前編に引き続き、埼玉医科大学国際医療センターの戸口修子副院長へのインタビューをお届けいたします。
「Your Happiness is Our Happiness」について教えていただけますか。
戸口:Your Happiness is Our Happiness、この言葉が刻まれた物をみんな必ず持っています。
先代の名誉理事長が「あなたの幸せは私たちの幸せですよ」という理念から立ち上がりました。
また、職員だけではなく地域の方々との「ハピネス会」も立ち上げました。
もともと埼玉医大は明治時代に小さい病院から広がったところなので地域に密着しています。
大学病院は疾患を診るというイメージがあると思うのですが、この病院の立地は都内とはまた異なり田舎に近いです。
地域の人をすごく大事にしていて交流の時間もたくさんあります。
実際に患者さんもこちらの地域の方が多いのですか。
戸口:地域の人も多いですが、大学病院なので県外の方もいらっしゃいます。
しかし「大学病院の疾患じゃないね」という患者さんも皆ここへ来てまずは診療することが多いです。
名誉理事長が起こされた「Your HAPPINESS」に基づいているのだと思います。
とても地域の方にも頼りにされていて、“最後の砦”だとおっしゃってくださる患者さんもいます。
看護補助者のお仕事について教えてください。
戸口:看護補助者はヘルパーと呼んでいます。
あまりよくない呼び名という意見もあり、変えようという動きもありますが、まだヘルパーのままです。
看護補助者は大学病院だと材料の補充などの業務がメインになると思うのですが、この病院ではSPD(物品物流管理)が入っていますので、患者さんのケアに一緒に入ってもらっています。
今は47名いますが病院の規模を考えると少ないです。
もっと入って欲しいのですが病院の特性上、ICUやHCUといった特別加算のベッドが多いので、難しいですね。
専門性の高い医療・看護に特化している病院でも看護補助者は働けますか。
戸口:実際にお願いする仕事は患者さんの誘導、搬送、食事介助、身体を拭くこと等になります。
ヘルパー2級の資格を持っている方もいますし、ヘルパーとして働いている方々に向けた研修も行っていますので、その人の知識や技術に合わせた場所に配置を考えています。
中には、看護補助者として入って来ても、看護師になりたい、とチャレンジしている若い人もいます。
ここは看護学校もあるので、今まで一緒に働いて来た方々の内、5人以上は看護補助者から看護師になりました。
看護補助者という立場だったとしても、実際に現場にいる看護師や医療を垣間見ることができますのでとても良いと思います。
こちらの病院は国際医療センターという名前の通り海外からこられる患者さんも多いのでしょうか。
戸口:外国人の受け入れ病院、指定病院ということでJMIP(ジェーミップ)に去年の5月に認定されました。
国で言うと中国やベトナムの方が多いかもしれません。
外国人の看護師は多いのでしょうか。
戸口:今当院には、チベットや中国、韓国、ベトナム出身で、日本の国家試験を通過した看護師が複数名います。
医師は、アメリカの方々と交流があるのですが、看護師はアジア系が多いですね。
タイのラジャビチ病院と提携しているので、研修医や看護師の技能の見学に来られます。
こちらの病院から海外へ研修に行くこともあるのでしょうか。
戸口:最近はイタリアに手術室の看護師とドクターが2週間短期研修に行きました。
ロボット機材に関してはイタリアの方が進んでいるのです。
その研修に行った看護師は何か目覚めたような感じで「とても良かった」と報告もしてくれました。
こちらの医療センターの看護師は直接就職するのでしょうか。
それとも埼玉医科大の中でローテーションがあるのでしょうか。
戸口:どちらもあります。
総部長が採用面接官として入っているので、採用ということになれば希望を聞いてそれぞれの病院に配置となります。ご家庭の事情や通勤を考慮してローテーションすることもあります。
新採用の人たちは大学附属と関連病院の看護学校が5校あるのでそこからの配置もあります。
看護師のキャリアに関しては如何でしょうか。
戸口:今のところ、ガン、救急、精神の専門看護師5人います。
認定看護師も各分野で18名います。
まだまだ数は少ないのが現状ですが、院内認定という制度を設け、専門性を磨いて貰っています。
今年は院内認定の修了者は19名トータルすると80名になります。その後看護協会の認定コースへ進む人も多く居ます。
今年は助産師にどうしてもなりたい、と専攻科に進むことを決めた人もいました。
当院では休職という形で病院に席を置いたまま、給料を貰いながら専攻科に進み専門性を磨ける環境があります。
また、職員キャリアアップセンターがあり看護部門に於いては、キャリア開発や人材育成を目的に設置され、個々の看護師の能力を伸ばしキャリアを高め活躍をバックアップします。
人を育てることを大切にされている病院なのですね。
戸口:この病院では「父母会」も行っています。
新採用者(新人)の試用期間6カ月後に、お父様やお母様にいらして頂いています。
離職防止のため、家族ぐるみで支援するところを目指しているのです。
父母会は今年で3回目ですが、年々参加される方の数は増えてきていまして、お祖父様やお祖母様も来られることもあります。
なかなか会えない孫に会えて喜ばれていらっしゃいますね。
病院を探されている看護師や看護師を目指している学生にメッセージをいただけますでしょうか。
戸口:埼玉医科大学国際センター看護部長の戸口と申します。
埼玉医科大学グループは3病院あります。
その中でもこの国際医療センターは開院してまだ11年と若い病院です。
看護大学の編入制度もありますので、これから先どこの道を進むのか迷われた時に、選択肢を広げられるところだと思います。
また、心臓とガンと救急で特化した病院ですので、スペシャリストを目指すにあたって色々な支援も用意してあります。
総合的な疾患を学びたいのであれば、グループの大学病院でローテーションしながらキャリアアップもできると思います。
是非就職して頂ければと思います。
見学も歓迎していますので、宜しくお願いします。
とても明るく気さくに様々なお話をしてくださった戸口副院長。
大学病院でありつつ、地域の住民の方々も大切にされていることに感動しました。
インタビュー中、特に印象的だったことは戸口副院長がよく人を褒めることです。
人を褒めるにはまず、人をよく見ていなければいけません。
そして何より、その人が優れていることを認められなければいけません。
人それぞれ置かれた立場や環境の違いで、そんな簡単なことでも難しくなる時があります。
類は友を呼ぶという言葉があります。
人を認められる人が纏める埼玉医科大学国際医療センターには、お互いを認めあえる職員が沢山居るのではないでしょうか。
戸口副院長、この度は貴重なお話を聞かせて頂き誠に有難うございました。
No. 101 戸口修子様(埼玉医科大学国際医療センター)前編:「朝早く来て患者さんのところに顔をだしています」
戸口 修子様(埼玉医科大学国際医療センター)「患者さんに会いに行く」
聖路加国際大学卒業 看護師 保健師 東京武蔵野病院