くの人との出会いの中から

ご自身の進むべき方向を探り院長になられたご経歴についてお話しいただきました。

緩和ケア・地域医療に特化

中:今回は横浜甦生病院病院長の澤田傑先生にお話を伺います。

先生、どうぞよろしくお願いいたします。

澤田:よろしくお願いいたします。

中:まず貴院の特徴を教えてください。

澤田:当院は地域医療を担う病院という位置付けで、

一番の特色は病床数81床のうち緩和病棟を12床もっていることだと思います。

弓道に熱中

中:より詳しく地域医療における貴院の役割や、看護師へのメッセージ等を後ほど

お伺いさせていだきますが、最初に先生が医師を目指された動機をお聞かせください。

澤田:中学高校と陸上競技をやっていたのですが、よく怪我をする選手でした。

怪我をする度に整形外科の医師にお世話になり助けていただいておりました。

そのうち自分自身が整形外科医になろうという思いが生まれ、

医学部を目指し岐阜大に入学したという経緯です。

中:医学部での学生生活の思い出をお聞かせいただけますか。

澤田:大学時代は弓道部に所属し、1、2年生の頃は本当に毎日弓道に明け暮れる日々を送っていました。

自分が医者になろうとしていることを少し忘れていた時期もあります。

ただ3年生になり専門課程が始まりますと、

徐々に医師を職業とすることの責任感が芽生えてきたように記憶しています。

人の出会いと進路決定

中:ご入学時点では整形外科を目指していらしたということでしたが、

実際にはどのようにご専門領域をお決めになられましたか。

澤田:本当に卒業直前まで整形外科を専門とするつもりで勉強していたのです。

しかしサークルの部長を務められていた第一外科の教授から非常に熱心に勧誘されるうちに

「若いうちは少し苦労して消化器や心臓の手術もある程度オールマイティにできるスキルを

身につけるべきではないか」と思えてきました。

岐阜大の第一外科は首から下の全てを対象とする外科で、一般外科で勉強した後、

改めて好きな専門を選べば良いという考え方で判断しました。

中:ご自身の希望や考え方はあったとしても、経験の積み重ねや人との出会いにより、

新たなご興味の対象を発見できるということですね。

澤田:おっしゃる通りだと思います。

いろいろな場でいろいろな経験をしていくうちに、自分の興味が変わっていったり、人との出会いによって

自分のやりたい方向性が変わったり、新たに見つかることもあるのではないかと思います。

努力が後から自信に変わる

中:示唆に富んだお話だと思います。

と言いますのも、看護師の間でも配属先が自分の希望と違うためにすぐに退職する

という話を耳にすることがあり、それでは少しもったいないと感じることがありますもので。

澤田:やはり苦労してでも努力しているうちに、知らず知らずにさまざまな技が身についてきます。

若いうちに苦労しておけば、将来ベテランになってから自信を持って後輩にアドバイスできますし、

いろいろな場面で経験が役立ってくると私は思います。

外科医としての研鑽

中:続いて先生のご経歴についてお伺いいたします。

第一外科に入局された後、どのようなキャリアを積まれ現職に就かれたのでしょうか。

澤田:卒業して2年間、大学の関連病院で研修を受けた後、

愛知県立がんセンターで消化器外科のレジデントとして2年間国内留学いたしました。

今でもあまり変わっていませんが、当時は外科医が手術だけでなく化学療法から緩和ケアまで

すべて担当していたため、術式に加えて化学療法や緩和ケアの知識と方法を学びました。

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大学の関連病院に戻り2年たった後、博士号を取るために大学へ戻り研究生活に入りました。

博士号取得後は大学の助手、臨床講師として教育に携わった後、

愛知県立がんセンター時代の上司の紹介で横浜の病院へ転勤し、外科の臨床経験を積んでいきました。

その後、以前から興味のあった下肢静脈瘤関連の学会に参加した際に高名な先生からオファーをいただき、

血管外科の専門クリニックへ移りました。

さらに、フィンランドのヘルシンキ大の血管外科とドイツのフライブルク大のハートセンターで

静脈瘤治療の研鑽を積む機会に恵まれ、静脈瘤についてはかなりスキルを身につけることができました。

帰国後、当院に入職し、病院長になったという経歴です。

中:転機のたびにさまざまな人との出会いが必ずあり、

それが新たなキャリアを積まれるきっかけになっていったのですね。

澤田:毎日の仕事をしている中で知り合った先輩や友人、恩師などの紹介や協力があって、

今の私に至ったのだと考えています。

地域のニーズに応え続ける

中:現在は院長として病院経営をされ、臨床医としてのキャリアとはだいぶ異なる役回りかと思います。

そういうお立場で先生がいま大切にされているポリシーはございますか。

澤田:当院は先ほど申しましたように地域医療が中心ですから、地域住民の方に

安心安全な医療を提供すること、それをコツコツ続けていくことで地域の方に認められ、

やがてそれが病院経営上のメリットとして返ってくるのではないかと考えております。

中:そういう意味では、先生が臨床医として長年、患者さんを診られてきて、

ニーズに応えて来られたご経験と重なる部分があるのでしょうか。

澤田:おっしゃる通りです。

やはり地域住民の方がどのような医療を期待しているのかを普段の診療の中で敏感に感じ取り、

それに応えながら自分の得意分野を生かした医療を展開していくということです。

後編に続く

Interview Team