No.153 病院長 笠間毅様(昭和大学江東豊洲病院)後編:環境を生かして効率化を図る

No.153 病院長 笠間毅様(昭和大学江東豊洲病院)後編:環境を生かして効率化を図る

  • 2018年6月12日
  • 病院長 インタビュー
No.153 病院長 笠間毅様(昭和大学江東豊洲病院)後編:環境を生かして効率化を図る
No.153 病院長 笠間毅様(昭和大学江東豊洲病院)後編:環境を生かして効率化を図る

前編に続き、笠間先生に病院経営に関するお話や豊洲地区の特徴、対策などお伺いししました。

 

経営もチーム医療の一つ

 

中:経営との関連で診療報酬についてお伺いいたします。

臨床医という立場では患者さんのアウトカムにフォーカスされていたと思いますが、現在のお立場ではいかがでしょう。

2年毎の診療報酬改定に対する備えはどのようにされていますか。

 

笠間:適正に算定することを基本としています。

算定漏れをなくし、算定できるものはきちんと算定するということです。

それに加えて、診療体系を見直すことで算定基準に合致するのであれば、管理者として積極的にそちらへ人員を配置することになります。

もちろんこれらの対応は当然私一人でできる訳ではなく、医事課や医療戦略課、管理課などの事務部門も含め、全部署で知恵を出し合いながら進めています。

 

 

中:そうしますと冒頭にお話しいただいた、チーム医療の重要性とも関係してくるのではないでしょうか。

チーム医療と言いますと、患者さんを中心に医師や看護師、薬剤師などの連携を想定しがちですが、

今お話にありました事務職の方々との連携も、病院経営という点では非常に重要ではないかと思うのですが。

 

笠間:大変重要なご指摘です。

ベッド上の患者さんを目にすると、院内の医師やコメディカルスタッフばかりが医療連携のプレイヤーのように思われますが、

その患者さんにもいずれ地域社会にお戻りいただかなくてはなりません。

それには、ご家庭や地元クリニックのスタッフによる支援が不可欠です。

このような地域包括ケア推進のために事務職が果たす役割は決して小さなものではありません。

 

人口急増への対応

 

中:こちらの病院から外に目を移しますと、付近に高層マンションが次々に建設され、人口が急増している様子がうかがえます。

小さなお子さんからご高齢者まで、幅広い年齢層の方々がお住まいのようですね。

日本では今2025年問題が話題に上ることが多いですが、この地域の人口構成はやや異なるように思います。

そのような特色のあるエリアで住民の方々の需要に応えていくには、工夫が必要ではないかと思いますが、いかがですか。

 

笠間:当院開設の背景には、当地域の人口急増があります。

現在の江東区の人口が約51万で、さらに急速な増加が続いています。

開発・再開発の著しい豊洲地区ではファミリー層が多く、子どもやこれから出産を考えている若いお母さんが昼間人口の中心です。

しかも江東区でNICU(新生児集中治療室)があるのは当院のみです。

それだけ小児救急に関しては高いニーズがあります。

一方、深川地区は昔ながらの下町風情で高齢の方も多くいらっしゃいます。

そのため、おっしゃるように、当院の患者さんは本当に幅広い年齢層に渡ります。

 

 

中:確かにこの地域の近年の変化は目を見張るものがありますね。

さらに2020年のオリンピック、パラリンピックに向けて、競技会場が建設中です。

この地域を訪れる海外の方の受け入れ態勢も整えていらっしゃるのでしょうか。

 

笠間:JOC(日本オリンピック委員会)の医療担当部門との協議を開始しています。

豊洲の競技場で何か起きたとしたら、本当にここが一番近いですから。

 

中:人口の急増とオリンピック開催という、まさに時代の要請と言いますか

ベストタイミングで病院がスタートしたのですね。

 

笠間:それに豊洲市場のオープンが本年10月に控えています。

最大就業人口が4万人という規模ですので、そこで発生する医療需要に対しても、病院として対策を練っております。

 

周辺の緑地も病院が管理

 

中:新病院建設にあたってはどのようなことに配慮されましたか。

施設・設備面の特徴を教えてください。

 

笠間:当院を計画したのは東日本大震災の後ですから、まず、地震と津波に対する対策を第一に考えました。

建物は最新の耐震構造とし、建物自体をかさ上げした上に建てて津波に備えています。

 

 

中:大規模災害に対し十分な対策をとられているのですね。

外観を拝見しますと緑が多く、自然との融合を企図されたのかなと思いましたが、いかがでしょうか。

 

笠間:緑あふれる、公園のなかの病院というイメージをコンセプトにしました。

ですから、当院周辺の緑地帯も場所としては江東区の敷地にあたるのですが、多くは当院が植樹し管理しています。

 

中:やはりそうだったのですね。

自然の中にある優しい雰囲気の病院という印象を受けました。

 

笠間:そのように感じていただければ本望です。

 

 

専門性と対応力のある看護

 

中:看護師ついてお尋ねします。

先生が看護師に期待されること、今後より進化して欲しいと思われことをお聞かせください。

 

笠間:いま看護の各領域ごとに専門看護師や認定看護師といった制度が設けられ、その種類も増えてきています。

当院でもチーム医療の中で看護師の専門性を積極的に高めています。

またそのような高いスキルを持つ看護師が働く環境を整えていきたいと考えています。

 

 

中:そうしますと今までの業務だけではなく、より専門的な業務も看護師が手がけるようになるのでしょうか。

 

笠間:院内で患者さんと接している時間が最も長い職種は看護師です。

実際、チーム医療の実践にあたり看護師が大きな部分を占めます。

看護師の対応次第でチーム医療が円滑に回転し、患者さんの治療転帰も好転します。

このような看護師の役割は当然、今後さらに重要になることでしょう。

高い専門性と、どこに異動になっても対応できるオールマイティな対応力を兼ね備えた看護師に期待しています。

 

中:近年、医師の働き方改革が議論されています。

医師の負担軽減のために看護師はどのようなことができるとお考えですか。

 

笠間:チーム医療の連携を強化していくと、結果的に医師の仕事量も減っていくではないでしようか。

現在は電子カルテに基づき、十分な情報共有が可能な時代ですので、医師だけでなく、看護師の仕事量も把握できます。

この環境を生かして効率化を図ることが、一つの方策だと思います。

 

 

中:ありがとうございます。

今まで長い間、医師の熱意に頼っていたのかもしれません。

今後、それぞれの専門職者が各自の領域にとどまらず協力し合い、良好なコミュニケーションのもとチーム医療を進めていけば、治療の進化にもつながるのではないでしょうか。

 

笠間:それは患者さんにとっても、大変良いことだと思います。

看護師へのメッセージ

 

中:最後に看護師に向けてメッセージをお願いします。

 

笠間:当院は昭和大学付属の大学病院としては高度急性期医療を提供する病院です。

大変な重篤な患者さんもいらっしゃいます。

そういう患者さんの看護を積極的に担当してください。

また、昭和大学付属の各病院を回ることで、さまざまな経験を積むことができる環境も特色です。

当院で働かれることは、その後の看護師としてのキャリアアップに大変重要なステップとなり得ますし、

重要な経験になり得るのではないかと思います。

 

シンカナース編集長インタビュー後記

目まぐるしい変化の東京都江東区豊洲エリア。

市場の移転、2020年のオリンピックなど、話題の中心に立地する病院です。

そんな周囲の喧騒とはうらはらに、病院周辺は緑に囲まれ、穏やかで落ち着いた雰囲気だったこともあり訪問当初は驚きました。

ただ、笠間先生のお話を伺っているうちに、病院がこの地の未来を牽引するポジションであること、設計を含め、町づくりの中心になられていることがわかり納得いたしました。

求められるのは、安定的に、どの世代にも必要とされる病院。

地震と津波にも対応出来る、強い構造物であること、また緑溢れる過ごしやすい住宅街に溶け込む優しさを持つこと。

その両面が見事に調和していました。

「高い専門性と、オールマイティな対応力」を笠間先生が今後の看護師に求めるというお言葉も、若年層から高齢者まで幅広い年齢に対応する病院としては必要不可欠なのだと感じます。

 

 

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病院紹介

笠間院長インタビュー前編

笠間院長インタビュー後編

Interview Team

中 友美
A-LINE株式会社 代表取締役社長 シンカナース編集長
東洋大学文学部国文学科 明治大学大学院グローバルビジネス研究科 経営管理修士(MBA) 日本大学大学院総合社会情報研究科 総合社会文化博士(Ph.D.) ニュージーランド留学 帝京大学医学部附属病院 東十条病院 三井住友銀行 A-LINE株式会社/代表取締役社長 東京医科歯科大学非常勤講師 同志社女子大学嘱託講師 著書『わたしの仕事シリーズ2 看護師』新水社