No. 45 齋藤由利子様(上都賀総合病院) 後編「チャンスを楽しみ前へ進む」

No. 45 齋藤由利子様(上都賀総合病院) 後編「チャンスを楽しみ前へ進む」

  • 2017年8月19日
  • インタビュー
No. 45 齋藤由利子様(上都賀総合病院) 後編「チャンスを楽しみ前へ進む」
No. 45 齋藤由利子様(上都賀総合病院) 後編「チャンスを楽しみ前へ進む」

前回に引き続き、上都賀総合病院の齋藤由利子副院長へのインタビューをお届けいたします。

 

医療界で初の「交渉アナリスト」を取得

 

 

副院長ご自身がお持ちの「交渉アナリスト」という資格は初めて聞いたのですが、どういったものなのか教えていただけますか?

 

齋藤:認定看護管理者のセカンドレベル研修に、6年ほど前から「コンフリクトマネジメントと交渉」という科目が新しく入りました。

その前年に、セカンドレベルの演習支援を私を含め5人で担当していたんです。

「翌年からこういうプログラムが入るので、誰か講義してくれませんか?」と言われたので、「私交渉大好きなのでやらせてください」と手を上げました。

しかし、手を上げたまではいいものの、交渉が好きといっても、教えられるようなものが何もなかったので、「交渉アナリスト」の資格を知って飛びつきました。

交渉アナリスト2級、交渉アナリスト補、交渉アナリスト1級と進んでいくのですが、アナリスト2級は通信で受けられるので、通常半年間かけて資格をとるものを、2週間で取得しました。

次に受講したアナリスト補の講習は、実際に事例を踏まえた演習中心の学習です。

受講者のほとんどがビジネスマンで、交渉アナリスト1級を医療界で取得したのは私が初めてでした。

いろいろな価格の交渉となると少し難しいのですが、考える原点として、「交渉は価値の交換だ」と。

相手がどのような価値やニーズを持っているのか、それを知ることが交渉の原点だと学んで、とても納得しました。

これはビジネスの交渉限らずすべてに言えることです。

1級を取るには3本の論文執筆に加えて、試験と面接があり、資格取得までは大変な道のりでした。

とはいえ、やる気さえあればどなたでも取れる資格だと思います。

実は実際に学んだことをセカンドレベル研修で活かすには、この資格取得だけでは無理があります。

なぜなら、医療界の交渉は、「売買」の交渉ではなく「人」が中心だからです。

そこで「交渉アナリストを医療界に落としこむために、たくさんの本を読み、自分の中で現場と結び付けて講義に活かしていきました。

当時、医療界における交渉の本がないと思ったので、それなら私が書こうと思って本を執筆しました。

 

すごいです。たまたま昨日見ていて、本を執筆されていることを知りました。

とても興味深い内容ですね。

 

齋藤:書くことは初心者なので、今読んだら「何でこんな文章使いなのだろう」と思っているのですが。

でも、現場のことを本音で書いていますので、それはみんなに響くようなところがあると思います。

 

 

逆に伝わりやすいですね。

 

齋藤:そうですね。それがきっかけで、サードレベルの方が十数人ほど私のところに実習に来ています。

出した本や雑誌を読んで「勉強がしたい」ということで、青森や愛知など全国いろいろなところから来ていただいています。

 

全国からいらっしゃるのですね。

 

齋藤:そうですね。交渉アナリストは資格取ったからというのではなくて、自分を成長させてもらえた一つの過程だと思っています。

これは終わりがないので、場数を踏みながら、いろいろなところでみなさんのお役に立ちたいという思いがあります。

講義でだいたい全国の半分は行かせていただきました。

 

日本全国飛び回っていらっしゃるのですね。

 

齋藤:先週は青森、先々週は広島へ、明日は神戸で学会発表をする予定です。

 

自分が実際に講義をして交渉のやり方を伝えるなどして、みなさんにこうやっていけばいいということを示されているのですね。

 

齋藤:そうですね。講義では事例を出して、事例の分析の仕方や振り返りの共有も行っています。

 

事例を出すと皆さん具体的に考えていくことができますね。

 

齋藤:交渉と聞くととても大きなものに感じるかと思いますが、「今日のお昼ご飯を何にしようか」これも交渉の一つです。

そう考えると毎日交渉の連続ですから、看護師一人ひとりに「上手くやろうと思っても上手くいかなかった事例」を載せてもらっています。

そうすると、結局は上手くいかなかった時は自分の意見を通そうと思って、相手がどう考えているか、相手がどうしたいのかというところに配慮が足りなかったからだということにみんな気づいてくれます。交渉は最終的には価値交換、そして新しい価値を見出すことなのです。

お互いにとって良い価値を見出すことが交渉なので、事例を踏まえるとよくわかってくれます。

 

何かを始めなければならないとなった時に、お互いの意見が食い違っていたという場面の中で、実際に相手の意見を聞きながら進めていくことができますね。

 

齋藤:そうですね、意見というよりは価値で、意見の裏にある思いを知ることが一番大事なところなのです。

意見だけだと、どうしても対立してしまいますが、でもどうしてそういう意見を言っているのかを深堀すると、結構通じるものがあったりしますので、そこをしっかり分かり合えるところが、交渉の合意の秘訣だという話を1日通してやらせてもらっています。

 

チャンスを楽しみ前へ進む

 

 

全国飛び回っていらして、お忙しいとは思いますが、お休みの時の気分転換や趣味がございましたら教えていただけますか?

 

齋藤:10年ほど前まではバドミントンをやっていました。

医療の世界にいると医療職とのつながりはありますが、一般社会人の方とのつながりが少なくなってしまいます。

バドミントンをやることで一般の方と通じ合えることもあり、大会で強くなることの意欲も湧きましたし、そういう仲間ができたのがとてもよかった時代がありました。

実際には部長職になってなかなか行く時間が持てなくなったのと、身体がついていかなくて辞めてしまいました。

今は講演会などで全国いろいろなところに行っていますから、これを一つの趣味として考えていいのかもしれませんね。

各地のおいしいものをいただく機会もあり、その土地の方しか知らないようなところで食べさせてもらうと本当に幸せですよね。

また、孫がいますので、一緒に遊ぶのが癒しの時間ですね。

 

いや、でも本当にお忙しいですね。

 

齋藤:人にはいろんなチャンスがあると思います。

チャンスは何か一歩踏み出すと大きく広がっていきます。

感染に関しても、最初は変えたいという思いからのスタートでしたが、いろいろな仲間に支えられて、海外の学会でも2回発表できましたし、海外視察にも行けました。

バランススコアカードに関しても、最初は当院に入れたいと思うところから始まって、バランスト・スコアカードの認定指導者も取得しましたが、現在では認定試験運営委員として試験の運営に携わったり、評議員になったり、どんどんどんどん膨らんでいっています。

本当に周りの人がチャンスをくれていますし、周りの人が自分を支援してくれていると感じます。

 

ちょっとした1つのことが、周りからどんどんどんどん広がっていったのですね。

一歩踏み出せるそのパワーはどこからくるのでしょうか?

 

齋藤:楽しいからですね。

「やりたい」と思うことと人からの要望がマッチしているからかもしれません。

 

 

仕事を楽しくポジティブに捉えられるって素晴らしいですよね。

 

齋藤:できないことがあった時に、なぜできないのか悩むのではなくて、どうしたらできるかと考えることですね。

ですので、他の方ができなかったけれどどうにかしたい、という時には自分の出番だと思いますし、そういうところに情熱やパワーを注ぐことができます。

それによっていろいろと広がっていったように思います。

 

そうですか。とても良いお話をたくさん伺うことができました。

 

齋藤:私はタイムマネジメントが得意だと思っています。

講演でも結構話をしているのですが、何でも一番にやるのが好きなのです。

決して能力が高い訳でもなく、成績が良い訳でもないのですが。

例えば、サードレベル研修で課題が出たとします。

課題が出た時が私のスタートですので、その日に終わってしまうものもありますし、みんなが取り掛かる前にだいたい終わっています。

それはなぜかと言うと、期限があるものは先にやってしまえば、後から何が起きても対応できるからなのです。

それを先延ばしするとどんどんどんどん積み重なるばかりで、自分に余裕がなくなるので、そこはしっかりタイムマネジメントしています。

では日々はどうしているかというと、6時半には出勤しています。

すぐに仕事に取り掛かるのではなく、本を読んだり、ネットで調べ物をしたり、自分だけの時間を集中して過ごしています。

8時半から仕事が始まりますので、切り替えてそこからは人との関わり合いの時間のスタートです。

 

そこからまたいいひらめきがあるのでしょうね、きっと。

 

齋藤:そうですね。

 

結構「ちょっとこれ後回しで良いかな」なんてしてしまいがちですけれども、そうではなくて先に取り掛かるのですね。

 

齋藤:後回しする方が辛いですね。

「ああ、あれが残ってた」「あれどうしよう」となるとどうしても上手くいきません。

じっくり最後まで練って、それが自分のペースだという人もいるので、そういうタイムマネジメントもあるかと思いますが、私にとってはいつでも何でもできる状態にしたいと思っています。

そのためにはやるべきことがあれば終わらせてしまおうというタイプですね。

 

自分のするべきことを終わらせて、何かあった時にいつでも対応できるようにということですね。

 

齋藤:そうですね、毎日いろいろな出来事が起きますので、そうしなくてはいけないと思っています。

 

ありがとうございます。

最後に新人看護師や、これから看護師になろうと思っている人にメッセージをお願いします。

 

齋藤:当院では新人は20名ぐらいの採用があります。

最初はみんな同じレベルで入ってきますが、5月〜6月くらいから非常に悩む時期が来ます。

それは、どうしても他人と比べてしまうからだと思います。

なかなか上手くいかない、どうして教えてもらっているのに自分だけできないのだろう、とすごく悲観する時期が来るのです。

でも、人は進み方がそれぞれ違うわけです。

ですから、他人と比べるのではなくて、昨日の自分と比べて、昨日より半歩でも進めてればいいのだと私は思っていますし、じっくりと成長していって、自分がなろうと思った看護師に近づいていっていただきたいと思っています。

私は新人さんが大好きです。

みなさんも、これから患者さんから信頼される専門職として立派な看護師に、そしてやがては素敵な看護管理者になれるよう頑張っていただければと思います。

 

 

シンカナース編集長インタビュー後記

齋藤副院長のタイムマネジメントのお話は、まさに真っ直ぐな信念を代表する内容であったのではないでしょうか。

やるべきことに時間を使うのではなく、やりたいことに時間を使うためにも、後回し、先送りはないのだということを学ばせていただきました。

時間を大切にされているからこそ、多くのアイデアも生まれ、そのアイデアを実行にうつすことにも繋がる。

学んでも、それを実践しなければ、やがてその知識も自らの身にはなっていかない。

故に、誰かに変えてもらうのではなく、自分たちが変わらなければならないという発想にもなられるのだろうと感じました。

齋藤副院長のように、行動力のある看護管理者が、スタッフの声もしっかり受け止めていらっしゃる病院なのだということがわかりました。

齋藤副院長この度は、貴重なお話、本当にありがとうございました。

 

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病院概要

上都賀総合病院

 

嶋田 香織
A-LINE株式会社
シンカナース編集部及び営業本部長