大口病院病棟閉鎖へ 〜安全が崩壊する前に

大口病院病棟閉鎖へ 〜安全が崩壊する前に

  • 2016年12月6日
  • コラム
大口病院病棟閉鎖へ 〜安全が崩壊する前に
大口病院病棟閉鎖へ 〜安全が崩壊する前に

事件から3ヶ月、入院病棟閉鎖へ

 

9月に発生した、横浜市の大口病院で発生した点滴からの異物混入事件から2ヶ月が過ぎました。

また、10・11月には産業医大病院で点滴袋に穴が開いているものが見つかりました。

どちらも警察による捜査が行われているものの、原因の特定がされないまま時が過ぎていっています。

 

先日のニュースで、大口病院が事件から3ヶ月後の年内で入院病棟を閉鎖するという報道がありました。新規入院患者を受け入れられず、経営が成り立たなくなったというのが理由だとのこと。警察の捜査によって、病院は経営面でも窮地に陥ってしまったのです。個人病院である大口病院にとって非常に大きな痛手でしょう。

 

仲間を疑いながら働くということ

事件が起こった背景については様々なメディアがその可能性について論じています。どれが正しいのか、そのことについてここで検討するつもりはありません。しかし、看護師の資質・スキルに差があるとしても、強いストレスの中勤務を強いられた彼らの疲労度は計り知れないものがあるということは確かです。「もしかしたら一緒に働いている仲間が犯人かもしれない」そんな思いを抱きながら仕事した経験を持つ人はそういないでしょう。疑いながら仕事をすることほど悲しいものはありません。次の医療事故を引き起こすきっかけにもなり得ます。そこに3A(安全、安心、明るい)な環境は存在しないでしょう。

 

患者・家族の不安やストレスも同等のものが予想されます。「この点滴は大丈夫なのか」「今飲む薬は処方されたものと合致しているのか」「次は自分の母親が狙われるのではないか」本来ならばしなくていい心配・不安を突如として抱くのですから、その心中たるや大変なものがあるでしょう。

 

85床の病床数から考えると、病棟閉鎖によって数十人の看護師が退職等その影響を受けるとが考えられます。大口病院で働いていたという履歴が彼らの将来に負の影響を与えないことを願いたいものです。

安全はどこへ

 

医療安全について病院全体で取り組み、医療事故を防いでいくことは今や常識ですが、今回のような事件が起こったことで、病院の安全確保に新たな課題が浮かび上がりました。防犯カメラをつけて監視することで、点滴をカギ付きの場所に収納することで、解決するのでしょうか?院内の安全が保障されなければ、安心を提供することができず、患者との信頼関係を継続することは難しくなってしまいます。不信感から信頼は生まれません。そうさせない環境を作っていくことこそが安全への近道ではないでしょうか。

高山 真由子
シンカナース副編集長
慶應義塾看護短期大学  東海大学健康科学部看護学科 看護学士  早稲田大学大学院政治学研究科 ジャーナリズム修士  ニューヨーク留学  慶應義塾大学看護医療学部 慢性看護学実習指導  東海大学健康科学部看護学科 在宅看護学実習指導  東京都御蔵島村 保健師  シンカナース副編集長