No.39 内山弘子様(千葉県済生会習志野病院)後編「 急性期でも慢性期でも、看護師の役割は普遍」

インタビュー

前編に引き続き、千葉県済生会習志野病院副院長の内山弘子様へインタビューをお届けします。

急性期でも慢性期でも、看護師の役割は普遍的

実際、長くご勤務されて、そのあとにこちらに転職されたのですね。

内山:はい。当院は平成13年6月に国立病院から移譲されて、済生会に生まれ変わった経緯があります。

移譲されてすぐの9月ごろ、こちらの病院に勤務したいという希望で看護部長と面接しました。

当時43歳という年齢だったので、採用してくれるかどうか分からない中、ダメもとで面接だけ受けてみようと思って来たんです。

この病院にしようと思われたのは、何かきっかけがあったんでしょうか。

内山:済生会の救済済生の精神であるといった、理念が共感できると思いました。

こちらに就職された時は、最初から管理職としてご勤務されたのですか。 

内山:いいえ、スタッフナースでした。

「管理職を希望するか?」と聞かれたのですけれども、「スタッフとして勤務させてください」とお願いして就職しました。

徳洲会病院で管理を経験されてから、こちらでスタッフナースに戻ったということですね。

内山:スタッフとして、内科・循環器病棟で3年間勤務しました。

本当にいろいろな経験がおありですね。

内山:そうですね。でも、その3年間が一番楽しかったかもしれないです。
それはなぜでしょうか。

内山:今まで救急がメインでしたので、患者さんのケアそのものをやるということがすごく楽しかったんです。

より患者さんに近いところで関わることができるということですか。

内山:より密着したところで。それも、患者さんと会話ができるわけです。

一人のスタッフとして関わることがこんなに楽しいのかと思いましたね。

3年間スタッフとして勤務されて、その後また管理職に?

内山:新しい病院を作ることになって、その時にどうしても人数的に管理職が足りなかったようでした。
ずっと断ってきたことが心苦しくなって、患者さんからも「あんたが師長さんかい?」と言われてしまう年齢だったので、これはもう嫌だ嫌だと言っていられないと思って、お受けしましたね。

どこかでご決断をされて管理の道へ進まれたのですね。その時は師長さんの役割を担ったのでしょうか。

内山:最初は外科病棟で主任をしていましたが、半年ぐらいですぐ新病院への引っ越しがあり、外科病棟に異動してそこで師長になりました。

こちらの病院でもまた外科系の病棟で、しかも今度は師長という役割を担うことになったわけですが、いかがでしたか。

内山:そうですね。でも、今まで自分がやってきたこと。例えばICUとかCCUで「自分のやりたいことができません」と言うスタッフがいるんですが、私はその反対だと思っています。

どのフィールドでも看護は同じだと思っているんです。スタッフナースを長く経験したからだと思うのですが、慢性期であろうと急性期であろうと同じだということにある時気付きました。

新人の中でも「これじゃないと」とか、「こうなりたいから他のことは受け入れられない」という人が、結構いるように感じています。それはせっかくのチャンスを逃してしまっていることになります。副院長が体験されてきた中で、実際やってみると、いろんな部分で吸収することがあったり、特にすべて看護がつながっている、とお感じになられたところはどんなところでしょうか。

内山:そうですね。私はICUでも手術室でも大切なのは、看護師ならではのケア、つまり看護の専門性だと思うんです。

それは、医療知識だけではなくて、いろんな不安であったり、悩みであったり、医師に対する怒りであったり、いろんなことを汲み取って、「もうちょっとこの方には説明が必要だ」とか、「この人には、こういう医学的な部分で、病気の疾患の知識を教えてあげよう」など考えるわけです。

そういうことに気が付いてケアできるのが、看護師だと思うんですね。

ですから、ICUであろうと手術室であろうと、看護師の役割の専門性は、普遍的なものだと私は捉えています。でも、若い看護師にはなかなか分かってもらえないですね。

どうしてもその「科」や「部」というところに、目がいきがちになるのでしょうか。

内山:そうですね。
でも、看護とは何か?という視点で考えたら、どの科であってもそんなに変わらないですね。

内山:はい、訪問でも一緒ですし。

そこをお伺いしたかったのです。

内山:特にICUだと「ミニドクターになっちゃう」と言う人もいるのですが、「看護しようよ」と言いたいですね。

もちろん医師と同じぐらい勉強して、知識が必要ですが、でも看護は、そこは理解した上で、体位交換しなければいけないのです。

それには心電図を分かってないと、体位交換できないのですね。

だから勉強するのです。

心電図を勉強して、解剖・生理全部分かっていないと、危なくて体を動かせられないですよね。

そういう部分が、医学知識プラス看護なんですよね。

理念に共感し、共に目指す

お話を伺っていると、看護教育支援センターも関連してくるようですね。看護がただ薬の知識、医学的な知識というものではなく「支援する」という、センターの役割について、教えていただけますか。

内山:平成24年ごろ、副看護部長の時に、看護部長にお願いして始めました。

その前から、教育センターを作らないといけないという思いがあって、当時の部長が教育委員会から教育の専門性のある人を集めてスタートしたのが始まりです。

まず場所を確保して、そこを教育センターとして名付けて、そこに意味を置いたんですね。それは、やっぱり人材育成が一番重要であるっていうことです。

それがきっかけになって、少しずつ大きくしていかれたということでしょうか。

内山:はい、そうです。

その意味付けの核になる、理念のようなもの。そこは何になりますか。

内山:それは、当院の済生会習志野病院の看護部が目指す看護師像、看護師を育成するためでした。

その教育センターを作って育成しようということですね。

実際今はどのような形で運営されていらっしゃるのでしょうか。

内山:教育センター自体は、看護の実習支援、新人教育、継続教育、看護研究、認定看護師活動を行っています。

当院は臨床実習病院になっていますので、多くの実習生が来ます。1年中どこかに看護学生がいる形なんですね。だから、とっても大きい役割なんです。

いくつもの学校の実習病院になっているということですか。

内山:はい、そうです。一番多い時は8校ぐらい来ていました。

医療プラス看護の教育の中核を担って、センターを運営されているのですね。

そこで育成された方々が、地域に戻られたり、実習病院のこちらに就職されたりするわけですか。

内山:そうですね。

そういう意味では、学んだことを、こういう理念のもとでこういう看護をやっていることに共感して就職してくれる人が入ってきてくれています。

そうですね。そこは重要ですね。

内山:そうですね。

理念はとても大事です。
理念がきちんと掲げられているという部分を見て選ぶと、今後壁にぶつかった時にその理念に立ち返って、「そうだ、私はこれで来たんだ」と気付いて苦難を乗り越えていける、その核になると思うのですが、そういうところも意識されていらっしゃるのですね。

内山:そうですね。病院訪問等で他の病院に伺った際は、「ここの理念はどうなのだろう?」とちょっと気にしますね。

そこが曖昧だと、職員も何を目指していいかが分からなくなりますから、ブレないためにも理念を掲げて理事長や院長がそれに対する思いを持つことが大事ですね。

心身のメンテナンスで疲れをリセット

仕事以外で何か趣味や、楽しいと思われることは何かありますか。

内山:孫が3人いるので、一緒に出かけたり遊びに行ったり、そういうことが楽しいです。成長のその時間というのは、「あの時可愛かったなあ」と思っても戻れるものではありません。

今一緒に過ごす時間が、改めてこの歳になってすごく重要だと思うようになりました。

お子さんから今はお孫さんへ、それぞれの成長を見守っていらっしゃるのですね。

内山:そうですね。子供たちも成長して、親になりましたから、そういう姿を見ていることも楽しいです。

そこで自分が共有している時間は、とっても重要だと考えています。
他には何かございますか。

内山:3年ほど前からホットヨガにはまっているんです。

週1回、心身のメンテナンスで通っています。

やはり、看護管理者であったとしても、ご自身の心身の健康が大事ですね。
普段から副院長もメンテナンスをされていらっしゃるのですか?

内山:はい、しないとダメですね。私個人では何も言いたくないのですが、看護部長だから言わなくてはいけないことがたくさんあります。

注意もしますし、管理者として「師長さんはこういうふうにしないといけない」、「判断の仕方が間違っているよ」など、言いたくないことも、言わなければなりませんから、私には大きなストレスになります。

それをリセットする意味でも必要なのですね。

内山:リセットして無になるのに、1番良いのがホットヨガだったんです。

この時間はヨガのポーズを取ることに没頭しています。

音楽を聴いたりすることもありますか?。

内山:マイケル・ジャクソンが好きですね。

他にはジェニファー・ロペス、マドンナ、レディガガが好きでよく聴いています。

洋楽が多いですね。

内山:そうですね。

ドラマも海外ドラマをよく見ます。

海外ドラマも見ていらっしゃるのですね。
ポジティブなエネルギーを、そういったところからもらうということでしょうか。

内山:そうですね。

師長さんクラスの看護管理者の方に対して、「こんな管理職になってもらいたい」という思いはございますか。

内山:「相手のことをよく”聴く”」ということでしょうか。

「聞く」ではなくて「聴く」。

これは管理研修でもスタッフレベルでもみっちり教わってくることですが、人の話によく耳を傾けて聴いて、相手を思いやる気持ちを持つこと。

そこが看護の基本で普遍的なものではないかと思っています。

我々は患者さんだけを相手にしているのではなく、医師や薬剤師、いろいろな職業の集合体で仕事しているわけです。

みんな多くの悩みを抱えていますので、看護管理者は時々そういうところにも心遣いをするといいのかなと思いますね。

最後に新人看護師にメッセージをいただけますか。

内山:当院は「心に届く看護」を看護の理念に掲げております。

これに共感して一緒に働きたいと考えた方、是非いらしてください。お待ちしています。

シンカナース編集長インタビュー後記

内山副院長にお話いただいた「理念に共感する」ということは、シンカナースが重要にしているポイントと重なっています。

どの病院に就職するかという選択の時に、単なる条件面だけで選んでしまうと、行き詰まった時にまた「条件」で他病院へ移ることにもなりかねない。

これを繰り返してしまえば、結果として看護師のキャリアとしても、安全で安心した看護を提供することもマイナスになりかねません。

故に、シンカナースでは、価値観の共有、看護管理者のメッセージに共感できるかどうか?ということを大切にしています。

その根幹ともなるお話をしていただきました内山副院長、この度は本当にありがとうございました。

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