No.103 細田和代様(大生病院)後編:患者さんが良い生活をするために

インタビュー

前編に引き続き、細田和代大生病院看護部長へのインタビューをお届けいたします。

療養病床だから学べること

看護師さんは現在何人ぐらいいらっしゃるのですか。

細田:常勤、非常勤あわせて160人前後で推移していると思います。

新卒の新人は、准看護学校の卒業生が毎年5~10人くらい入ってきますが、大学を卒業した方はその時々です。

急性期の病院に一度勤めてから数カ月で移って来られるというケースもあります。

こちらは療養型の病床が多いですよね。あと、精神科もありますよね。

細田:精神の療養病床もあります。

大生病院のA棟は、精神科の療養の病棟で、認知症の高齢者の方が多く療養されています。

あさひ病院の方は認知症疾患医療センターの機能を持っています。

ですから、「急性期に行ってみたけれども自分には合わない」とか、「急性期に行って、高齢者が多い中で高齢者の看護を勉強してみたくなった」「在宅に関連する分野を学んでみたくなった」という看護師が多くいる傾向はあると思います。

看護師の方は、大生病院に入職するというかたちになるのでしょうか。

細田:基本的には尚寿会としての採用になります。

ご自身の目的ややりがい、「これをやりたい」という働く目的があって来られると思うので、その選択先が大生病院であれば大生病院、精神科であさひ病院であればあさひ病院、在宅でということであれば老健や在宅というところで、できるだけ最初の希望を叶えるようにしています。

入職後にも本人の希望やご家庭の事情などを踏まえて、施設間でのスタッフ異動も行なっています。

皆に必要な認知症の知識

こちらの病院の看護の特徴はございますか。

細田:≪当院は療養型の病床が多いのでゆっくり患者さんと関われる≫かというと実はそうでもありません。

医療度の高い方、認知症の度合いの高い方も多くなってきていますから、むしろ忙しいと思います。

勿論、医療処置の面では急性期病院の方が忙しいかもしれませんが、こちらは人との関わりでとにかく忙しいです。

ご高齢でADL的に自立していない方が多いですから、介護の度合いが高いです。

骨折していても歩いてしまう方などへの対応が必要なのです。

高齢者への身体拘束の是非を問われることが多いですが、こちらではどのようにされていらっしゃいますか。

細田:なるべく動くことを制限はしたくないので、当院では抑制はなし、精神科でも身体拘束を最小にしています。

できるだけ体の動きは制限しない、抑制や拘束はしないという方向です。

しかし、その結果、転んでしまう、骨折してしまうというケースも発生はします。

ご家族の中には「骨折すると困るので抑制していいです」とおっしゃられる方もありますが、その時には、当院の方針をお伝えしてご理解して頂きます。

そうした状況に置かれる患者さんは認知症の方が多いのですが、精神科でも、内科の病棟でも認知症の患者さんがとても多いです。

難しいところですね。

細田:本当に難しいです。

患者さんが良い生活をするためにも、認知症の看護を勉強することは絶対に必要だと思います。

こちらの病院では看護補助者の方はいらっしゃいますか。

細田:当院では介護職員と病棟助手というかたちで配置しています。

介護職員は介護福祉士から介護士、初任者研修修了者のことを指していて、身体介護を中心に、ケアを担当してもらっています。

病棟助手は他病院の看護補助者と同じく、看護師が看護師としての仕事を行うために、看護師以外でもできる仕事を担当してもらっています。

当院にいらっしゃる患者さんの半数は経管栄養の方や吸引が必要な患者さんです。

その方々の経管栄養のお水・栄養・器具類の準備や終わったあとの洗浄、吸引の準備や片付けなどの業務量も多いのですが、そういったところに病棟助手に入ってもらって、看護師が看護業務に専念することができるようにしています。

一つひとつやっていると結構時間がかかりますからね。

細田:そうですね。

50床の病棟でも、20人以上が経管栄養や胃瘻の患者さんですと、本当にたくさんの吸引ビンや経管栄養のセット類の準備や洗浄が必要なので、そこに介入してもらうことでかなり助かっています。

看護師が業務で忙しいと、なかなか患者さんの話し相手になったり書類作成をしたりするのは難しいですから。

現在は一部の病棟に入ってもらっていますが、できれば全病棟に看護補助者を配置したいと考えています。

精神科と聞くと、敷居が高く感じる一般の方もいらっしゃると思いますが、問題なく働かれていますか。

細田:精神科と言っても、認知症の方が多いのが今の病棟の状況です。

入ってみると、本当に楽しくやれているという職員が多いです。

どんなに大変でも、やっぱり楽しい

部長さんの趣味などをお話しいただけますでしょうか。

細田:社交ダンスをやっています。

看護学校の頃にクラブ活動で始めたのがスタートで、家事・育児でしばらく中断していたのですが、子どもがみんな中学・高校になってから再開しました。

なかなか上達しないのですが、一昨年くらい前から本腰を入れようとプロの教室に通い始めました。

気分転換とか息抜きとかいうレベルではなくて、苦しくて辛くて本当に必死なのですが、やっぱり楽しいです。

基本がちゃんとできてくると自分が楽ですし、格好よく踊れるようになるので、もうちょっと頑張りたいという気持ちが湧いて来ます。

これは趣味だけではなく仕事にも共通することですが、どんなに大変でも、やっぱり楽しいし、自分の好きなことをやれるのは良い事だなと思います。

地域の方から信頼される病院

最後にメッセージをお願いします。

細田:当院は、先代の時から「信頼と愛とで築く地域医療」という理念があり、地域に信頼され、地域に根差した法人、病院です。

患者さんやご家族を大切にし、そのために職員も大切にする病院です。

病院として研修の受講や資格取得もサポートしてくれますし、理事長や院長も、職員一人ひとりの声をしっかり聴いて、いろいろな意見を吸い上げて、働きやすい環境を作る配慮、環境の調整や改善にも努めています。

地域の方々からも「何かあったらあそこに行けばいい」と信頼も得ています。

とても自慢できる病院です。

是非いらしてください。

シンカナース編集部 インタビュー後記

大生病院は閑静な住宅街に位置する病院です。

「信頼と愛とで築く地域医療」を理念に掲げ、地域住民の方々の近くで健康をサポートされています。

シャトルバスを利用され通院されていらっしゃる方々とスタッフの方の関わりもとても心温まるもので、地域の方々に信頼されている病院であることにも納得致しました。

「優しいだけではいい看護はできない」と仰った細田看護部長。

お話を伺う中で、仰る通り、穏やかなでありつつ確固とした信念を持って看護にあたっていらした方だとわかりました。

そしてスタッフの方々もそれを共有していらっしゃると思うと、とても頼もしく感じます。

細田看護部長、この度は貴重なお話を頂きまして誠にありがとうございました。

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