No.183 病院長 門倉光隆様(昭和大学横浜市北部病院)後編:臨床と教育、病院経営

インタビュー

前編に続き、医療環境が変動し続ける中で看護師に期待することや、

院長ご自身が院内環境改善のために行っている試みなどをお伺いしました。

 

精神的な余裕のある看護師に

中:もう少し看護師についてお伺いしたいのですが、今後、

少子高齢化の進展等により医療環境が大きく変わっていくことが予測される状況で、

将来に向けて看護師はどのように進化していけば良いのか、アドバイスをいただけますか。

門倉:もう十分進化しているとは思うのですが、個人間の差は当然あります。

例えば当院には約1,300人のスタッフがいてその半分以上の700人超が看護師です。

700人以上いれば、経験豊富な人もいれば入ってきて間もない人もいます。

上の人が下の人を指導する教育システムが確立されていますので、今後、技術革新等があり

看護に新しい技術が必要になった時にもそのシステムを通してみんなで学んでいかなければいけません。

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当院ではモーニングカンファレンスを行っていますが、そこでは医師の発表だけではなく、

例えば検査技師も報告をします。

看護師も多数出席し知識を吸収しています。

看護業務ということに絞って言えば、次々に導入される機械に慣れていただく必要があります。

とくに人工呼吸器や輸液ポンプなど、年々改良されていますので。

中:やはり看護師も時代にも対応していくために、新しいものをとり入れ学び続けることが大切なのですね。

門倉:どの職業でも新しいものを学んでいくことは大事だと思います。

特に看護師は生きている人間に接するわけですから、患者さんの身体の調子だけでなく、心の問題にも

気を配り、その全てに対応でき、精神的な余裕を持った看護師がたくさん現れることを期待します。

中:忙しくなると、どうしても態度に角が立つようになりますが、

そういう時こそ精神的な余裕が必要ですね。

門倉:患者さんに「ちょっとすみません」と言われた時に「後にしてください」というようなことでは、

患者さんはとても残念に思われます。そういう場面でも心に余裕を持って接してあげられる、

別の言い方をすれば、人間としての温かさを持った接し方のできる看護師を望んでいます。

人生100年時代の医療

中:ここで話題を変えまして、最近話題として取り上げられることの多い「人生100年時代構想」について

お尋ねしたいのですが、あの構想について先生は何かお考えがございますか。

門倉:最近感じていることがありまして、それは40年ほど前、私が医師国家試験に受かって

「医師」と呼ばれるようになった頃と今の違いは何かということです。

お年寄りが若くなったのですね。

以前は「65歳を過ぎた方に肺がんの手術をするの?」などと言われたものですが、

今は65歳どころか80歳でも当たり前です。

さすがに90歳となると自問自答しますが、いずれそれも当たり前になるかもしれません。

ただ、高齢になれば体力は確実に低下しますので、介護の需要が増加することは間違いありません。

人生100年時代構想に関連して、我々は医療だけでなく

介護とどのように手を組んでいくべきかを熟慮しています。

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看護師によるベッドコントロールの重要性

中:続いて現在の病院経営についてお尋ねいたします。

病床数600床以上という大規模病院を経営していくにあたり、

先生が大切にされているマネジメントのスタイルといったものはございますか。

門倉:なかなか難しい質問ですね。

我々のような医療に携わる人間があまりお金儲けの話をすべきでないのかもしれませんが、

やはり病院を運営していく以上、収入を得ないと十分な医療をできず、十分なスタッフ教育もできません。

それなりの収入を得るためにはどうすれば良いのかと、毎週、管理会議などで検討しているのが現状です。

我々が最も苦心するのは、いかに有効に病床を使うか、つまりベッドコントロールです。

これはもう看護師さんの協力なしには絶対なし得ません。

空床が多いということは患者さんが少ないということで、研修医の勉強する機会も減ることを意味します。

もちろん、一人でも多くの患者さんを受け入れ、

一人でも多くの患者さんに元気になって帰宅してもらいたいという願いがあります。

そのために、地域の回復期・慢性期病院やクリニック、あるいは介護施設と連携し、いかに当院の病床を

有効活用するかが大切になり、結局それが病院の経営に最も寄与することではないかと考えています。

突撃訪問

中:院内の雰囲気や環境を改善する取り組みなどはされていますか。

門倉:各部門の責任者と私が一緒になり、毎週金曜に各部門を順番に訪れて現場を確認しています。

しかしこれは既に、我々が金曜日どこかに現れることが知れ渡ってしまったので、

現場のスタッフも構えていて、新たな発見があまりありません。

そこで最近、看護部長と事務部長と私の3人だけで、日時も場所も全く予告せずに

院内のどこかを訪問する活動を始めました。我々は「突撃訪問」と称しています。

ある病棟へ行って現場の看護師に「どう、休みとれている?」とか「何か希望はない?」と尋ねるのです。

すると「えっ、そんなこと聞きに来てくれたのですか」と嬉しい反応をしてくれることもあります。

私がどんな顔をしているのか知らないスタッフもいて、声を掛けると

「えっ?」と首を傾げられることもあります。

突撃訪問がスタッフの皆さんの働くモチベーションに繋がっていけばと期待しています。

中:現場のスタッフにとってそれは、院長がとても身近に感じられる瞬間でしょうね。

スタッフをたいへん大切にされていらっしゃるご様子が伝わってきます。

最後に先生のご趣味をお聞かせいただけますか。

門倉:学生時代からテニスをやっています。

最近は忙しくて機会がありませんが、年に2回ほど大学のクラブのOB会に顔を出して、

若い人たちと交流しています。

冬はスキーですね。

それから、数年前に家内に勧められて乗馬を始めました。

あまり乗り気でなかったのですが、やってみたら結構楽しく、時間を見つけて乗りに行っています。

大学付属病院の看護師に求めること

中:では、看護師に向けて、メッセージをお願いします。

門倉:大学の付属病院である当院では、臨床だけでなく研究、さらには

スタッフの教育といった情熱にあふれた方たちに、ぜひ集まっていただきたいなと思っております。

シンカナース編集長インタビュー後記

門倉先生の笑顔のように爽やかで緑あふれる病院です。

スタッフのモチベーションを高める意味もあり、院長自ら院内の様々な部署を訪問し、

スタッフの方々に直接声をかけられる「突撃訪問」という素敵なシステムを構築されていらっしゃいました。

また、看護界でも有名なアメリカのメイヨー・クリニックに門倉先生が留学されていらっしゃった際

のお話は、今後の医療界での課題となっている「働き方改革」にとってのヒントが沢山含まれています。

日本の良いものは継承しつつ、進化すべきポイントは先駆者に習う。

医療を継続して提供するために必要なことをたくさん学ばせていただきました。

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Interview Team