No. 64 眞野惠子様(藤田保健衛生大学病院)後編「目配り気配り心配り」

インタビュー

前編に引き続き、藤田保健衛生大学病院の眞野惠子副院長へのインタビューをお届けいたします。

見えない看護を徹底的に可視化する

看護部として取り組まれていらっしゃることを教えていただけますか。

眞野:当看護部の理念は「患者中心の看護」です。

それを実現するためには目には見えにくい看護を可視化して、スタッフを教育していくことが大切だと思っています。

当院の新人は就職した後も学校と同じように座学で教育を受ける機会が多くあります。

受講後に感想を尋ねると「この研修がよかった」「これが学びになった」というものしか出てきません。

ラダーに沿った教育は大切ですが、問題はその教育をした結果、どういった看護がされているかではないでしょうか。基礎教育と同じ教育のあり方に疑問を感じています。

当院では教育で学んだ知識をどのように実践で使ったかを文章にして貰っています。

文章化してもらう事は1つの可視化です。

書くことで自分の看護をみんなに伝えられるようになります。

新人でキャリアはなくても、自分の看護を見つめる事ができます。自分の看護を第3者に伝える機会をもうけて、フィードバックをもらえることで現場が活き活きとしてくるのではないかと考えています。

他に取り組んでいることは、各病棟の超過勤務の月別データを集めて分析しています。

病棟毎に数値化する事で、超過勤務が多くなる月など病棟の傾向に気付いて対策を練ることができます。

このように、病棟の中で行われる看護の結果を可視化してマネジメントに活用しています。

また、看護長が全員集まる看護管理者会議の中で良い事例の「Good Job報告」をしています。

「この理論を活用しましょう」というので終わらせないで、「この理論に基づいて展開してみたらこのような良い結果が出た」というのを伝えるのです。

良いマネジメントができた実例を理論に落とし込み共有すると、他の人も同じように取り組めると思うのです。

なぜ「可視化」に注目されたのでしょうか。

眞野:看護の特徴であるサービスの無形性、生産と消費の同時性などは目には見えないと言われています。

看護をしていると言っても、実践した看護が良かったのか、何をもって良い看護というのか、その時の受け方によって評価は変わってきます。

そのため、少しでも自分たちが行なっている事を目に見えるようにし、他者に伝えていかなければ、実践している看護の評価は上がらないと思ったからです。

他職種との協働については如何ですか。

眞野:当院の売りはチーム医療です。

病棟にいる看護師一人ひとりと他職種との連携が本当にとてもよくできていると思います。

ワークライフバランスに関しては何か取り組んでいらっしゃいますか。

眞野:組織としてワークライフバランスのための支援はしなければいけないと思います。当院での多くの取り組みが評価されて「ワークライフバランス大賞」も受賞しました。

でも、いくら良い規則や支援があったとしても、そこに人がきちんと定着して生き生きと仕事をしてくれるのかというとそうではありません。

勤務形態や福利厚生を充実させたとしても離職率は極端に減る訳ではないのです。

「休みを与えたからそれで良い」のではない、ということです。

ではどう解決するかと考えた時に、看護管理者を育成・支援することに行き着きました。

目配り気配り心配り

副院長が人との出会いを良いものにする為に心がけていらっしゃる事はございますか。

眞野:「目配り気配り心配り」と第一印象です。

やはり人への配慮を大切にしないといけないと思います。

それがないと自分を受け入れては貰えないですから、相手との良い関係性を続けるためには必要だと思います。

第一印象、態度、言葉のトーンに気を配って、絶対に相手を不快な気分にさせないようにしています。

「よかった」とか「また会いたいな」と思う気持ちは自分からの一方通行ではなく相互作用ですから。

副院長としてのお仕事はいかがですか。

眞野:私は今与えられた役割を、本当に楽しんで取り組んでいます。

間もなく定年になるので、まだまだやっていきたいと思っている途中でとても悔しいです。でも、看護師人生の最後を病院で終えるという自分の夢が叶えられるのをとても嬉しく感じます。

日々のリフレッシュのために取り入れているご趣味等はございますか。

眞野:趣味はゴルフです。

主人がゴルフをしていたので誘われて始めたのですが、やっていて良かったと思います。

ゴルフは青空も楽しめますし、18ホールを回る間にいろいろな方とお話しできる機会にもなります。

それと、一緒に住んではいないので頻繁に会えませんが、孫に会うとほっとして癒されます。

あとは意図的にですが、気分転換のためにコンサートや観劇などにも行っています。

眞野副院長からのメッセージ

新人看護師に向けてメッセージをお願いします。

眞野:こんにちは。

藤田保健衛生大学病院の副院長の眞野です。

当院はワークライフバランスに長けた病院です。

みなさんはどんな看護がしたいでしょうか。

藤田保健衛生大学病院ではみなさんがやりたい看護が実践できる病院です。

当院は急性期だけでなく、緩和ケア病棟や周産期に特化した病棟など、患者さんの状態に応じた病棟をいくつも持っています。

本院以外にも第2教育病院、第3教育病院、そして平成32年には岡崎市に第4教育病院もできる予定です。

中部国際空港である「セントレア」には診療所、更に大学病院のキャンパス内には地域包括ケア中核センター、訪問看護ステーションもあります。

新生児から緩和ケア、在宅に至るまで、やりたい看護を選べる環境が整っています。

病院に勤めながら訪問看護を行うこともできます。

来年(平成30年)の4月には国際医療センターがオープンします。英語や中国語を喋れる方もご活躍頂けます。

また、看護大学もありますので、学校の先生になりたいという夢がある人は、臨床を何年か経験して、教員になることも可能です。

認定看護師や特定行為研修など、大学院へ進学する支援も行なっています。

みなさんが看護師として病院だけではなく、地域、また教育の場などで自分の力を試してみたいと思うなら、それを挑戦できる病院が藤田保健衛生大学病院です。

みなさんと一緒に働けることを楽しみにしています。

お待ちしています。

シンカナース編集長インタビュー後記

眞野副院長は、太陽のような笑顔で我々を迎え入れていただきました。

看護を可視化する具体的な資料も沢山お見せいただき、数字、グラフ、言葉など暗黙知の多い看護において、いかに可視化することが大切かということを含め、ご享受いただきました。

出来ない、わからないではなく「どうすれば可能になるのか?」という発想で、様々な業務に取り組まれていらっしゃる。

ご紹介いただいた、新人看護師の気付きに関しても、可視化するには質問内容から見直す必要があるというお話は実に感動いたしました。

病院の規模、職員数からしても、副院長として多忙であることは容易に想像出来ますが、その中におかれましても、仕事を楽しみ、人生を楽しまれていらっしゃり、素敵に輝かれておりました。

眞野副院長、この度は、多くのご示唆をいただき、誠にありがとうございました。

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