No.127 野澤里美様(原宿リハビリテーション病院)前編:精神的な看護の実践

No.127 野澤里美様(原宿リハビリテーション病院)前編:精神的な看護の実践

  • 2018年5月2日
  • インタビュー
No.127 野澤里美様(原宿リハビリテーション病院)前編:精神的な看護の実践
No.127 野澤里美様(原宿リハビリテーション病院)前編:精神的な看護の実践

 

今回は原宿リハビリテーション病院の副院長、看護部長でもいらっしゃる野澤里美様にインタビューをさせて頂きました。

野澤副院長の手腕と魅力に迫ります。

 

「神様のような手」と言われた看護

 

看護師になろうと思ったきっかけは何ですか。

 

野澤:私の姉が看護師を目指しており、姉の影響で私も看護師になろうと思いました。

看護を専門的に学びたいと思い、大学に進学しました。

新設の大学だったので、私は2期生でした。

当時は一生懸命学び、楽しい学校生活を送りました。

 

実習で心に残っていることはありますか。

 

野澤:一番心に残っているのは、実習でがんの終末期の患者さんを受け持ったことです。

癌性疼痛で「背中が痛い、痛い」とおっしゃることがありました。

麻薬などの薬剤で痛みを押さえていますが、うまくコントロールできないような状態でした。

5時間ほど患者さんと話をしました。私がその方の背中をさすると、患者さんに「あなたの手は、神様のような手だ」と言っていただきました。

子どもに「痛いの、痛いの、飛んでいけ」とよく言いますが、それと同じで人が触れることで安心を与えるという精神的な看護を実践できたと感じた瞬間でした。

その患者さんが涙をこぼしながら「ありがとう」と私の手を握ってくださり、その日の実習を終えましたが、次の実習に行ったときには、その方はもう亡くなっていました。

今でもそのことを思い出すと、涙してしまうこともあります。

 

すごく心に響く言葉ですね。

 

野澤:長く看護師をしていますが、その言葉はずっと頭の中から離れません。

医師が行う投薬や点滴、検査などの治療を通して回復していくのとは違い、看護の仕事は、私たちの力で治すことができる専門的かつ特殊性のある仕事だと、今はそれを実感します。

33年看護師をやってきた今、“看護の専門性はこれだ”と強く思います。

最大の学びは学んだことの実践

 

実践を通じて、学んだことを理解していったのですね。

 

野澤:ナイチンゲールやヘンダーソンが何百年も前に悟っていましたが、自分の学生時代や若い頃はあまり心に残っていませんでした。

経験のない若い頃は、現場で働くことで精一杯で、現場の振り返りまでできませんでしたが、看護師としての経験を積むごとに、“ナイチンゲールが言っていた看護の基本はこれ”ということが、経験を通して理論的にわかってくるようになりました。

ナイチンゲールやヘンダーソンが言う看護が、何百年も前から成り立っていたと気づくたびに、私自身熱くなりますし、それが今、私が頑張れる理由の一つでもあります。

 

学生の頃の経験が看護師になってからも活きているのですね。

 

野澤:人のぬくもりや手の温かみなど、すべてが当院の理念に繋がり「患者さまには愛を」という言葉を変換すると思いやりになると思います。

その思いやりとは、ただ相手を思うだけではなく、その人を思いやる気持ちから生まれる、手を差し出す、触れるといった具体的な行動のことを指すと思っていますので、当院のこの理念が私は好きです。

看護師として態度や技術の部分に、必ず愛が入っていると思います。

 

看護部の理念「手には技術、頭には知識、患者様には愛を」を実践するために取り組んでいることはありますか。

 

野澤:時間がある限りは、現場や病棟にできるだけ入り、スタッフと話をします。

私自身も若い頃は、看護部長は雲の上の人のように感じており、話しかけたり、相談したり、気軽に声をかけられないという経験をしてきたので、直接看護部長には声をかけにくいというスタッフの気持ちを理解できます。

そのため、可能な限りスタッフと同じ立ち位置に立ち、私の方から関わりたいと思っていますし、それは患者さんに対しても同じです。

時間がある限り病棟に入り、患者さんと関わるようにしている私の姿を、スタッフはどのように捉えているのかと考えますし、スタッフと同じ目線に立って、みんなと一緒に色々と考えていきたいと思います。

 

現場からの学びを教育に活かす

 

スタッフの教育で大事にしていることは何ですか。

 

野澤: 280名のスタッフを指導することは私一人では難しいので、各病棟でスタッフに対して細い教育をするために、私がまず師長を育てることが必要だと思っています。

朝礼では私の看護観などの話をしますが、その話の中で必ず「昨日病棟に入ったらこんなことがあった。私はこう考える」など、看護の現場に触れるような話を、いつも話すようにしています。

 

師長たちに話す際に心がけていることはありますか。

 

野澤:高いところから教科書通りに話すのではなく、現場で実践の中から感じた「看護とはこういうもの」ということを伝えたいと思っています。

可能な限り私が目にしたものや感じたこと、他にも“看護とはこういうもの”ということが師長たちに伝わるように心がけています。

具体的な話として伝えることができれば、心にも響くと思いますし、師長がそれを感じ取ることで、師長からスタッフへも声かけができると思います。

看護の仕事が好き

 

仕事をする上で、いちばん大事だと思うことを教えてください。

 

野澤:「仕事を好きになることで、いい仕事ができる」というのが私の考え方です。

特に看護師は一生看護師として仕事に就く人が多いですが、人生の7割が仕事だとして、その仕事が楽しくなければ、嫌々ながら朝起きて「また仕事に行かなくてはいけない」と思います。

それよりも、「今日は患者さんにこれをしよう、あれをしよう、あの人にはこうしよう」と、考えながら出勤する方が楽しいはずです。

そして仕事に来て、病棟に来るまでに考えていたことをきちんと実践する、その繰り返しで看護の仕事が楽しくなっていきました。

人間関係は相互作用なので、自分のやったことは必ず自分に返ってきます。自分が楽しくやったことは、患者さんからもきちんと評価されるのではないかと思います。

私が持っている情報をみんなに提供することで、みんなが仕事にやりがいを感じ、頑張ろうと思い、楽しい雰囲気になります。

そのような職場環境を整えることが私の仕事だと考えています。

 

看護師が仕事を好きになるために、具体的にしていることはありますか。

 

野澤:自分から挨拶をしたら相手も挨拶をしてくれるという、本当に基本的な指導が大事で、私はまず元気に挨拶するようにしています。

自分が常に健康を保ち、みんなに元気を与えるという看護師のプライドをもち、患者さんに関わることが大事だと思います。

そのような社会人としての基本的なスキルや看護師としてのスキルを、まずきちんと実践することで仕事が楽しくなり、自信が持てるようになっていくと思っています。

 

笑顔でいることと、楽しく仕事をすることが大事ですね。

 

野澤:私たちは機械ではなく、人を相手にしていますので、感情がすべて伝わると思います。

特に、回復期は命が助かり、「家に帰ってもいいですよ」という方の中には家に帰れない状況もあります。その方々を一人でも多く家に帰すことが、私たち看護師の役割だと思っています。

治療が終わっている段階の方々は、看護師の関わり方ひとつで患者さんの行動変容が起きるので、回復期にとって、看護師の力や役割はとても大きいです。

急性期の看護と比べても、患者さんへの関わりは看護師次第で大きく広がり、また深くなっていくというのが、回復期の特色であり、また役割ではないかと思っています。

そういった回復期の良さを、スタッフにわかってもらいたいと思い、様々なこと伝えています。そしてスタッフが患者さんと折り紙をしている光景に対して「いいことしてるね」と褒めています。

後編へ続く

嶋田 香織
A-LINE株式会社
シンカナース編集部及び営業本部長