No. 59 服部とみ子様(聖麗メモリアル病院)前編「自分に足りないものが『困難』として訪れる」

インタビュー

今回は聖麗メモリアル病院の服部とみ子総看護師長(※2020年9月現在はご退職なされています)にインタビューさせて頂きました。

服部総看護師長の手腕に迫ります。

自分に向き合い、変化に対応して看護総師長へ

看護師を目指されたきっかけを教えていただけますか。

服部:家族が入院をしたことがきっかけです。

白衣を着て、テキパキと仕事をしている看護師に憧れました。

学校を卒業されたあとはどちらの病院にお勤めになられたのでしょうか。

服部:最初は准看護師の学校に通い、そのあと看護学校へ進みました。

その看護学校がこの聖麗メモリアル病院の関連でしたので、卒業してからはずっとこの病院に勤めています。

管理職を目指されるきっかけはございましたか。

服部:最初は周りの推薦を受けてです。

役職が上がっていくに連れて、ご自分の周りや中で変化した事は御座いましたか。

服部:やはりその役職ごと、周りの環境が変わります。

患者さんに対する責任、看護師に対する責任はもちろん生じますし、病院のことも考える必要が出てきました。

徐々に自分の中にも「このままではいけない」という思いが生まれてきました。

なので、看護協会の管理者の研修も受講し、役職が変わる毎に必要な勉強をしてきました。

看護総師長になられたのはいつ頃でしょうか。

服部:今から8年前です。

自分に足りないものが「困難」として訪れる

色々と困難な事があると思いますが、どのように乗り越えていらっしゃいましたか。

服部:私は何か困難に直面すると「どうしようか」と2、3日は悩みます。

でも、何か自分に足りない物が「困難」という形で自分に訪れたと思うようにしました。

そして、困難なことへ対処するにはまず自分と向き合うことが必要だと考えています。

逃げずに自分と向き合って、今後どうしたら良いのかを考えて答えを導き出すようにしています。

勿論、仲のいい部長に相談して意見を貰うこともあります。

あとは看護だけでなく様々なジャンルの本を読むこともします。

その本に夢中になっている内に、何か考えが纏まることもあるのです。

例えば、池波正太郎の鬼平犯科帳シリーズにある組織が出てくるのですが、それが病院の組織に似ています。

その中の登場人物を自分に置き換え、リーダーシップをどのように取るのか考えたこともありました。

看護総師長になられてからはどのような事がありましたか。

服部:8年前に旧病院から現在の病院へ移転をしました。

重症の患者さん方を如何に安全に移動するか、会議を開いて綿密な計画を立てまして、3日間で行いました。

病院の移転はとても大変だと想像しますが、如何でしたか。

服部:大変という思いはありましたが、「仕事をするのであれば楽しくやろう」と考えていたように思います。

今現在、看護総師長として具体的に取り組まれていることはございますか。

服部:スタッフに対する声かけを小まめに行なっています。

そのままでは、なかなか色々な人とコミュニケーションをとるのは難しいですから、私から声をかけています。

そうして体調の悪いスタッフなどの情報を聞いたりもしています。

小さい事かもしれませんが、そういう声掛けをしたり、学生が入職したら一緒に食事会に出かけたりして、コミュニケーションの取りやすい職場作りを行なっています。

働きやすい職場づくりが私の役割だと思っています。

そして患者さんに良い看護を提供できるようにしていければと思っています。

良い看護を提供するためには家族のことを考えて

看護部理念の「思いやりを大切に地域に根差した信頼させる看護」を届けるために心がけていらっしゃることはございますか。

服部:当院は医療依存度の高い重症の患者さん、会話が難しい患者さんもいらっしゃいます。

よく「患者さんの身になって」と言いますが、看護師が自分を患者さんに置き換えることはそう簡単ではないと思います。

ですから、私は「自分の身近な家族が病気になったら、どうして欲しいか、どういう態度が嫌か」を考えて看護を提供するよう、スタッフに伝えています。

看護師教育を支える地域の繋がり

新人教育に関して伺います。どのような制度がございますか。

服部:一人一人にプリセプターは付けてありますが、ずっと一緒の勤務にするのは難しいのが現状です。

ですから、新人が出勤する日には必ずフォロー役の看護師をつけるようにしています。

あとは新人教育をプリセプターに全て一任するのではなく、チームで教える業務を分担しつつ病棟全体で新人を一人前に育てる活動を数年前から行なっています。

やはり、知識や技術を教えるだけでなく、元気がないときに声をかけてくれる存在も新人には必要だと思うのです。

あとは、月末に必ず教育委員会と現場の指導者が集まって振り返りを行なっています。

チェックリストを元に、新人看護師がどの業務を経験して、今はどのレベルに達しているのかを共有しています。

新人も皆一律に育つ訳ではないですから、個人個人に合わせた指導を行えるように、そうして調整をしております。

その他に特徴的な研修は御座いますか。

服部:当院では長年ローテーション研修を行なっています。

新人が入職して病棟へ配属されたとしますと、オペ室2日間、集中治療室2日間、外来2日間、というように2週間以内で終わるように組んであります。

始められた理由は何かあるのでしょうか。

服部:新人は患者さんがどのような状況で外来に来ているのか、退院した後になぜ外来に来ているのか等、イメージがわかないのです。

病棟だけでなく、集中治療室やオペ室、外来の研修をすることで、脳外科病院の一連の流れを見て貰えます。

そうした流れが見えると、新人も「自分にはこういう視点が弱い」等、具体的に気付くことができると思います。

そして具体的なものが見えると自ら学びを深めていけるようになります。

単科病院という事で行なってらっしゃる事は御座いますか。

服部:単科病院ですと、処置も含めて全ての研修を自分の病院の中で完結できないこともあります。

当院では厚生労働省の新人看護職員研修ガイドラインが出された5、6年前から近隣病院で開催される合同研修に、毎月新人を出しています。

その研修には地域の新人看護師20名ほどが集まります。

同じ学校だった新人同士が再会することもありますし、また別の繋がりも生まれるようです。

地域の病院とも協力して、新人を育てていかれているのですね。

服部:現在はプリセプターの研修も地域でできないか、近隣の看護部長たちと相談をしています。

後編へ続く

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