前編に続き横山先生に、診療報酬改定といった環境の変化に対応しながら
城下町・小田原の医療を支えていこうとされる意気込みと、看護師への期待を語っていただきました。
中:続きまして、病院経営についてお伺いします。
現在、院長というお立場では、診療報酬の動向が気になるのではないでしょうか。
今年は診療報酬・介護報酬が同時改定でされましたが、影響はいかがですか。
貴院の取り組みなどをお聞かせください。
横山:今回の改定では、地域のニーズに応じて医療機能を分化・強化して、
医療機関同士での連携を推進していくという方向性が強く打ち出されました。
このような方針は、これまで当院が取り組んできた病床の転換、訪問診療の強化等と一致しています。
よって当院の基本的な方向性は現在の医療政策にマッチしたものであると理解しています。
より具体的に申しますと、
今回の改定で地域包括ケア病床におけるご自宅からの入院受け入れが評価されましたが、
地域包括ケア病床と訪問診療の一体運営に取り組んでいる当院にとっては、追い風の改定と認識しています。
今後も改定の動向に注視しながら、
地域のニーズに十分応え得る医療サービスの構築に取り組んでいきたいと思っています。
中:病院内を歩いていますと、とても明るく綺麗な病院だと感じたのですが、
そのような雰囲気を創り出すためのコンセプトのようものはあるのでしょうか。
横山:やはり明るい病院であることを一番大切にしたいと考えています。
当院は、海にも面していますし、小田原城も望めます。
そして小田原の城下町はたいへん良い土地柄です。
その小田原に昔からある病院ですから、職員全員で盛り上げて良い病院にしていこうと頑張っています。
中:スタッフのマネジメントについてはいかがでしょうか。
お話しのされ方をうかがっていますと、先生はトップダウン形式ではないように感じますが。
横山:トップダウンとは全く違います。
もっとも私はB型で我が道を行くというところがあり、外科医時代は自分の方針通りに手術を進める
といった感じで仕事をしていたのですが、院長に就任してからはそうはいきません。
考えてみれば、この年になった今が人生で一番気を遣っています。
中:一人の医師として勤務することと、組織をまとめることはやはり違うのですね。
ではこの辺で、話題を看護師に移したいと思います。
先生のイメージされる看護師は、どのような存在でしょうか。
横山:何よりも優しく思いやりのある人ですね。
中:では、看護師に対して先生が期待されていることはどのようなことでしょうか。
横山:医療や看護の知識、技術を学び続けていただくことはもちろんなのですけれども、
何より大切にしていただきたいことは、優しい笑顔や言葉遣い、
そして思いやりのある対応ができることです。
そうしていただくことで、不安を抱えて来院する患者さんやご家族に、安心感を提供できることはもちろん、
職員間のコミュニケーションも円滑になり、働く環境が良好になるという効果も期待できるはずです。
良い組織風土というものは、患者さんのためでもあり、働く自分たちのためでもあります。
そのような環境を作っていきたいと思っております。
中:看護師が笑顔であることも、明るい病院作りの大きな役割の一つというお考えですね。
最後に先生のご趣味についてお聞かせいただけますか。
横山:趣味は読書や映画鑑賞などです。
好きな本のジャンルはミステリーで、中学生のときからですから、かなり読んでいます。
映画については、今はチケットをインターネットですぐに買えますから、
少し空いた時間ができるとすぐに行けるので便利ですね。
あとは愛犬の散歩と、身体を鍛えるために水泳をしています。
中:色々ご趣味がおありなのですね。
横山:やはり趣味を持ちオンとオフをしっかりつけないと、なかなか大変な仕事です。
中:そうしますと、病院を一歩出たら、きちっと頭を切り替えられていますか。
横山:全て切り替えることができると良いのですが、なかなかそうはいきません。
やはり心配な患者さんがいらっしゃると引きずってしまいます。
これは仕方ないですね。
昨晩も寝ながら患者さんのこと考えていました。
中:そうですか。
しかし患者さんから見れば、先生のようなドクターのほうが安心で幸せと思われるのではないでしょうか。
横山:おかげさまで、ついて来てくださる患者さんが増えてきまして、嬉しい限りです。
中:では、既に十分お話しいただきましたが、改めて看護師へのメッセージをお願いいたします。
横山:優しい笑顔で、思いやりのある対応のできる看護師さん、ぜひ当院にいらしてください。
よろしくお願いします。
横山先生がお話しくださった中で印象的だったのは、看護師に求めていらっしゃる「優しさ」でした。
思いやり、優しさは言葉では語り尽くされているかもしれませんが、看護師が永遠に忘れてはいけない基本です。
改めて真摯に「優しさ」に向き合うことで、歴史ある城下町で穏やかな看護が出来るのではないでしょうか。
インタビュー後、小田原城へ行き、歴史と街全体の雰囲気を改めてじっくりみながら私自身、優しさについて
問い直すことが出来たように思います。
シンカナース株式会社 代表取締役社長
東洋大学文学部国文学科 明治大学大学院グローバルビジネス研究科 経営管理修士(MBA) 日本大学大学院総合社会情報研究科 総合社会文化博士(Ph.D.) ニュージーランド留学 帝京大学医学部附属病院 東十条病院 三井住友銀行 A-LINE株式会社/代表取締役社長 東京医科歯科大学非常勤講師 同志社女子大学嘱託講師 著書『わたしの仕事シリーズ2 看護師』新水社