No.99 新井久栄様(埼玉慈恵病院)後編:「その人らしさ」を大切に

No.99 新井久栄様(埼玉慈恵病院)後編:「その人らしさ」を大切に

  • 2018年2月7日
  • インタビュー
No.99 新井久栄様(埼玉慈恵病院)後編:「その人らしさ」を大切に
No.99 新井久栄様(埼玉慈恵病院)後編:「その人らしさ」を大切に

前編に引き続き、埼玉慈恵病院の新井看護部長のインタビューをお届けします。

 

患者さんを看るスタッフを大切に

看護部長の職に就かれたのはいつですか。

 

新井:平成19年に看護部長としてこの埼玉慈恵病院に来ました。

 

看護部長になられた時のお気持ちを教えていただけますか。

 

新井:初めから自分に看護部長としての力があってこのポジションについたのではなく、学びながら看護部長をさせて頂いております。

不安や戸惑いがなかったわけではありませんが、困難だと思うことでもそれをチャンスと捉えることができるかどうかだと思います。

役職に就く上で基本となるのは人との関わりです。

師長や主任、看護部長といった役職は、スタッフがいなければその役職が成り立ちません。

自分が何をやらなくてはいけないのかと考えた時、部長を支えてくれる師長や主任、そしてそれを支えるスタッフが働きやすく結果を出せる環境を作っていかなければいけません。

看護部長を支えてくれているのはもちろん師長や院内で働くスタッフ達です。

自分がしたいケアがあっても、外来・入院全ての患者さんを私一人で看ることはできません。

看護部長としての考えをきちんと師長さんたちに理解してもらって、それを受けて実際に実施して結果を出すのは患者さんと1対1で関わるスタッフです。

 

これが、看護部長として働く上で核になっている私の考えです。

 

看護部長になられて取り組まれていらっしゃることはございますか。

 

新井:私がこの病院に来てからずっと取り組んでいることの一つに看護部の全職員を対象とした意向調査を行っております。

当院には看護部長室はなく、看護師長室の中に私の机があるので、そこに専用のポストを設置して直接調査用紙を入れてもらっています。

意向調査では、私の考えを伝えたり、満足度調査を含めたアンケート形式で意見をもらったりしています。回収率は100%です。

勿論頂いた用紙には全て目を通しますから、その中でスタッフの気持ちも伝わってきます。

私と直接面接を希望する人や、アンケートの中で気になることを書いているスタッフがいれば面接を行います。

やはり160人の患者さんを看てくれているのはスタッフなので、大切にしなくてはいけないなと思っています。

 

看護部長さんがそのように考えておられるとスタッフも働きやすいですね。

では、看護職員は現在何人ぐらいいらっしゃるのですか。

 

新井:看護師と介護士を合わせて約165名います。

この規模だからこそ、スタッフの顔や名前、性格を一致させられて密に関わることが可能になっていると思います。

私がこの埼玉慈恵病院の看護部長をさせていただくことにした理由はここの看護部の規模も私にはあっていると思ったからです。

「人間力の向上」を目指す

 

理念を実践するために心がけてらっしゃることや取り組みはございますか。

 

新井:看護部の理念は「患者様を尊重し、ぬくもりのある看護」というのを掲げています。

私は「自分らしさ」「その人らしさ」というのがすごく大事だと思っています。

自分らしさとは一体何なのかを一人ひとりが考えて気付き、大事にして欲しいと思っています。

それが大事にできるようになれば、患者さんに対しても「患者さんらしさ」を大切にできるはずです。

 

埼玉慈恵病院全体の理念は「患者様に貢献する」ことを掲げています。

この病院は明治36年から始まり、地域の人たちに育てられてきましたので、救急患者を断らないことが病院としての使命だと思っています。

そして組織としての使命は理念の2番目に掲げている「職員に貢献する」ということです。

その実現のために、当院の理事長が5年前から職員が働きやすい環境を作るために改革を初めています。

病院は専門職の集まりです。

これは医療従事者だけではないと思いますが、専門職者は自分の専門のスキルを磨くことは一生懸命するけれど、自分自身を磨くために時間やお金を費やすことに対してあまり積極的ではないように思います。

人格を磨くことを目標に、全職員対象の「しあわせ研修」というものを実施しています。

文化を根付かせ、次の世代に繋げていく

「しあわせ研修」とはどのような研修なのですか。

 

新井:週40時間ある勤務時間のうち1時間、6〜8人で集まって行うグループワークです。

その中では、スティーブン・R・コヴィー博士の「7つの習慣」とシャハー氏の著書「ハーバードの人生を変える授業」等の本をもとに理事長が我々にわかりやすいように作成したテキストを用います。

その冊子を各々が読み、その内容に基づいた自身の体験談などを含めグループ内でシェアすることで、冊子に書いてある知識を生活に落とし込むのです。

皆で「これはどういうことだろう」と語り合うことで理解が深まります。

 

自分の専門外にも目を向ける機会があるというのはありがたいですね。

 

新井:学べる組織文化を構築することは、理念の1つです。

そしてもう一つ重要なことは、勤務時間内にすることです。

この研修に参加する人自身のタイムマネジメントの能力も向上しますし、仲間を研修に参加させるためにチームワークも良くなります。

 

実は、この取り組みを始めて、ベッド稼働率が増え救急患者を断らないことで事例は増え、経営も良くなっていきました。

病院全体の変化をスタッフも感じていたと思いますし、私たち管理者もスタッフの成長をみて、人を育てることの大事さを改めて実感しています。

まだ課題はありますが、この取り組みや考えを当院の文化として根付かせること、次の世代に繋げていくことが自分の役目だと思っています。

プライドを持ち「患者さんのプライド」を尊重する

埼玉慈恵病院で看護補助者は採用していますか。

 

新井:はい、約40名います。

看護補助者の中には介護福祉士の資格を持っている人や初任者研修修了者、全く資格を持っていない人、准看護師の学校に通っている学生がいます。

 

その方々はどのような業務をされていますか。

 

新井:介護福祉士の人たちは資格を持っていますので身体的なケアもしてもらっています。

看護補助者は看護師のパートナーです。

看護師も日常生活のケアは学んでいますが、看護補助者はケアのことをもっと深く一生懸命学んできているので、プロとしてのプライドと自信を持ち業務に当たってくれていると感じています。

以前師長として勤務していた時、一人の看護補助さんとの出会いが私の考えを変えてくれました。

患者さんのおむつ交換にその方と一緒に入ったのですが、その時「私は、おむつ交換では看護師に負けません」「私は患者さんに外されるようなおむつのつけ方はしません」とおっしゃったのです。

「おむつを外す患者さんは困る」ではなく、「不快だからおむつを外す」という考え方なのです。

プライドを持った仕事への関り方に大変感銘を受け、尊敬しました。

だから当院の看護補助者の方々にも、プライドを持って仕事をして欲しいですし、プライドは自分たちが築いていくものだ、ということを伝えていきたいです。

 

プライドを持って排泄のケアをされているのですね。

 

新井:排泄に関しては「コンチネンスケア」という考え方を取り入れています。

排泄は、生まれてから死ぬまで休むことなく続く、とても大事なことです。

一番大切な事ですから、それぞれにこだわりを持っていますし、他人にはあまり触れられたくないものです。

それ故、その人らしくプライドを尊重したケアをする事が大事なのだと思います。

相手が不快に感じず、気持ちよく、無駄な露出もさせないということが永遠のテーマであり、それぞれが考えるべき大事な事だと思います。

自分自身を大切にするための「食」

お忙しい毎日のリフレッシュ方法や趣味などはございますか。

 

新井:料理を作るのが好きです。

15、6年間ずっと自宅で作ったぬか漬けを持ってきています。

もともとは母親から貰った“ぬか床”なのですが、昔と違い今は冷蔵庫で保存しているので管理しやすいです。

 

スタッフのみなさんにも食べていただいているのですか。

 

新井:師長達とご飯を食べる時に出しています。

みんなも美味しいと言って楽しみにしてくれています。

自分の体は自分自身が食べたものでできています。

やはり「食」は大事です。

自分の体の細胞の素材となる食です。

元気な細胞を作るものを取り入れないといけませんよね。

それをスタッフや周りの人たちにも分かってもらいたくて、身近な事から始めています。

 

看護師の皆さんは忙しいので、食生活が不規則になることもありますよね。

 

新井:あと、実は料理はストレス発散にも良いのです。

色々と同時にやらなければいけないので頭を使いますし集中します。

無駄なことを考えていられないので、例えば仕事で何か心に残るような出来事があっても、それを考えながら料理はできません。

集中して作れば達成感がありますし、料理が出来上がった時には不思議なほどモヤモヤした気持ちがなくなっていますのでお勧めです。

 

料理も人によっては苦手であったり、ストレスを感じたりと捉え方が違うと思います。

でも、何でもストレスに感じないで楽しみに変えられるかどうかは自分次第だと思います。

何かをやるなら楽しい方がいいし、食事をするなら美味しく食べた方が良いですよね。

笑顔を絶やさず、一歩ずつ進む

新人看護師に向けてメッセージをいただけますか。

新井:「看護師の道を選んだのは自分である」このことを大切にしてほしいです。自分が患者であったら、「どんな看護師に看てもらいたいか?」をイメージし自身を磨いてください。初めからできる人は一人もいません。どんなベテランの看護師でも初めての時がありました。そして、失敗を繰り返しながら成長できるのだと思います。

「笑顔を絶やさず楽しく明るく仕事をすることが第一です。」

そのためには焦らず、失敗を恐れず、あきらめず努力を重ね、できるようになったことを自分が認めることです。

又、一人の殻にとじこまずに同期入社の仲間づくりも大切です。一緒に頑張れる仲間がいることは大きな励みになります。辛く苦しい時も笑顔を作ると不思議と力が湧き乗り越えられます。

スタッフ一同、みなさんをお待ちしておりますので、まずは是非病院の見学に来てください。

よろしくお願いします。

シンカナース編集部 インタビュー後記

一人の看護補助者がご自分の考えを変えてくれた、と仰った新井看護部長。

専門職として働いている方は、自分の仕事に責任と誇りを持っている方が殆どだと思います。

ですがその認識は、私達を鈍感にし、他の職種に就いている方の素晴らしい仕事や責任感、誇りに気付きにくくしているかもしれません。

縦割りの役割分担ではなく、同じ対象に対して違う視点を持って関わるからこそ、チーム医療は最大の力を発揮できるのです。

埼玉慈恵病院では、職種という病院内によくある高い壁を取り払って、職員同士も人と人とで繋がるための取り組みをされていらっしゃいます。

そうした繋がりのある職場なら看護師も看護補助者もそれぞれの持つ最大の力を発揮することができるのではないでしょうか。

新井看護部長、この度は貴重なお話を聞かせて頂き誠に有難うございました。

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病院概要

埼玉慈恵病院

白岩 憲子
A-LINE株式会社 シンカナース副編集長
聖路加国際大学卒業 看護師 保健師 東京武蔵野病院