No. 55 勅使河原由江様 (足利赤十字病院) 後編「スタッフみんなで新人を育てていく」

インタビュー

前編に引き続き、足利赤十字病院の勅使河原由江看護部長へのインタビューをお届けいたします。

スタッフみんなで新人を育てていく

こちらの看護部の理念に、「患者さん一人一人を尊重し、安心と満足が得られる看護を提供します」とありますが、これを実践するにあたって、取り組まれていることがあれば教えていただけますか。

勅使河原:はい。患者さん一人一人を尊重するということに関しては、スタッフ一人一人が、きちんと傾聴できることを目指しています。

新人の教育体制に関しては、1年間の教育計画を立てて、実践できるようにということでやっている部分と、あとはOJTでそれぞれ先輩たちが、実施指導者とエルダー制という体制で、病棟のスタッフみんなで新人を育てていこうと取り組んでいます。

当院は一般病棟が全室個室なものですから、一人で患者さんのところに行って、新人が一人でいろいろなことをやっても、実践の場でのいろいろな格差が出てくるということ。

あとは、コミュニケーションを大切にすることを学生時代から意識している人たちも多いのですが、そうは言ってもなかなか患者さんとコミュニケーションをうまく取れなかったり、自分の意図が伝わらなかったり、相手がとても憤慨してしまったりというようなことがあるので、パートナーシップを取って先輩と新人が一緒に組んで、患者さんの安楽や安心を考えながら看護実践するために今取り組んでいるところです。

看護部長が新人だった時代と今では教育体制が大きく変わったと思うのですが、どのような印象をお持ちですか?

勅使河原:ずいぶん変わりました。

これはみんな思うことだと思いますが、私たちが実践をしていく上で先輩の後ろ姿や、やっていることを見て育ってきましたから、すぐにメモを取ったり、どこでどういうものを使ったかを、ちゃんと絵にかいてシミュレーションして理解してきていました。

それが当たり前だと思っていましたが、でもそれは「自分から学びなさい」「自分で見て覚えなさい」という教育を受けてきたからなのです。

今は学校が教えていることも変わってきていますし、教育を受ける側の姿勢が変わってきていることを実感しています。

その中で指導に当たるときに「やっていないこと」「やっていないけれども見たことはあること」が本当にそうなのかを、推測だけではなくきちんとその場で確認していかなければいけないと思っています。

また、初めてのことは教えてもらうことが当たり前のようなこともあるので、学生を卒業してまだ間もない人たちに対しての指導に関しては、指導者もきめ細やかに対応しているということが、今までとは全く違うスタイルになってきたと感じます。

チームみんなで新人さんを育てていくのですね。

エルダーという少し上の先輩に教えてもらいながら指導されて、周りにも常に見てくれる人がいると、新人さんたちも安心して覚えていくことができますよね。

勅使河原:そうですね。看護師だけではなく、リハビリスタッフや放射線技師など、いろいろな分野の方たちからも、実際に自分たちがやっていることと、それが患者さんにどう影響しているのかということを教わりながら、多職種と協力して患者さんの回復をはかっていくということを学んでいます。

まず患者さんと、そして多職種チームでというように、コミュニケーション能力を高めていくということでしょうか。

そういう部分は実際に病院に就職してから学んでいくことが大きいですか。

勅使河原:そうですね。当院には回復期リハビリ病棟があり、そこでは看護師と介護福祉士、リハビリスタッフとで連携しながら、患者さんの日常生活の援助をしています。

多職種が関わりますので、看護師だけで何かをやるということではなく、介護福祉士の方も、自分たちが患者さんにとって一番いい介護は何なのかと関わりを持ってくれますし、リハビリスタッフは、患者さんの回復の状況を見ながら、今後どうリハビリを進めていくかを考えるわけです。

それぞれが実践していることを連携して、患者さんの回復につなげていけるところが、回復期リハビリ病棟ではみられると思います。

家族との神社巡りが癒しの時間

普段仕事ですごくお忙しいかと思いますが、休日に気分転換になることや、趣味がありましたら教えていただけますか?

勅使河原:休日はほとんど家族と過ごしていることが多いですね。

小学5年生の娘がいるので、休みの日は子供と過ごす時間を大切にしています。

また、最近主人と一緒の趣味ができまして、神社をめぐるというのを最近やるようになったんですね。

まだ近隣の神社に行っただけですが、それぞれの神社に行って御朱印をいただく。

そんなことを最近楽しんでいます。

足利にも織姫神社が旧病院の近くにあるのですが、そこが神社巡りを始めて2番目くらいに行ったところです。

他には市内にある、美人弁天という小さな神社にも行きました。

それはどうやって調べるのですか?

勅使河原:御朱印帳の本を買って、そこにはどういうご利益のある神社なのかということも載っているので、それを見ながら「ここだったら近いね」と家族と話しながら行き先を決めています。

 

今まで気づいていなかったことや、こんなところにこんな神社があったんだ、といった思わぬ発見もあるのでしょうね。

勅使河原:そうですね。この辺りに神社はあるのでしょうが、あまり気にして足を運んだことはありませんでした。

最近行ったところで、一番印象深かったのが、パワースポットで有名な、埼玉県秩父にある三峯神社です。

ご利益があると評判で大変混雑していて、神社に通じる1本道が車の渋滞となっていて、パトカーから「これから神社に向かう人たちは6時間くらいかかります」というアナウンスが聞こえてびっくりしました。

御朱印帳がどんどん埋まっていくのがこれからも楽しみですね。

勅使河原:はい。なかなか休日に出掛けることが難しいこともあるので、行ける時にはできるだけそういうところに行って、神社の中で気持ちが癒される時間を大切にしたいと思います。

リフレッシュもできますし。

そうですね、リフレッシュできて、また仕事に打ち込むことができますね。

勅使河原看護部長からのメッセージ

最後に新人の看護師に向かってメッセージをいただけますか?

勅使河原:新たに看護をしたいと思って向かってきてくれている方たちに対しては、私たちも知識や技術をたくさん教えていきたいと思っています。

看護師になりたいという夢を目指している人たちが、一人でも多く、患者さんのために看護をしていただくことが、これからの世の中大切なことだと思います。

ぜひ自分の夢の実現に向かって進んでいただきたいと思います。

シンカナース編集部インタビュー後記

勅使河原看護部長は、病院の移転という大きなプロジェクトの中でも、移転先に患者さんを搬送するという重大な任務をご経験された方です。

一言で移転といいましても3キロ離れた移転先に1日で250名の患者さんに安心して安全に移動していただくということは、想像もつかないほどの大変な労力と緊張感を伴うことであります。

患者さんの状態に合わせたそれぞれの搬送体制は、まさしく看護学校の時に経験された「寄り添う」看護から始まっているのかなと感じました。

病院の中の「看護」を超えた移転の「看護」を経験された看護部長のお話しは、優しい笑顔で話される看護部長のきめ細やかさとともに力強さを感じました。

勅使河原看護部長、この度は素敵なお話しをいただきまして誠にありがとうございました。

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