No. 45 齋藤由利子様(上都賀総合病院) 前編「湧き上がってきた管理への思い」

No. 45 齋藤由利子様(上都賀総合病院) 前編「湧き上がってきた管理への思い」

  • 2017年8月18日
  • インタビュー
No. 45 齋藤由利子様(上都賀総合病院) 前編「湧き上がってきた管理への思い」
No. 45 齋藤由利子様(上都賀総合病院) 前編「湧き上がってきた管理への思い」

今回は上都賀総合病院の齋藤由利子副院長にインタビューさせて頂きました。
看護部長を兼任し、看護部をまとめる齋藤副院長の手腕に迫ります。

 

学べば学ぶほど楽しかった看護学校時代

 

ご自身が看護師になろうと思った理由やきっかけについて教えていただけますか?

 

齋藤:中学校の時、人のためになる仕事に就きたいと思っていました。

最初は保母さんになりたいと考えていたのですが、高校の進路を決める時、県立高校に衛生看護科が初めてできるという情報を聞いて、「高校で看護師になれる」ということに興味を持ち受験を決めました。

看護師の仕事は自分に合っていたようで、この道を選んでよかったと思っています。

 

ご自身の中で思い描いていた通りの仕事だったのですね。

 

齋藤:そうですね。身近に看護師がいた、家族が入院した、というきっかけで看護師になる人が多いと思いますが、私はそういったことはなく、たまたま選んだら自分にぴったりだったという経緯でした。

 

高校の衛生看護科で3年間勉強されて、卒業後はどのような進路へ?

 

齋藤:高校を卒業して准看護師免許を取り、その後、当時自治医大にある2年間の養成校、いわゆる進学コースに入学して、看護師免許を取得しました。

 

学生時代の勉強や実習など、何か印象に残っているエピソードはございますか?

 

齋藤:40年も前のことになるのでずいぶん忘れてしまっていますが、実習が厳しかったことはよく覚えています。

でも、実習を通して看護師という仕事の厳しさを肌で感じて、単なる憧れではできないことを理解しましたね。

 

その厳しさの中でも、看護師になりたいというその思いは変わらなかったのでしょうか?

 

齋藤:はい。看護師は専門職ですから、一生勉強していかなければなりません。

それが自分を成長させることにもつながるので、勉強がとても楽しかったです。

数学や理科といった学力はなかなか成績が上がらないのですが、看護は学べば学ぶだけ自分に残っていきました。

患者さんのために何をするかと考えるためには、当然自分を磨く必要もあります。

学校の中でしっかり学べば、学んだものが自分に跳ね返ってきたので、それが楽しさだったかもしれません。

 

自分の憧れだった職業でもあった上に、授業が頭の中に残っていったのですね。その後の病院選びはどのようにされたのですか?

 

齋藤:奨学金制度をご存知ですか?高校の衛生看護科の実習病院が当院だったのです。

当時の総婦長さんや参事さんが自宅までおみえになって、「奨学金制度があるのですがいかがでしょう?ぜひとも受けて欲しい」とおっしゃっていただきました。

親からも「そういう制度があるのだったら受けたら?」と言われて、それで就職先が決まりました。

 

その後こちらの病院に就職されて、それ以後ずっと勤務を続けていらっしゃるのですね。

 

齋藤:もうすぐ40年になります。

3年目・5年目という節目では、何か求めるものはありましたが、でも今やっていることや、これからやりたいことがここでできないのかと考えたら、「いや、できる」と思いました。

ですから、当院にいたことでいろいろなことを経験することができました。

自己成長のためやキャリアを積むためにもいろいろなフィールドでの経験が必要だったかもしれませんが、振り返ってみるとここでもできたことがたくさんあると思っています。

 

 

湧き上がってきた「こういう管理がしたい」という思い

 

 

こちらに看護師として就職されて、管理者への道を選択する時期がきたと思いますが、どのような感じで?

 

齋藤:26歳頃主任になったのですが、その時は推薦でした。

そこから師長になる時には試験があったのですが、私は「まだ師長はいいかな」と思い2回ほど見送りました。

でも、そこから「師長なりたい」と思ったきっかけは、当時の師長の仕事ぶりを見たことでした。

その方はいわゆる「できる師長」でした。全て采配してくださるのですね。

「あなたはこうやりなさい」「こうやるべきだ」とそのレールに乗るだけでよかったのですが、ある時「私だったらこうやってみたい」という思いが湧いてきたのです。

「私だったらこういう管理がしたい」「この管理も間違っているわけではないけれども私だったらこうやりたい」あるいは「スタッフをこう育成したい」という思いが沸々とわいてきて、そのタイミングで師長試験を受けました。

 

いろいろな師長さんの姿を見て「私だったらこうしたい」という考えが浮かんだのですね。実際に師長になって、ご自身がやりたかった管理は実現しましたか?

 

齋藤:そうですね。周りのみんなからは「大変じゃない?」と言われましたが、私は困難を乗り越えることに燃える自分がいますので、もうやりたくてしょうがなかったのです。

チャレンジ精神旺盛なので、あまり苦労せずに決断することを楽しんでいました。

主任にはできないところが楽しかったですね。

 

その自分の思いは周りのスタッフにも理解されて、自分がやってみたいということが形になっていったのでしょうか?

 

齋藤:そうですね。何かを変える時・改善する時というのは、周りの人にも理解をしてもらえなければ絶対に叶いませんので、そこがスタートだと思っています。

そこの理解が得られればもうあとは同じ方向を向いて「頑張ろうね」と言えば動いていけますので。

 

 

その時は大きな決断ですよね。

「今までのやり方を何で変えるの?」といった意見が出てきたこともあると思いますが、そこは話し合いの中で解決されたのですか?

 

齋藤:はい、そうですね。私が一番管理の原点だなと思っているのが感染管理です。

2000年の初め頃、感染の認定看護師は当院にはいませんでしたし、まだ全国的にもそんなに多くなかった時期でした。

ある研修会で学んだ時に、私たちはこんなことしていない、こんなに感染対策は変化しているんだ、とかなりショックを受けました。

「現状を変えなければいけない」と思ったのは、私の管理の一番の原点です。

変えるためにはどうしたら良いか。

私が研修会で学び、本当にびっくりしたことは、スタッフにも伝えたいと思いましたので、病院全体の研修会を開きました。

「研修会の開催=すべて理解してもらえる」とは思っていませんので、ただ、昔とは変わっているんだ、エビデンスってこういうものなんだ、ということを分かってもらえるだけで良い、と考えました。

その意識づけをして理解してもらえれば、変える土台を作ることができると思ったのです。

では、変えるために何からやったら良いか。

新しいことを始めることに人は抵抗があります。

ですが、今やっていることの中で、無駄なもの・エビデンスがないものを止めることはすぐにできると思ったので、そこから始めました。

そうしますと、当然効率は良くなりますし、スタッフも「こんなことやる必要なかったんだ」という部分でコスト削減にもつながりました。

そこから今度は感染対策に必要な資源(防御具等)がほしいと病院長にお願いしました。

削減した分もあり、すんなりと導入できたわけです。

 

それであればみなさん納得して取り組むことができますね。

 

齋藤:そうですね。大変なことを最初からお願いするのはなかなか難しいですからね。

まず楽にさせることから始めた方が、人はついて来るだろうという考えも自分の中にありました。

 

段階を踏みながら、みなさんと共に改革していかれたのですね。

 

齋藤:そうですね。感染対策委員会、感染対策チーム、(感染)リンクナース会の組織化を病院長に要望し、実現しましたから、その仲間と共に頑張ることができました。

その当時の組織化は比較的先駆的な取り組みの時代でした。

私も、メンバーもとても充実していた時期でした。

 

 

9分野の認定看護師たちと共に看護師のスキルアップをはかる

 

こちらの看護部の教育計画を具体的に教えていただいてもよろしいですか。

 

齋藤:2010年頃からクリニカルラダーを始めました。

学習しながら進めているので、形にしていくのが難しいのですが、ラダーの積み上げは確実にしているつもりです。

実践能力を上げたいという思いが最初の願いでしたので、そのための教育を非常に多く取り入れました。

だんだん形になってきていますので、一度見直す時期にきていると思っています。

認定看護師に関しましては、以前は病院として支援する制度はなかったのですが、支援の必要性を伝え、教育費を病院に持ってもらう交渉をして、9分野の認定看護師を育成することができました。

 

9分野の認定看護師の方たちは実際にどのような活躍をされていますか?

 

齋藤:加算で専従要件のあるものは全部専従で、それ以外は専任ということで部署を持ちながら活動しています。

それぞれ年間計画を立てて、私と面接をして内容を詰めていっています。

今は9つのナース会(看護部の委員会)があって、そこのメンバー達の知識とスキルを上げてもらうためにも頑張ってもらっているところです。

今まである程度やってきて定着したナース会を入れ替えて、今年度「働きかたナース会」というものを作りました。

これは今後の看護部の目玉になると思っています。

例えば病院の方針について、看護部からの指示で現場に伝わっていくのが今のスタンダードになっていますが、部署からの問題をすくい上げて、そこを自分たちで能力的に解決すること、また、全体であるいは看護部で検討しなければならないということを、現場から上げたかったのです。

師長や主任など、管理者からは意見が上がってきますが、現場の声を反映したいと思って作ったナース会なので、これからの活動に期待したいと思います。

 

それは実際どのような感じで進めていらっしゃるのでしょうか?

 

齋藤:今年の4月から始まったばかりなので、まだ3回しか会議していませんが、いろいろな問題点が上がってきています。

看護部できちんと伝えているはずなのに、伝わっていなかったということもそれでわかったりしています。

人は誰かにやってもらおうとする傾向にあります。

自分たちで変わるべきところは自分たちで変えていこう、というところも、このナース会に期待しているところです。

 

現場のスタッフから意見が上がってきて、そこで思わぬ発見をされるのですね。

 

齋藤:そうですね。その意見をしっかり振り分け、分析をすることで、課題が見えてくるだろうと思っています。

 

こちらがもうわかっていると思ったことも意外と伝わっていなかったりして、でもそれがわかったということは収穫ですね。

 

 

 

認定看護管理者として副院長として改革の最前線に

 

 

認定看護管理者としてはどのような役割を担っていらっしゃいますか?

 

齋藤:認定看護管理者はいろいろなコースから成り立って、私は東京都看護協会のサードレベルを受講しました。

看護管理者だから特別な仕事があるわけではなくて、今までの積み上げを更に拡大させて、質を更に高くしなければならないと思っています。

3年前から副院長にもなりましたので、看護部だけでなく、病院全体を動かせる立場になりました。

副看護部長の時から取り入れたいと思っていたバランスト・スコアカードを院内に導入しました。

副院長になってから、他部門のヒアリングも院長と一緒に行っているので、各部門の問題点に対するすくい上げができますし、私の方からもこういう方法もあるとアドバイスもできます。

認定看護管理者だからという訳ではなく、やるべきことをやらなければいけないと思っています。

 

先ほどおっしゃっていた「バランスト・スコアカード」はどのようなものでしょうか?

 

齋藤:経営のツールになるもので、経営戦略として、現状をSWOT分析し、戦略マップを立案して、それを毎年病院の方針として病院長から発表します。

その戦略マップに関して、各部署でスコアカード、つまりその目標に向かって各部署は何をやるかというものを出してもらうのです。

病院が目指すものはすでに提案していますので、それに向かって各部署がどうやって頑張ってくれるかをヒアリングして、最終的には成果発表会を開催してPDCAを回すということになります。

 

いろいろな改革や取り組みをされていらっしゃいますね。

 

齋藤:はい、改革するのは大好きです。

 

素敵ですね。より病院が良くなっていくような、いろいろなアイディアがあるのですか?

 

齋藤:そうですね。持って生まれた特性といいますか、何かお題をもらったとしても、なぜか他の方とは違うアイディアが生まれてくるのです。

教育の中で、新人教育のガイドラインに沿ったものもやっていますが、その中に「あっと驚く目玉研修」というものがあります。

 

そのネーミングも素敵ですね。

 

齋藤:「あっと驚く為五郎」なんてもう誰も知っている人はいないと思いますが。

「目玉研修」と言って、実際に企画する側だけしかやることをわからなくて、参加者は当日に内容を知るのです。

 

当日にですか?

 

齋藤:はい。最初の年は何をやったかと言いますと、野外活動センターまで連れて行って、参加する人たちはそこでオリエンテーリングをするのだろうと考えていたのかもしれませんが、そういうものではないのです。

食材をいろいろ持って行って、6グループに分けて、「これらの食材で最低3品以上作ってください」というお題を出して、新人とプリセプターがいろいろ案を出して時間内に作ってもらいます。

当然師長主任もそこにいますが、新人やプリセプターから依頼を受けた時だけ手伝えるというルールを決めています。

「こういう時しか師長や主任に命令できないのだから、どんどん命令していいのよ」と伝えています。

目標は一つで、しっかりと目標に向かってみんなで協力しなければできないんだということがわかるようなことをやるのが目玉研修で、職場とは離れたところでやっています。

 

こちらもまた楽しいアイディアですね。

 

齋藤:たぶん参加する方は何をやらせてくれるのだろうと思っているようですが、終わった後はみんな非常にいい顔をしていますし、プリセプターや上司との親密な関係を築くことができ参加して良かった、と思えることが一番だと思っています。

 

新人の看護師さんたちは全員参加ですか?

 

齋藤:そうです。5月末〜6月にやるのですが、まだ先輩たちと打ち解けていない時期ですから、それがきっかけになって、先輩の新しい一面を垣間見たり、おもしろいところがあるとわかってびっくりしたという感想も聞かれるんですよ。

 

職場とは違った一面が見られるのはお互いに発見ですね。

大変かもしれませんが、参加する側も、それを見ている側にとっても、その人を知る上では必要なのでしょうね。

 

齋藤:研修でも仕事でも、自分だけ楽しんでいては周りはついてきません。

他人と一緒に自分自身も楽しむことで、チームワークも結集できますし、その次につながると思っています。

 

次は何をやろうというアイディアは看護部長自ら発案されるのですか?

 

齋藤:はい。この企画をしている新人支援の担当者たちと相談しながら決めるのですが、発想は私から出していることが多いです。

 

どんなことをやってもらおうかと、決めるのもまた楽しいですね。

 

齋藤:そうですね。

 

後編へ続く

 

 

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嶋田 香織
A-LINE株式会社
シンカナース編集部及び営業本部長