No.2 伊藤貴子様(みつわ台総合病院)「やはり現場を知ることが大切」2/2

インタビュー

1/2に続き、みつわ台総合病院の伊藤貴子看護部長のお話をお届けします。<後編>では3A(安全/安心/明るい)な職場作りへの取り組みや、他職種との協同など、日々奮闘する様子を伺うことができました。

「こじんまり」だからこそできる細やかなサポート

〜7割以上の看護師が子育て中ということは、3A(安全/安心/明るい)な職場づくりが実践されているからだと思いますが、具体的にどのような点を工夫して業務を行っていますか? 

伊藤:家族の予定を踏まえたシフトの調整、保育所等サポート体制は充実させています。その甲斐あって転居等家庭の事情での退職は除き、出産後に復帰する看護師はほぼ100%です。

一方で、子育て中の看護師が多いとどうしても避けられない問題は、子供の体調不良等による勤務当日の欠員です。1人の欠員なら病棟内でなんとか調整できますが、一気に3人欠員ということになればどうにもまわらなくなってしまいます。そういう時は看護部の出番!電子カルテ上にある院内LANや各部署に電話をし、全病棟に向けてヘルプを求めます。他病棟も余裕があるわけではありませんが、「午前中だけなら」とリリーフで応援に来てくれるんですよ。私も整形外科での勤務経験があるので、時には救急室で患者さんの処置介助に入ることもあります。

欠勤した看護師を責めても何も解決しませんから、私たちが率先して動くことで「何かあったら看護部が助けてくれる!」という共通認識が看護師たちの中に根付き、お互いを助け合う体制が自然と出来上がっていったのだと思います。

平松:看護部と現場は離れちゃダメなんですね。こういったサポートはこじんまりとした病院だからできることだと思います。看護部という組織としての手順は守りつつ、できることを最大限やる。現場の看護師が「患者さんと約束していたことができなかった」ということがないようにしたいですからね。

他職種を味方につけて業務の効率化に成功

〜看護師と他職種・看護補助者との連携や関係性はどのようなものでしょうか? 

伊藤:他職種に依頼してできることはやってもらえるように平松理事が環境を整えてくれました。午前・午後の1日2回、臨床工学技士(ME)が病棟をラウンドして医療機器の点検やトラブルに対応しています。人工呼吸器のセッティングをはじめ、機械に不具合があれば新しいものを病棟に持ってきてくれます。看護師が医療機器を取りに走ることがまずないんですね。薬剤師は定時薬を投薬ボックスにセッティングしてくれるので、看護師の残業を減らすことができました。リハビリには患者さんの送り又は迎えを依頼しています。患者さんをリハビリの予定時間ちょうどに案内できるようになったことで、リハビリ側にとってもメリットは大きかったのです。呼吸器リハビリで吸引できるように看護部がリハビリスタッフに研修を実施するという体制も作りました。各部署と根気よく交渉を続け数年前にこの連携がとれるようになったんです。

看護補助さんももちろん欠かせない存在です。一般病棟にはそれぞれ6人の看護補助さんが勤務し、夜勤もこなします。看護部が接遇・技術等の教育を繰り返し行うことで全員が技術を習得し、大きな戦力となっています。看護師との連携は病棟師長が仲介して調整し、お互いの意見の食い違いを防いだり、情報共有を行ったりすることでいい関係の中で仕事ができているようです。

助けるから助けられる

〜看護補助さんはもちろん、他職種も看護部で育てる協力をしているんですね。 

平松:助けられていることに感謝することが大事ですよね。それに慣れてしまうと「当たり前」になってしまうのが怖さです。退職して他の病院で働く看護師が「当たり前ではない」ことに気づいて戻ってくることもあります。

業務整理する中で気づいたのですが「これが看護師の仕事」という線引きがないんですね。全部看護師がやるべきことでもあるわけです。本来誰がやったらいいのか、という視点で考えて各部門へ依頼しています。

患者さんたちは治療のために入院しています。病気を治療する医師がいて看護師はそれをサポートする役割があり、その上で看護の独自性を発揮できます。この2つの部門がきちんとした仕事ができる体制をとらなければ絶対に病院はうまくいきません。各部門を説得できるまでに数年間かかりました。看護部だけが頑張るのではなく、管理職をはじめいかに他職種を巻き込んでいくかが非常に大事なのだと思います。

常に「発展途上」の気持ちを胸に

〜5年後の看護部の予想図を教えてください。 

伊藤:医療界の変動に翻弄されつつも、病院が果たすべき役割の中で私たちがやるべきことを考えてしっかり看護ケアを提供していきたいですね。私たちのような規模の病院は、国が決めた制度の中でもがいている状況です。常にアンテナを高くして地域性・住民の特性を把握し、それに沿った医療・看護を提供することが求められています。与えられた環境の中で最大のことを行うためにはやはり現場を知ることが大切、ここにつながるのかなと思いますね。

〜最後に看護師として・女性としてご自身の今後の目標をお聞かせください。 

伊藤:看護師として相手の患者さんやスタッフそれぞれの相手の立場に立って考えられるような管理者でありたいなと思いますね。医療人・組織人として責任をきちんとはたせるように常に自己研鑚を積んでいきたいです。

また、家に帰れば小学生の男の子2人の母でもあるので、看護師として働く姿を通して子供たちの成長につながるような社会人としての自分を見せることができたらと思います。家族の協力あってこの仕事ができているのでどちらも大切にしていきたいですね。

<シンカナース副編集長 インタビュー後記>

子育て中の看護師だけが満足する職場ではなく、すべての看護師がそれぞれの環境に合ったキャリアを積めるような職場を目指して奮闘する様子を伺うことができました。それはまさに3A(安全、安心、明るい)の実現を目指す職場と言えるでしょう。何年もかけて他職種を味方につけたという平松理事の行動力の裏には、看護師を大切にしたいという切なる願いがありました。「何年たっても発展途上」とおっしゃる伊藤看護部長を後ろからしっかりとサポートする平松理事。素敵なお2人の姿は院内の看護師たちへと伝わり、お互い助け合うという環境が「日常」として根付いたのだと思います。伊藤看護部長、平松理事、貴重なお話をありがとうございました。

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