No.92 蒔苗 奈都代様(防衛医科大学校病院)後編:大変だからこそ、やり遂げた時には大きな達成感がある

インタビュー

前編に引き続き、防衛医科大学校病院の蒔苗 奈都代看護部長へのインタビューをお送り致します。

究極の「愛と智」

防衛医科大学校病院の看護部の理念「愛と智」を実践するために、どのようなことを心がけていらっしゃいますか。

蒔苗:愛も智も、どちらも究極の言葉です。

深めても、深めても、最終到達地点はなかなか見えてきません。

看護にもそうした側面があります。

看護師一年目だけでなく、看護師歴が十年、二十年の人であっても、日々自分自身が人に対してどのように接するのかなど考え続け、常に理想を追い求めなければいけないと思います。

学習と教育についても常に努力していく必要がありますから、働くスタッフにも考えて行動をして欲しいと伝えています。

看護師は一生勉強の職業だともよく言われますね。

蒔苗:本当にそうだと思います。

医学自体が日進月歩です。

日々新しい何かが開発されたりしている中で、私たち看護師だけが同じ場所に留まっていることはできません。

社会全体で考えても高学歴の方が非常に多いですし、医療情報もご自分で集められていたり、権利意識が強くなったりしています。

当然、看護師にもきちんとした言葉を使って適切に説明をしたり、行動することができる人が求められています。

そういう人にならないといけないのだと思います。

そういう部長の思いをスタッフの方に伝える機会はありますか。

蒔苗:師長に対しては管理者会議で伝えています。

スタッフ一人一人に直接となると、病院自体は常時稼働しているので普段は難しいです。

年に一回、看護部として様々な事を話し合う大きな集まりでは必ず伝えています。

理念を基に毎年一年の目標を設定していますので、各師長を通じてそれをスタッフ一人一人に伝え、各自の目標管理に繋げていくようにしています。

そうして、間接的にではありますが理念が隅々まで行き渡るよう努力しています。

命を預かる意識

看護部について教えていただけますか。

蒔苗:当院では現在420名の看護師と30名弱の看護補助者が働いています。

病棟にもよりますが、基本的には各病棟に看護補助者を1〜2名配置しておりまして、看護師達は三交代もしくは二交代で働いています。

病院の近隣や寮に住んで居る人もいますが、少し離れた狭山市や入間市から通勤する方もいます。

看護補助者の方のお仕事内容はどのようなものでしょうか。

蒔苗:病衣の運搬やお掃除など看護師が行うことの周辺業務に加えて、看護師の指導のもと車椅子の患者さんを検査やレントゲン室にお連れしたり、入院の方をお部屋に誘導したり、書類や検体を回収・運搬する等、様々なことをお願いしています。

ヘルパー資格をお持ちの方も、全くそうした資格をお持ちでない方もいらっしゃいます。

新人看護師は、毎年どのくらい入られるのですか。

蒔苗:防衛医科大学校の技官コースの学生はほぼ全員卒業すると当院に就職してきます。

他の学校を卒業されても当院に就職することはできます。

実際次年度は、外部の大学を卒業された方々が複数名入職する予定です。

こちらの教育システムについて教えていただけますでしょうか。

蒔苗:クリニカルラダーはほぼ日本看護協会のシステムに沿ったものですので、他の病院に行っても全く違うということはなく、経験年数などに応じて必要なところは押さえていると思います。

当院は救急と感染に強い病院を目指していますので、その2点に関しては独自教育システムを作り、徹底した教育も行っています。

看護師は人の命を預かる職業なので、そこに対する意識は高く持ってもらわないといけません。

自分たちがしっかり学習していかないと「患者さんが困る」ということに繋がってしまいます。

ですが、学び続けている限り看護師は続けられる職業なので、一生懸命毎日頑張ってほしい、と若い人たちに伝えています。

可能性を忘れずに日々精進

新人看護師の中にはリアリティーショックを受けてしまう人も居ますが、どうしたら良いのでしょうか。

蒔苗:新人看護師は働き始めると、学校で学んだことと臨床で毎日対処しなければいけない事のギャップが大きく、悩む方が多いといわれています。

いま国立系の大学病院に就職する人の70%以上は大学を卒業した人たちです。

そうした方々は「頭作りはできているけれども、技術面が十分ではない」という状態だと思いますが、一年も経てば3年課程の人たちと変わらない技術力を身に着けていくことができます。

ですから、「自信をもって」といいますか、腐らず毎日きちんと丁寧に実践を重ねていって欲しいと感じています。

そして基礎で学んだことを忘れずに、一つ一つ丁寧に自分の知識・経験を積み重ねていく事、自分は色々な可能性を持っているのだという事を忘れずに、日々精進してくださるといいなと思います。

あとは、人につらさを言えない人は、つらくなり易いかもしれません。

先輩たちも同じ道を通ってきていますから、つらい時には「こういうことがとてもつらい」と言える人になってもらいたい、とも強く感じます。

「ここは分かるけれど、この部分がよく分からなかったので、もう一度教えてください」とお願いする姿勢や、教えてもらったときの「ありがとうございました」という言葉もとても大切です。

楽な仕事はありません。

どのようなアイドルでも裏ではどれほどの努力をしているか知れません。

大変だからこそやり遂げた時の達成感は大きく、患者さんから頂く一言で涙するくらい嬉しいと感じることもできます。

看護師として働いていて、辛いことは沢山あるかもしれませんが、それをカバーするくらい、それ以上に嬉しいことが沢山あることを忘れないで欲しいです。

蒔苗看護部長からのメッセージ

最後にメッセージをお願いいたします。

蒔苗:当院について、堅いイメージをお持ちの方もいらっしゃるかと思いますが、入院されている患者さんの99%は近隣にお住まいの方々です。

所沢市・狭山市・入間市や、東村山市などの東京都下在住の一般の方が入院されております。

私たちは防衛省の職員ではありますが、特別職の国家公務員という枠組みで、一般の病棟勤務の看護師と同じように仕事をしています。

ご応募頂けましたら親身に対応させて頂きますので、是非いらしてください。

よろしくお願いいたします。

シンカナース編集部インタビュー後記

看護部の理念でもある「愛」と「智」、それと看護。

その3つは終わりが見えないほど深めていけるものだ、という蒔苗看護部長のお話がとても印象的でした。

そして、最新の知識と技術だけでなく温かな人間性を持ち合わせていることは、看護を深めるために欠かせない要素だということも強く感じました。

また、蒔苗看護部長からの、

「自分が様々な可能性を持っていることを忘れずに、自分の力と未来を信じて進んで行けばいい」

「看護師として働いていると出会う辛いことや悲しいこと、それを補っても余りあるほどに看護師として働くことから得られる喜びがある」

という、力強いメッセージに背中を押して貰える看護師も沢山居ることを確信しています。

蒔苗看護部長、この度は大変勇気の頂けるお話、メッセージをどうも有難うございました。

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