No.32 長坂奎英様(キッコーマン総合病院)後編「自分の関りで、落ち着いてくれたということの積み重なりが嬉しい」

No.32 長坂奎英様(キッコーマン総合病院)後編「自分の関りで、落ち着いてくれたということの積み重なりが嬉しい」

  • 2017年8月5日
  • インタビュー
No.32 長坂奎英様(キッコーマン総合病院)後編「自分の関りで、落ち着いてくれたということの積み重なりが嬉しい」
No.32 長坂奎英様(キッコーマン総合病院)後編「自分の関りで、落ち着いてくれたということの積み重なりが嬉しい」

前編に引き続き、キッコーマン総合病院の長坂奎英看護部長へのインタビューをお届けいたします。

 

専門看護師の資格も取得され、その後に看護部長になられたのでしょうか?

 

長坂:2014年4月に看護部長になりました。専門看護師の資格を取得したすぐ後は、病棟師長として朝は1時間前に来て、一人ひとりの患者さんのところに顔を出し、お話を伺い、夕方もラウンドをしていました。

 

他のスタッフはシフトで日勤、夜勤を行なっていますので、情報が切れてしまうことがあるんですが、確実に日勤で毎日来ているのは師長だと気付いたんです。

毎日見ていれば、日々の変化が分かりますので、それを情報提供することで、良いケアや良い看護のヒントにつながるのでは?

という意図を持ってラウンドをしていました。

 

師長さんとしての時期から、早い段階で、部長職に就かれたのですね。

 

長坂:はい。本当はもう少し師長やりたいという気持ちもありましたので、大学院の時にお世話になった教授、信頼のおける院内のドクターなどに相談をしました。

 

 

 

看護部長になられてよかったことはなんでしょうか?

 

長坂:病院全体、すべての部署に入っていっても全然違和感がないということがわかりました。

例えば、朝早く来てラウンド行った時に、せん妄であったり、認知症方が、ナースステーションにいらっしゃることがあります。

私は認知症ケアも実施していたので、そのような患者さんの様子を見たりお話をしながら

「今、この状況にあるのはなぜだろう?」

ということをアセスメントしていくわけです。

私が関わりますと、スタッフや主任、師長も気になり、その患者さんをみんなで取り囲むように看るわけですよね。

そうして、自分が声をかけることで、一人でも二人でも関心を持つスタッフがでる。そのようにすると、その患者さんに関心を持つスタッフが増えることは、安心につながりますよね。

自分の関りで、この人は落ち着いてくれたということがちょっとずつでも積み重なっていくと嬉しいですね。

まず、私が介入してお話をすれば、「こんな風にすれば良いんだ!」と、真似をしてもらい、いい環境を作ろうという動きが少し広がります。

今まで師長の時は一部署でしかできませんでしたけれども、部長になると病院全体、各部署で同様のことができることはとても喜びです。

 

看護の楽しさを、より感じることができて、やりがいにつながるというところになるんでしょうか?

 

長坂:そうですね。

ただ、主任以上の人にとっては「自分はやれてないかもしれない」というプレッシャーにもなるようです。

「何が言い足らないのかな?」という気持ちで、私に話をしに来たりする事もあります。

そのようなときは「自分はどういう関りが足りなくて、どういう関りをすればこの人にとって、より良い存在になれると思う?」と、問答のような駆け引きをしながら、関わり方に気付いてもらいます。

それは、師長、主任の成長にもつながるのかなと今は思っています。

 

離職率はいかがでしょうか?

 

長坂:当院は離職率が低く

 

8.7%と、2年連続一桁で推移しています。部長になった当初、前年に採用した新人さんたちが10人のうち、半分以上がたった1年間で辞めてしまうという、とても悲しい経験をしました。

師長、主任とも悲しい気持ちは共有しつつ「次の年から、どういうふうにしていけばいいだろう?」と考えながら、取り組んできました。

 

スタッフに対しては、何か変だな?と気付いたら必ず声かけて、話を聞くようにしていました。

 

「部長は忙しいから、あとでいいです」と、スタッフや管理職は遠慮をして、なかなか連絡をもらえない時もありました。

でも、待たせている間、そのスタッフや管理職はずっと不安を抱えながら、ここに入院されている、通院されている患者さんに接することになります。

その状況は患者さんにとってもスタッフにとっても、よくないと思いましたので、必ず時間を作って、お話をするようしています。

 

 

部長がスタッフや管理職の方々を育ててらっしゃる雰囲気が伝わってきます。

 

長坂:育てているという意識は、本当にないんですよ。気が付いたらしっかりしている、という感じです。

「なんでだろう?」と師長さんたちに言うんですけど、「部長は大変ですし、忙しいということを、私たち重々理解しているので。自分たちのやれることはやります」と言ってくれます。自立して取り組む師長さんが、どんどん増えてきて。

肝が据わってきたのかもしれません。部長になり、今年4年目ですが、すごく頼もしいなと思いながら毎日過ごしています。

 

病院の教育で何か特徴的なことはありますでしょうか?

 

長坂:当院は129床ととてもコンパクトな病院で、今年も新人は7名採用ですので、少しでも早く即戦力として育ってもらいたいという思いはあります。

入職して1週間はグループ教育を看護部で行なっておりますが、それ以降は全て部署での教育になります。

その後、月に1回は集合研修を実施するという流れです。

 

現場に出れば、採血や点滴なども実施する必要があります。

おどおどしている新人もいますが、早く習得したいと思っている新人もいます。

当院の場合は、アットホームで、医師たちが積極的に腕を貸してくれるんです。

先輩たちも、自分たちも腕貸してもらってきたから貸さないと、と言って、みんな協力的なので、新人さんの意欲次第では、いくらでも練習ができます。

 

そうですか。実践が一番ということですね。

 

長坂:技術的なことは現場で教育しています。

プリセプターがいて、その上にコーチという存在を各病棟に配置しています。

看護副部長が教育専従でおりますので、去年5月に日本看護協会から出ました、クリニカルラダーを参考にしながら、当院のラダーと照らし合わせ、見直しを行なっています。

当院の特徴としては、看護倫理の研修を全部レベル別に内容を変え、私が講師になってやっていることです。

 

倫理は看護の基本だと思っています。

そこで、確実に伝えていくことが、病院の看護の質を維持・向上させていくと思っています。事例検討をしながら、とことん考えて、自分たちの感性を磨くことに力を入れています。

 

事例できちんと見ていくとこということですね。

 

長坂:座学ではなくとことん考える研修にしています。

認定看護師が、感染管理で1名、皮膚・排泄ケアで1名いますので、リソースナースとしてきちんと教えてもらえるように組み入れています。

 

そういう方々がリーダーにり、同じ病院の人たちの教育も行うシステムもきちんとあるんですね。

 

長坂:当院も7:1の看護体制をしていますので、看護師を獲得したい気持ちはとてもありますが、誰でも良いわけではありません。

そこで、看護部が求める人材について去年から発信し始めて、この中に一つでも共感できるものがあれば、当院で楽しく働いていけると考えています。

インターシップの時に説明し「共感できる事あった?」と一人ひとり聞いてみた結果「ここに感銘を受けました」と言われたら採用試験を受けてみることをすすめています。

 

新卒の方でも既卒の方でも、管理職の言葉に「付いていきたい」と思えたり「共感する」ことが大切ですよね。ただ条件だけで選ぶことは、良い就職ではないと考えています。

 

長坂:看護部のビジョンの中に、当院の看護師が、多職種の中でどのような役割を担っているのかということや、担っていく必要があることへの宣言も含めています。

 

調整役は、医師は苦手なことが多いのだと感じています。「私たちは積極的に調整役を担っていこう!」と。

「コーディネートは看護師がうまいのだから」と。

 

看護の役割を明確に打ち出し看護部だけでビジョンを作られているのも、すごく良いですね。

 

長坂:2014年に、会社で、組織活性化ビジョン研修というものがありました。

各部署でビジョンを出したら、選ばれたビジョンの人たちが呼ばれて、中央の研修を受けられる仕組みを担っています。

1泊2日で、東京プリンスホテルに宿泊できますが、看護部で応募したものが選ばれました。

すると、会社の重要な役割を担っている方々と、ディスカッションすることができました。これはとても良い経験になったと今でも思っております。

 

そこは企業の病院ならではの面白さでもあり、特徴的なことですね。

 

長坂:経営企画室の方々が病院の看護部に興味を持って「みなさんしっかりしていてとても素晴らしいですね」と言ってくださいました。

仕事以外で何か趣味はお持ちですか?

 

長坂:古墳巡りが好きなんです。

 

長坂:今年のゴールデンウイークに時間を取り、あらゆる場所を巡りました。

 

悠久の時を感じながらそこに立って風を感じる。タイムスリップしたような気分になります。

 

以前、考古学の分野を学びたいと思っていたことがありました。

私はこの古墳の上に立っていると思うと、とてもいい気持になります。

「ああ、これは昔造られたんだな」と、1個1個見ながら歴史を感じています。

 

 

新人看護師の方々に向けたメッセージをいただけますでしょうか。

 

長坂:現場に入った時には、不安でいっぱいだと思いますが、あなたたち新人看護職員は、最新の知識と技術を身に付けて入ってきた人たちです。

私たちは、そういうあなたたちの知識と技術を待っております。

自分たちからも、逆に学んでいただけることがあるのだったらば、貪欲に学んでいただいて、ともに患者さんによりよいケアを提供する仲間として、働きたいです。

シンカナース編集長インタビュー後記

長坂看護部長のお話は、最初から驚きの連続でした。

看護師でありながら、法学、MBAを学ばれているということだけではなく、興味を持ったら即行動!を実践されていらっしゃいます。

看護系に特化して学ばれていらっしゃる方々のお話は伺うことが今までもありましたが、広域な分野をここまでチャレンジされていらっしゃるかたのお話は初めてでした。

また、現場が好きだという雰囲気が伝わってきましたが、好きなことと、管理をミックスさせて人材育成に繋げていらっしゃいます。

管理職の役割になったら「看護」がなくなってしまうわけではない。

お話を伺いながら、管理職だからこそ出来る「看護」があるのだということも学ばせていただきました。

記事には掲載しておりませんが、部長は趣味も、古墳めぐり、鉄道(乗り鉄だそうです)、音楽(スターダストレビューのコンサートのお話もいただきました)、お弁当作り、山登りなどなど、幅広く興味を持たれ、持ったら実行!というお話は大変素敵だなと感じました。

驚きと、楽しさの連続で、あっという間に時間が過ぎてしまい、お伺い足りないくらいでした!

長坂部長、この度は本当にありがとうございました。

 

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施設概要

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中 友美
A-LINE株式会社 代表取締役社長 シンカナース編集長
北区医師会看護高等専修学校 東京都立公衆衛生看護専門学校 東洋大学文学部国文学科 明治大学大学院グローバルビジネス研究科 経営管理修士(MBA) 日本大学大学院総合社会情報研究科 博士後期課程在学中 ニュージーランド留学 A-LINE株式会社/代表取締役社長 東京医科歯科大学非常勤講師 著書『わたしの仕事シリーズ2 看護師』新水社