No.87 池田 宏子様(兵庫あおの病院)後編:関心を持って患者さんに関わること

インタビュー

前編に引き続き、兵庫あおの病院の池田 宏子看護部長のインタビューをお届けします。

患者さんの日常を知っているからこそ分かること

看護部理念『心のかよう、やさしい看護』を実践するために心がけていることはありますか。

池田:やはり、関心を持って患者さんに関わる、看るということです。

スタッフは、毎日のちょっとした変化を「今日は機嫌が悪いですね」「今日は機嫌がいいようですね」などと表現しますが、これは日々の様子を知っているからこそ、表情、体の声、食事の摂取状況といった変化でわかることなのだと思います。

具体的にはどのようなケアをされていますか。

池田:人工呼吸器管理の患者さんは、口から食べ物を摂取することができないので胃瘻を使って摂取されていますが、口から食べなくても注入食を入れる前には口腔ケアをしています。

『関心を持つ』ということがそのようなケアにつながっていくのですね

池田:患者さんは必ず何らかのサインを出しています。

だから、『関心を持つ』という一言なのですが、これはとても大事です。

昨日、大学の実習が終了し、学生があいさつにきてくれたのですが、初日に患者さんを見たときと、1週間の実習のあとでは、患者さんの反応が違う、と言っていました。

これが『関心を持つこと』であり、学生の患者さんを看る目が変わったからだと思います。

1週間、『関心を持って』、一生懸命に患者さんをみているから、一つ一つの小さな仕草、変化に気づくことができたのだと思います。

変化を感じる力

学生は1週間で『関心を持つ』、変化を感じる、ということを身につけたのですね。

池田:もともとその力を持っていたのだと思います。

学生が一生懸命に患者さんをみている中で、指導者が助言をします。

少しだけ助けることで、初めて患者さんを見た時と表情が変わって見える、これは学生自身が持っている力で、それは新人看護師も同じです。

看護師はみんなこの力を持っているのだと思います。

新人の看護師はどのくらい入ってこられますか。

池田:近年は約10名の新人看護師を採用しています。

最近は人工呼吸器をつけた小児の患者さんが増えており、ポストNICUのような形になっています。

やはり患者さんの安全のためにも、スタッフの安全のためにも、人を増やしたいなと思っており、障害者7:1を目指しています。

そのためにはもう少しスタッフが必要になるので、臨時で中途採用の方にも見学していただき、現場を見たうえで考えていただき、採用してます。

来年はたくさん採用したいと思っています。

あおの病院には一般病床もありますし、配置換えもできるので、新人看護師の方にもぜひたくさん来てほしいですね。

兵庫あおの病院は他院との連携もされていますか。

池田:はい、地域の病院や開業医の方々と連携しています。

回復期はもちろん、慢性期、終末期の患者さんをご紹介頂いています。

環境を整える大切さ

看護助手と療養介護士の方々について伺ってもよろしいですか。

池田:はい、病棟には、看護師の他に、療養介助職という形で介護福祉士、介護職員初任者研修終了者、また、看護助手を配置をしています。

看護助手の方は、患者さんに直接援助することは当院ではあまりありません。

重症心身障がい児(者)は免疫力が落ちていて感染しやすかったり、骨粗鬆症だったりします。

少しの環境の変化などに影響されます。そこで、看護助手の方々には、環境を整えてもらっています。

とても重要です。

看護助手の方々が行う感染予防とは具体的にはどのようなことですか。

池田:感染予防については、例えば湿度管理です。

室温はエアコンで調整できますが、冬は特に乾燥するので湿度の管理が必要です。

湿度を45%以上に保ちたいのですが、20~30%になってしまうので、加湿器を使用したり、原始的ですがバスタオルを濡らしてみたりもしています。

看護助手の方は他にどのような業務をされていますか。

池田:その他に、病室・病棟内の清潔で快適な環境整備。患者さんへの食事・口腔ケア・排泄などのケア前の準備と片付けを実施してもらっています。

また、シーツ交換、洗濯物の整理整頓もしてくれています。

一般病院では患者さんの移送をすることもあると思いますが、当院では環境を整えることを主にやってもらっています。

患者さんに直接何かをする、ということはありませんが、やはり毎日顔は見ているので、「今日は違うね」と変化は感じてくれているようです。やることが多いので忙しいと思いますが、看護師とは違う目でみてくれているのでありがたいです。

では療養介護職の方はどのような業務を担当されていますか。

池田:日常生活の援助を看護師と一緒にしています。

ほとんどの方がベッド上の生活であり、骨密度の低い方、骨粗鬆症の人が多いです。そのため、体の動き一つで危険になることもあるので、ポジショニングは気を付けてやってくれています。

他にはどのような職種と連携されていますか。

池田:医療機器業者の方が、採寸して一人ひとりに合わせたオーダーメイド車椅子を作ってくださったりしています。

作るのは医療機器業者さんですが、療育指導員、理学療法士なども関わってくれていたと思います。

本当にたくさんの職種の方の意見を聞きながらやっています。

急性期にはない喜び

どのような時に「やりがい」を感じますか。

池田:すぐには大きな変化がなくても、少しずつ根気よく毎日継続することで、何年かのスパンで成長していき、それが感じられる事があります。

気管切開し、声を失った患児が発声練習をし、歌をうたってくれたことがありました。

最初はできなかったのですが、歌が歌えるようになり、スタッフが喜んで報告をくれました。

このように長期で関わる患者さんへの喜びは、急性期にはない看護の喜びです。

一人の患者さんに対してみんなで相談して決めた目標が、長い間かけて結果として感じられた時は嬉しいです。

 

ご自身が大切にされていることはありますか。

池田:大事にしている言葉に『ダイヤはダイヤで磨かれるように、人は人で磨かれる』というのがあります。

ダイヤモンドのように固いものはダイヤモンドでしか磨けないように、やはり人は人でしか磨けないので、実習というものがあるのだと学生に伝えていました。

私自身も、看護師になっていろいろな人に出会えたことが嬉しいですし、看護師は患者さんに育てられるところが大きいのだと思います。

看護師として入職した時は、2、3年したら退職するかなと思っていました。

でも看護にはまってしまったのだと思います。

そうでないと、ここまでできないと思います。

毎日忙しくされていらっしゃると思いますが、何か息抜きはされていますか。

池田:趣味は特にないのですが、唯一の気分転換はサッカー観戦です。

ワールドカップで日本代表を応援するのが好きで、中でも中村俊輔さんが好きですね。

一人で観戦したり、友達と一緒に行ったりします。

看護師を一人で悩ますことは絶対にない

最後にメッセージをお願いします。

池田:看護はとてもおもしろいです。

一つとして同じ看護はありません。兵庫あおの病院では、一つ一つ考えながら、工夫しながら、じっくり時間をかけた慢性期、回復期、終末期の看護ができます。

教育プログラムは、5段階のラダープログラムがあります。また、院内認定看護師制度もあり看護師としての能力開発の支援をしています。

もちろん現場で実践しながら、看護師一人ひとりに合わせたサポートができるように関わっています。大事に育てていきたいと思いますし、決して一人で悩ますことはないと、私は確信しています。

あおの病院に興味を持たれた方はぜひ見学に来ていください。

よろしくお願いします。

シンカナース編集部インタビュー後記

重症心身障がい児(者)の看護をもっと多くの人に知って貰いたい。

そう熱意を込めてお話してくださった池田看護部長。

看護は画一的なものではなく、看護する場所、さらに言えば相手一人一人に合わせて柔軟に変化していくものだと思います。

ですから兵庫あおの病院は、急性期病院とはまた異った看護の醍醐味を味わえる病院です。

そして、「働く職員を一人で悩ませることは絶対にない」という言葉は

新しい看護にチャレンジしてみたい看護師の背中を力強く押してくれることでしょう。

池田看護部長、この度は貴重なお話をどうもありがとうございました。

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