No. 47 龍川初江様(竹田綜合病院)後編「敷居の低い看護部を作りたい」

インタビュー

前回に引き続き、竹田綜合病院の龍川初江総看護部長へのインタビューをお届けいたします。

敷居の低い看護部を作りたい

看護部長になるにあたり、何か思いはありましたか。

龍川:だんだん職位が上がっていくにつれて、現場で一緒に働いていた人が声を掛けにくくなると思います。

看護部長室は特に敷居が高く、入り難くて相談しにくいと思われる傾向があります。

まず部署の枠を超えて相談しやすい看護部を作りたいと思いました。

そう思われたきっかけはございますか。

龍川:看護部は病院の中で一番人数が多い部署です。

アルバイトも含めて、全職員数が2000人くらいですが、看護部は900人近くいます。

患者さんをケアするプロセスを考えると、どの段階でも必ず看護師は関わります。

その時に声をかけやすい看護師にならなければ、将来活躍はできないと考えたのです。

今は通信技術も色々ありますが、顔が見えないものだと結構何でも言えてしまいます。

私は管理だけでなく仕事を進める上でも、足を運んでその人とお互いに顔を見合わせて話をするのが、一番大事だと思います。

それが、敷居の低い看護部を作ろうと思った最初のきっかけだと思います。

具体的にはどういった取り組みをされたのでしょうか。

龍川:元々当院の職員同士は仲がいいですが、まず3人いる副部長には「みんなに相談してもらいやすい状況を作りたい」と伝え、特に重要なことは私も含めた4人でフランクに本音で喋れる関係性を築く努力をしています。また、師長にも出来るだけ話しかけるようにしています。

さらに、他部門の人にも出来るだけ部長室に来ていただくよう話をして、自分も出向くようにしています。

その結果、師長からも敷居が低くなって話しやすくなった、と言われることも増え嬉しく思っています。

では、病院の教育に関してお聞かせ願えますか。

龍川:昨年日本看護協会版クリニカルラダーが発表されましたが、当院では10年以上前からキャリアラダーに基づいた研修企画や評価を行ってきました。

以前、日本看護協会のクリニカルラダーは4段階でしたが、当院のキャリアラダーは5段階でした。

当院のキャリアラダーの評価は部署や評価者によって差が生じるというデメリットがあり、十分に評価できているか考えると、やはり不十分でした。

ですので、その点を改善するための見直しとして、日本看護協会版クリニカルラダーと摺合せしながら、実際どのような視点で評価していくのかについて師長クラスで学習会やディスカッションを行う機会を設けて取り組んでいます。

今は準備段階で、当院のキャリアラダーの中に日本看護協会版の看護実践ラダーを組み込みながら、これまで組み立ててきたラダーに応じた研修などとのズレが生じないように調整を重ねています。

また、教育の面で特徴的なのは、当院職員のみへの研修でない限り、地域の中小病院の看護師に向けて研修を解放していることです。

当院は地域の中でも比較的大きく、地域医療支援病院としての役割もありますので、地域をリードしていく病院を目指し努力しています。

現状に満足せず、常に前進しようとする意識はどのように維持されているのでしょうか。

龍川:副部長に限らず、師長やそれぞれの部署のスタッフにおいても、同じ方向を向き目標を持って取り組んでくれていることが大きいです。

副部長たちもそれぞれ自分の目標をもって、自分自身でも振り返りますし、改善箇所を指摘し合っています。

組織を動かすことは一人では絶対できないことですし、みんなでやることで、自分が気付かないことに気づかせて貰っています。

お仕事以外で取り組まれていらっしゃることはございますか。

龍川:リフレッシュのために中国の二胡という楽器の曲を聴いたり、通勤の車の中で歌ったり叫んだり、料理やガーデニングをしています。

あとは最近大学院でマネジメントを勉強し始めました。

今まで私がやってきたことが本当に良かったのか、何かやり残したことがあるのではないかと思ったのがきっかけでした。

学校はとても楽しいです。

仕事や家の中の事は「わからない」と言えない苦しさがありますが、大学院では「知らなかった」「教えて」と学生に戻って言えるので、精神的にすごく楽です。

難しいものもありますが、最後までやりきる事を目指して頑張っています。

90周年を迎える竹田綜合病院

竹田綜合病院のアピールポイントはございますか。

龍川:当院は昭和3年(1928年)に、竹田秀一医師により創設されました。

「最高の医療をすべての人々に」を理念とした地域密着型の病院で、来年で90周年になります。

院歌があるのが一番特徴的だと思います。

創始者の恩師である土井晩翠さんの作詞に、古関裕而さんが曲をつけられ作られたものです。

当院は野口英世が生まれた地域にありますので、院歌の中にも野口英世に関して歌われています。

会津地域の医療を支えていくのだ、という気概を感じさせる歌詞で、職員は皆歌えます。

看護部のアピールポイントや取り組まれていることなどは御座いますか。

龍川:看護師が24時間365日、患者さんの一番近い所におり、病院を一番下の部分から支える存在であって欲しいと考えています。

看護部として現在、ワークライフバランスの改善、看護師として働き続けて貰うという目標に向けて取り組みを行っています。

スタッフから選ばれ、「竹田綜合病院で働いていて良かった」「ここで働き続けていたい」と思われるような看護部づくりを行って行きたいと思います。

竹田綜合病院に看護補助者は配置されていますか。

龍川:現在はケアアシスタントと呼ばれる資格を持たない看護補助者を45名、介護福祉士の資格を持っている者を同数配置していますので、全部で90名程です。

配置場所とシフトは病棟の特性に合わせています。

例えば回復期リハビリテーション病棟など、ケアが多く人手が必要なところは夜勤にも一緒に入っています。

あとは食事やイブニングケアの時間帯に人手が多くなるよう、勤務時間も変えています。

竹田秀一医師が病院を創設された頃から、医師・看護師・看護補助者みんなで一緒にやっていこう、と早くから看護補助者を入れていました歴史があります。

龍川看護部長からのメッセージ

龍川:8月になった今、新人看護師のみなさまはきっと辛いことにもたくさん直面している時期だと思います。

でも看護師になろうと思って就職されていると思うので、その気持ちをずっと持ち続けて頂きたいです。

厳しい先輩もきっと、新人の時には皆さんと同じ景色を見て、今があると思います。

先輩の胸に思い切って飛び込むこと、それもとても大事な成長の糧になるはずです。

頑張ってください。

シンカナース編集長インタビュー後記

龍川総看護部長は、とてもソフトに情熱的なお話をしてくださいました。

職位が上がることによって、壁を作るのではなく、むしろ壁を低くするための取り組みをされていらっしゃるというお話は大変興味深く伺いました。

看護師にとって、以前は同僚だったから何でも話せたのにという思いをご自身でキャッチされ、どの職位になっても話し易い環境を作られる。

言うは易しですが、立場のある側が語りかけを多くしないと、見えない壁は高くなってしまいがちかと思いますので、それを実践されてらっしゃると言うのは素晴らしい取り組みだと感じました。

また、看護師だけではなく、他部署の方からしても、病院の中の最大人員を抱える「看護部」と言うのはやはり壁を感じて当然かもしれません。

看護部だからといって、看護師同士に偏らず、他職種連携も含め、誰でも気軽に相談、報告が出来る看護部にされていらっしゃる龍川総看護部長は、お話の雰囲気からも伝わる「優しさ、思いやり」に包まれていらしゃいました。

龍川総看護部長、この度は貴重なお話をいただき、誠にありがとうございました。

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