看護で患者の安全を確保する

コラム

繰り返された医療事故

11月20日〜26日は医療安全推進週間です。医療安全に関する研修やキャンペーンを行っている病院・施設もあるでしょう。これが設けられた背景には、1999〜2000年にかけて起こった複数の医療事故の発生があります。横浜市立大学病院での患者取り違え、都立広尾病院での血管内に消毒薬を誤注入、京都大学病院での人工呼吸器の加湿器にエタノールを誤注入など、みなさんの記憶にも強烈に印象づけたものだったのではないでしょうか?これらの事故発生を受けて、2001年厚生労働省に医療安全推進室が設置され、国として医療安全対策の整備に動き出しました。

それまでの「医療事故は絶対に起こってはいけないもの。起こった場合個人の注意が足りなかったからだ」という考えから、「医療事故は常に起こる可能性があり、組織全体で事故防止に取り組むべきだ」という考えへとシフトし、医療安全の確保のために病院に医療安全管理者の配置の義務付けや、医療安全支援センターを医療法に位置づけるといった法的整備も進みました。

安全確保は最も身近な問題

私たち看護師にとっても医療安全の確保は身近な問題の1つといえます。患者さんの安全を確保することは自分自身の身を守ることでもあります。与薬、移乗など日常行っている業務の1つ1つがきちんと実施されなければ患者さんたちを危険にさらすことになります。事実、医療事故の多くは「療養上の世話」に分類されるものです。

みなさんの職場ではどのような医療安全対策が行われていますか?また、仕事中ハッとした経験はありませんか?医療機器メーカーも事故防止のための製品の開発を進め、ハード面では安全な環境が整ってきています。しかし最後に患者さんにケアや処置を施すのは私たち医療従事者、人間の手です。医療機器・製品だけでなく私たちも進化しなければ医療事故は再び起こる可能性があります。

3Aが安全を作る

最近は病院で点滴内に消毒薬を混入した「事件」が起こり、患者さんの安全が今までとは違った形で脅かされています。事件の解決までは患者さん・家族だけでなく勤務する職員にも大きなストレスがかかることでしょう。 仕事が忙しくてつらい、毎日激務という環境では安全・安心を提供できるはずがありません。

私たちは日々確実に、そして誠実に患者さん・家族と向き合い、信頼を獲得しながら看護を提供し、満足度の高い医療を確保していくことが求められているのです。3Aの実現によって医療安全がより確実なものになっていくと期待されます。