残業なしは夢のまた夢?〜看護師の勤務時間問題

コラム

過労死危険レベルの看護師2万人

電通で長時間残業が原因となって新入社員が過労死(自殺)した事件が社会に大きな波紋を広げています。この事件、看護師も無関係とは言えません。2008年に看護師が過労死認定された2つのケースがあることをご存知でしょうか?

残業が「当たり前」と化した看護の現場。定時で終わると逆に「何かやり残したことがあるんじゃないか」と不安になる人もいるでしょう。これは「看護師あるある」の1つにも挙げらるほどで、それだけ共感する人が多いということですが、裏を返せばそれだけ残業している看護師が多いということでもあります。日勤なのになぜか準夜を終えた看護師と共に帰宅、という経験をしたことがある人もいるのではないでしょうか。

この過労死認定を受けて、日本看護協会は❝初めて❞「時間外勤務、夜勤・交代制勤務等緊急実態調査」を行い、交代制勤務をしている23人に1人が月60時間を超える時間外勤務をしていることが判明したのです。計算すると全国で2万人もの看護師が過労死危険レベルの仕事をしていることを意味しています。

看護師を守れ!

時間外勤務の長さは疲労へと直結します。疲労の自覚症状が多いほど医療事故への不安を強く感じている看護師が多いことも明らかになり、疲労と医療事故の関連性が指摘されています。これを受けて、2009年に患者の安全と職員の健康を守る運動「ナースのかえるプロジェクト」が始動し、平成27年度の残業時間は平均9時間と減少傾向にあり一定の成果が見られた一方で、40時間以上の残業をしている看護師が1000人以上(全体の1.8%)いることから、引き続き取り組んでいくべき課題といえます。患者さんに安全安心な看護を提供するためには、看護師の疲労を軽減させることが急務。看護師が心身ともに健康で仕事にのぞめることが患者さんの安全を確保することになるのです。

報われない残業

残業した見返りである「残業手当」についても気になるところですが、実際の残業時間の4割程度の「申請」にとどまっているようです。少なく申請することが職場の慣例となっていませんか?また、始業時間より前に出勤して「前残業」を行うことも日常化していませんか?そして、ケアや処置が終わっても残ってしまうのが看護記録。退院が近い患者さんがいればサマリーの作成、看護計画の評価日であれば評価・修正も加わり帰宅時間はさらに遅くなります。どちらも立派な「残業」ですが、どれだけの看護師が正確に「申請」し、どれだけの病院が「支払い」をしているのでしょうか?

これらの問題の背景には、人員補充できない、人件費の抑制等、病院経営に関する問題をはじめ、看護部だけでは解決できない多くの壁がそびえ立っているのです。病院・施設全体で、さらには行政など様々な機関を巻き込んだ根本的な解決が望まれます。

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