No.74 小坂 晶巳様(相澤病院)後編「急性期病院で学んでどこでも通用する看護師に」

インタビュー

前編に引き続き、相澤病院の小坂 晶巳副院長へのインタビューをお届けいたします。

チームで新人看護師を育てていく

貴院の看護部独自の教育制度であるAi-Ness(アイネス)は生まれてきたのでしょうか。

小坂:Ai-Ness は15年ほど前に作られたものです。

当時の教育委員会の考えは、新人の教育研修は2週間くらいにして現場に出てもらうつもりでしたが、3月中旬、もう少しで新人が来るという土壇場に院長から「2週間では短い、1ヶ月しっかり教育してから現場に出さなければ現場は困るだろう」というアドバイスを頂きました。

今もそれを引き継いで三週間程度の集合研修があります。

そのうち後半の二週間は看護部だけの研修で、主にシミュレーションセンターで看護技術を丁寧に学びます。配属部署に行くのは、4月末になります。

その当時はプリセプターやプリセプティが流行っていて、お互いにウマが合えば新人も先輩も上手に育つが、ウマが合わないと人間関係から悩んで、新人が病院に来る事が怖くなるという話を聞いていました。

当院ではAi-Nessという配属されたチームの先輩全員で、新人に対して責任をもってチームで育てるという教育体制にしています。

プリセプターが休みだから面倒を見る人はいないのではなく、毎日先輩が必ず教育の担当者として新人と仕事を組んでやっていく体制を作る事で15年やってきています。

チームで新人看護師を育てる環境にして違いは出てきましたか。

小坂:新人が誰にでも聞く事が出来るようになり、色々な先輩の看護観を聞きながら、自身の看護観を考えていくきっかけとなったと聞いています。

1対1であれば一人の先輩と話をして振り返りをしますが、色々な先輩と一日振り返る時間を設けますので、様々な先輩の意見を聞いて考えられるようになった事は大きな違いになったと思います。

その一方で戸惑いとして、新人看護師が色々な情報を得る事で、かえってわからなくなってしまう事などはありませんでしたでしょうか。

小坂:人によっては悩むことはあると思います。

しかし、その中でどうすれば良いかを考える機会を設けています。

毎月、看護科長が新人を面談をする時間を作ったり、教育担当者の職員も置いていてその先輩と面談しながら悩みを拾い上げて育てています。

新人が孤立しないという事が一番大きいですね。

小坂:そうですね。声をかけてもらう事や、気にかけてもらう事が良いのではないでしょうか。

しかし、新人がどこまで進んでいるかという情報共有は難しくなります。

1人だと情報を一本化できますが、チームで見ているので、それを情報共有するための技術チェックリストを作っています。

例えば採血や点滴の手技がありますが、先輩の見学をする、一緒に実施する、1人で実施するという様に、段階を踏んでチェックしています。

そして、一人で実施できるようになった時に見極め印のサインをもらう形となります。

そうする事で、今日はどこまですればいい、昨日はどこまで進んだ、前回はどこが上手くいかなかったので今日はそこをやってみるという事がチェックリストで分かりやすくなっています。

そして、リストを用いて先輩が情報共有をし、今月はどこまで出来るようにするのかといった教育目標を一緒に持つことが可能となります。

新人看護師が色々な先輩から育てられる事で、退職される方は減少しているのでしょうか。

小坂:新人さんの離職が高い時もありました。

臨床心理士や精神看護専門看護師に協力してもらってメンタルヘルスのサポートを院内で整えました。

また、集合研修の時に新人同士で悩みを言い合い、アドバイザーとして先輩スタッフが介入するという事を進めています。

新人の離職率は下がって今では年1名程度です。

もちろん、適切な部署への配置換えも行っています。

急性期では忙しくてついていけない人もいますが、どの部署であれば新人が自分らしい看護を提供できるのかを一緒に考えています。

新人の看護師さんは毎年何名くらい入職されるのでしょうか。

小坂:40名位おります。

以前は県外ばかりで中堅クラスになると地元に帰ってしまったり結婚して地元に帰ってしまったりする事が多くありましたが、現在は地元出身の方が多いので、こちらで結婚やお産をして、育児中に復帰する方が多くなりました。

特に病院保育所が出来るまでは、2割弱程度の復職でしたが、今は、ほぼ全員がお産した後に復職するようになりました。

今まで、いなかった年代は増えてこられましたか。

小坂:充実してきています。

中堅どころが育児中のお母さんになっています。

それぞれが責任をもって仕事をし、協働する

この病院では看護補助者はおられますか。また、どのようなお仕事をされていますか。

小坂:80名程度配置しています。

その中に介護福祉士は43名います。

実は多くの病院が看護部の中に補助者組織を持っていますが、当院では別組織となっています。

病棟看護支援部門という形で病院長の下に組織があります。

部門長は看護職ですが私ではなく別の者が別組織として管理をしています。

その中に介護福祉士の介護課や病棟の日常業務を行う病棟の支援課があります。

部門長が労務管理や部門全体の人材活用を考えますが、現場での業務管理は、病棟看護科長にあります。科長が看護職員と補助者の協働を管理しています。

特に介護福祉士は療養上の世話や日常生活支援にて国家資格を持っているプロフェッショナルなので、看護師よりも得意な分野もあります。

介護福祉士の提案を受けて看護師の生活支援のやり方を見直す事もあります。

日常生活の支援を責任を持ってやっていただいています。

看護師が介護福祉士へ業務を指示し、それに基づいて介護福祉士が権限委譲を受けて、責任をもって日常生活ケアを提供しています。

何かおかしいと思う事は、介護福祉士さんが現場の看護師に困った事や変化を伝え、それを看護師が見に行き医師への報告が必要であれば、それを医師へ報告するのは看護師の仕事という様に役割を分担して責任を持たせて、各々が協働する仕組みを作っています。

介護福祉士の資格を持たない看護補助者はどのような仕事をされているのでしょうか。

小坂:例えば吸引瓶を洗浄する事や物品で整理整頓する物があれば収納してもらう事、またシーツの交換を行うなど、患者さんに直接関わらない部分の支援をしてもらっています。

夜勤はありますか。

小坂:介護福祉士の方に夜勤をしてもらいます。

一般病棟で2名、回復期リハビリ病棟は配置基準に基づいて2名の夜勤者を配置しています。

相澤病院は急性期病院ですので、一晩だけで10名~15名入院します。

入院を受ける事やお亡くなりになった方のケアが同時に重なった場合などに、介護福祉士に病棟の患者さんの生活支援をお手伝いして頂いています。

夜間の管理当直の日誌では、ほぼ毎晩、介護福祉士に応援要請して業務を手伝ってもらったという事が書かれています。

本当に病棟看護師は看護補助者を頼って仕事しているといえます。

仕事以外での気分転換や、趣味などはありますか。

小坂:伯母が茶道教室の講師だったので、いつも生活の中に茶道がありました。

あとは犬と遊ぶ時間も気分転換になります。

好きな音楽を聴かれたりはしますか。

小坂:DAISI DANCEが大好きです。

音楽を聴きながらのドライブは気分転換になります。

急性期病院で学んでどこでも通用する看護師になってほしい

最後に看護師を目指す人や、新人看護師の方にメッセージを頂ければと思います。

小坂:看護師は病院で働く方が今は大半ですが、今後日本の人口構成を考えると地域や在宅で働く看護師のニーズが多くなると思っています。

最初から在宅や訪問看護をするということも夢に描いてもらって、それを実現するという事も一つの方法と思いますが、急性期病院で基礎的なフィジカルアセスメントや、医療機器の取り扱いを学んでほしいと思います。

地域の看護師として看護の基礎を身につけていれば、自信を持って働ける看護師になれるのではないでしょうか。

急性期病院は忙しいですが一生懸命勉強して働いて、そして後々には地域に出ても通用する看護師になって欲しいと思います。

急性期病院で看護のエンジンを身につけて、将来どの方向に舵を切っても通用する看護師に成長して欲しいと思います。

シンカナース編集部インタビュー後記

小坂副院長は、何事にも精力的に取り組まれる非常に熱意あふれる方でした。

日々実践していく看護の中で、色んなやりたいことが様々なアイデアとして生みだされ、それを確実に形にしていく取組みは、まさに開拓者だと感じました。

そんな中でも新人看護師の教育体制(Ai-Ness)の取組みは、とても印象的でした。

15年前に作られた教育体制ですが、それをベースに常に改革し、進化させています。

それが新人離職率の低下につながっていることが、確実に数字となって現れていました。

小坂副院長、この度は素敵なお話をしてくださいましてありがとうございました。

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