No.98 矢野尾 ひとみ様(大久保病院)後編:「花を咲かせられる看護ケアを」

インタビュー

前編に引続き、大久保病院の看護部長、矢野尾ひとみ様のインタビューをお届けします。

仲間を大切にする文化

「患者さんと働く仲間を大切にします」という病院の理念を実践するために、何か心がけてらっしゃることはございますか。

矢野尾:やはり患者さんに対して優しいこと、安全、感染を起こさせないようにすることが大切だと思っています。

ですから、少し遠回りに思えるかもしれませんが、正しい看護技術身につけることは絶対に必要です。

職場の仲間については、看護師長と主任から成る労働環境プロジェクトチームを立ち上げ、パワーハラスメントを予防するためどうしたら良いのかを考えたり、働く人の労働法規・法律を勉強する会を開いたりしています。

その他にも、どのような福利厚生があると働きやすいのかを考えるチームや、看護補助者にも自立をしてもらい一緒にうまく仕事をしていくにはどうすればよいかを考えるチームもあります。

そしてワークライフバランスも考え、毎日忙しいですが、毎日1病棟にひとりでも定時で帰れる人を作るという取り組みも行うことで、仲間を大切にするということにつなげています。

大久保病院の看護師について伺わせてください。

矢野尾:その年によって違いますが、当院には新卒の看護師が平均で4〜5名入職してきます。

法人内に特別養護老人ホームや介護老人保健施設などがありますが、大久保病院の看護師数は150人ほどです。

ご家庭を持っていらっしゃる方も多く、育休を取って戻ってくる看護師はほぼ100%で、休職中も予防接種に来た帰りや書類を出しにきたときなどは、遊びにきてくれたりします。

保育所も曜日は決まっていますが24時間体制で院内に設備してありますので、働く環境は整っていると思います。

法人内の他の病院や施設に看護師が異動することはあるのでしょうか。

矢野尾:患者さんの行き来はありますが、職員の異動は基本的にありません。

ですが、例えば定年退職される方がデイケアを希望された場合などは空きがあればそちらに入って頂くこともあります。

その他に看護師のサポートに関する取り組みは何かございますか。

矢野尾:基本私の部屋にはいつ誰が来てもいい、という状況を作っています。

また学習する機会をとにかく増やしましょうということで、eラーニングも5、6年前に導入しました。

やはりご家庭があると自分で勉強する時間が取れない人、看護協会などへ研修を受けに出たりすることが難しい人もいます。

それでも看護師たちも研修を受けないと質は上がっていきません。

その対策の一つとして、看護師が普段仕事で使っている電子カルテの端末で手順書を確認できるようにしました。

初めは「勉強しないといけないのか」と抵抗を持つ方もいたと思いますが、この2年ほどで大分浸透してきて、院内の研修会でも使われるようになりましたし、看護師以外のコ・メディカルも使うようになりました。

看護補助者のお仕事について伺ってもよろしいでしょうか。

矢野尾:患者さんの身の回りのことで、看護補助者が自主的にできるものはたくさんあります。

当院では看護師の指示のもとで足浴や手浴をしたり、主体的に患者さんのベッド周辺の環境整備、整理も積極的にしてもらったりするようにしています。

当院の看護補助者の中には、ヘルパー1級2級、介護福祉士の免許を持っている方も活躍しています。

そうした方々はやはり看護師とある程度共通の言語を持っているので、何かお願いするときにも伝わり易く、コミュニケーションも取りやすいと感じます。

地域に根差した病院

急性期医療を中心に病棟機能が充実されてきていますね。

矢野尾:急性期の病棟や地域包括ケア病棟、緩和ケア病棟を新しく増設しました。

緩和ケアにおいては病棟のレイアウト等は師長と一緒に、日頃からみんなが思っている患者さんのイメージや看護のイメージを込めながら作りました。

看護師の目線が生かされた病棟が作られたのですね。

患者さんはこの地域の方が多いのでしょうか。

矢野尾:とても多いです。

他の病院に入院していて慢性期の病棟に移る際に転院されてくる方も時折いらっしゃいますが、基本的はこの地域にお住まいの方がいらっしゃいます。

当院と地域の病院とは太いパイプを作っているわけではありませんが、「空床があればお願いをします」「こちらも満床になってきたのでお願いします」と協力して地域を支えています。

院内の交流について教えていただけますでしょうか。

矢野尾: 今までは交流の場がなかったのですが、他部署との交流はやはり必要なので、院内で職員が交流を持てるようにイベントを開催しています。

数年前には院内でのバス旅行を計画しましたし、オータムパーティーや他部署のスタッフ達とテニスをしたり、つい先日はハイキングにも行ったりしました。

そういう発信を看護部としてやっていきたいと思っています。

フェイスブックも大久保病院看護部の広報の1つに取り入れていますので見て頂けると嬉しいです。

その他にも取り組んでいらっしゃることはございますか。

矢野尾:学生に向けた国家試験の秘訣を教えるイベントを毎年開催しています。

法人から奨学金を受けている学生もいますので、国家試験に合格してもらえるようサポートできるといいと思っています。

普段の学校生活のことも話をしますので、そうした学生とコミュニケーションをとる機会にもなっています。

毎日お忙しいことと存じますが、リフレッシュには何をされていらっしゃいますか。

矢野尾:刺繍が好きで、子供が小さい頃には服を作っていました。

集中できるものは気分転換になるのでとても良いです。

看護部長からのメッセージ

看護師を目指す学生や新人看護師にむけてメッセージをお願いします。

矢野尾:当院は199床の急性期と慢性期、そして緩和ケア病棟を含んだ病院です。

看護師それぞれのライフスタイル等を考え、最適な職場を見つける事ができる病院だと思います。

ご家庭があり、お子さんを育てながら働いている方も沢山います。

そういう人たちが長く働ける病院づくりを看護部あげて考えていますので、どうか一緒に私たちと働いてほしいと思います。

看護学生の方々は、看護技術ができないと不安になる事があると思います。

ですが、できないのは当たり前のことです。

看護技術は回数を重ねれば必ずできるものです。

学生の皆さんが大切にしている看護への思いも、時が経てば花は開いてきます。

私たちと一緒に、その花を咲かせられるような看護をして行けたら、と思います。

是非おいでください。

シンカナース編集部 インタビュー後記

大久保病院の看護部のホームページを拝見して一番初めに思ったことは、とても明るく楽しそうな病院だ、ということでした。

スタッフを大切にし、どうにかして元気になって貰おう、と様々な取り組みをされていらっしゃるということを伺い、納得いたしました。

また、看護への思いを花に例えられたことも、矢野尾看護部長の穏やかな、それでも一本筋の通ったお人柄を表しているように感じました。

看護師として働いていると、難しいと感じる事に直面することや、他の人との関係で悩むこともあるかもしれません。

そのような事も経験と捉えてひとつひとつ積み重ねていけば、看護師を志した時から大切に育ててきた思いはきちんと花ひらく。

そうした心強いメッセージを伝えてくれる矢野尾様が率いていらっしゃる大久保病院の看護部では、一人一人が看護師という職業に誇りを持ち、日々成長していけるのではないかと感じました。

矢野尾看護部長、この度はとても貴重なお話をして頂きまして、誠にありがとうございました。

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