No.28 井上由美子様(三井記念病院)後編「管理も楽しむ」

No.28 井上由美子様(三井記念病院)後編「管理も楽しむ」

  • 2017年8月1日
  • インタビュー
No.28 井上由美子様(三井記念病院)後編「管理も楽しむ」
No.28 井上由美子様(三井記念病院)後編「管理も楽しむ」

前編に引き続きまして、三井記念病院の井上由美子副院長にお話を伺いしています。

後編は、教育をはじめ看護助手さんに期待する役割やJCI(Joint Commission International)についてまで多岐にわたるお話をお伺いしています。

新人教育はしっかりと、面接から親身に

今後この病院に来る新人に期待することはどのようなことですか?

井上:教育はきちんとしたいと思っています。

ですから、自分のキャリアを自分で描ける人というのがこれから必要だろうと思っています。

打たれ強いという言葉は変ですけれども、そういう人でないとすぐにつぶれてしまいます。

急性期の病院ですので若い看護師が多く、平均年齢がそんなに高くないと思いますので、切磋琢磨しながら、そして、今の人は怒られ慣れていないじゃないですか。

ベテランナースにちょっと注意を受けたり、自分の考えと違うことを指摘されたりするとすぐにつぶれてしまう人もいることも事実です。

もちろん、学習してきていますので弁も立ちますし、書かせれば素晴らしく書くんですけど、当然技術がともなわず深い悩みに落ちてしまう人もいます。

それはそれで、その子の強みとしながら、どうやって看護スキルを身に付けていくかというのを何年か待たないといけないのですが。

人間として繊細と弱いは違いますので、採用のときに最初に言っています。

「あなたたちを国家ライセンスを持った人として組織に受け入れ、7年間かけて一人前にしたいと考えています。そこには大変なこともたくさんあります。遊ぶこともとても大事だけど、それと同じぐらい仕事をする、学ぶということをきちんとバランスを持ってできることが重要です。そこについていけますか?」と面接のときにはっきりと言います。

 

先に押さえるポイントをしっかりと伝えておくということですね。

井上:そうです。

「来たけど違った」ではどちらも不幸ですよね。

地方から東京に出てくる学生ですと、親の立場で考えるときちんと教育をしてくれるんだろうか、人間としても成長させてくれるんだろうかと心配しますよね。

都会に出てくることを親は反対してないか、つぶれそうになったときに自分をサポートしてくれる人は誰なのかとか、そういうことも面接の中で聞きます。

学習ができないということではだめとはしません。

伸び代はわかりませんから、最初はみんな一緒です。
その後どうやって自分がキャリア形成していくかということなので、新人はそこだけで判断をすることは基本しないようにしています。

今の人は打たれ強くないと言うと引いてしまうかもしれませんけれども、それは重要なことだと思います。

やはり看護の仕事は大変なのですから。

看護全体の学びを広げる

新人時代を含めて学びを継続されているというようなお話が端々に出てくるのですが。

井上:新人時代は「どうしてだろう」という疑問がいっぱいあります。

新人のときにはたくさん覚えないといけないこともあります。

それを教えてくれる人が先輩の看護師であったり、教育してくれる指導ナースであったり、医学的知識は医師の協力を得たり、きちんと解決してくれたり、答えを教えてくれなくてもさらに自分が考えていけることを教えてくれたり人たちがいました。

主任・副主任のときはその役割をこなすことでいっぱいでした。

後輩に正しいことをどのように丁寧に教えるか、安全に行えるにはどうすればいいか悩みながら行っていたように思います。その頃は自分でも「私は仕事ができるぐらい」に思いますよね。だから強気といいますか、わからず走っていたんだと思います。

師長になると労務管理やいろいろな管理が大きく広がってくるので、そうすると中での学習だけでは足りないと思って外に勉強に行きました。

私が師長になる前に同僚が千葉大の修士、その後東大博士に行きました。彼女と看護の話をしていると、もっと学習が必要だと思わされ大変刺激を受けます。

彼女は現在教育に行っていますが、その人と会うと今でも自分がすごく小さく思えるときがあります。

看護の臨床の場面は私たちが強みだけれども、看護を学問として考える、臨床現場での教育はどのようなことがたりないのかと考え悩んでいて、夜学で大学に行きました。

当時は医療安全が言われていたときですので、法律はどうなっているのか、これからどうなるのかが知りたかったんです。

でも退職者が出たり病棟の変遷もあったりして師長の業務がままならなくなりました。

大学を卒業するということが主たる目的ではなく、学びたいものは何だったかのかと思い直し、4年生のときにやめました。

大学の教授に助言を受けたり、会社を経営されている方や学校の先生など異業種の方ともつながることができたりして、そこでまた輪ができました。

 

修士も行かれたのですか?

井上:修士はここを辞めて関東中央病院の看護部長時代に行きました。

副院長にという話があったときに、若い人や師長さんに勉強しなさいと言っているのに自分はどうなんだろうと思い立ったのです。

それで何とか無事に看護管理学の修士まで終わりました。

大変でした。教員をはじめ多くの仲間、職場のスタッフに助けてもらいました。

 

法律を学ばれて、そして看護管理学もされたのですか。

井上:学んだといっても私たちが仕事をしていく上での医療安全に関することだけで、あとはほとんど普通の大学ですから政治学なども学びました。

看護と違うことを学べるということが楽しかったです。

 

新しいポジションや次のステップというときには必ず学びもプラスされていらっしゃるのですね。

井上:看護学生時代に勉強を少しおろそかにして時がありましたから、どこか気持ちにあるのかもしれませんね。

看護補助者に期待する役割とは

看護補助者についてお伺いします。看護補助者の活用に今後加算が付くようになりますし、より業務がシフトしていく部分が今後あると思うのですがどう取り組まれていますか?

井上:看護補助者さんは黒子のような感じというと言葉が変ですけど、私たちの仕事を支えてくれています。

そういった人たちがいるので医療や看護が成り立っているといっても過言ではありません。

ただ、今はいろいろと医療が複雑になってきましたので、昔のようにただ一緒にお手伝いすればいいということではなく、補助者さんを守りつつしっかりとした教育をして、私たちの仕事をアシストしてもらうということがとても重要です。

役割の拡大は必要だと思います。

将来、患者さんも高齢、看護師も高齢というような時代になっていきます。

当院は1つの病棟に3名ぐらい看護補助者がいます。

経営でいうとしっかりと加算を取るということもありますが、目的は看護業務の負担軽減です。看護補助者がどのような部分を担ってくれれば私たちが本来患者さんにすべき看護ができるのかということが重要です。

JCIを受審しましたので外国人の患者さんも普通にいらっしゃいます。

看護師の若い人たちは英語を話せるようになりましたし、あまりびっくりしません。

 

そうなんですか?

井上:逃げないです。

苦手な人もいるかもしれませんが、iPadやスマホを使って上手にやりますよね。

去年は看護補助者にフィリピンの人とベトナムの人を4人入れておりました。

漢字は読めませんがホスピタリティがとても高いので、グローバル化を考えればそういう人たちも必要だと思って取り組みました。

教育はまだまだ足りていないので、もっと丁寧に教えていかないといけないと思っています。

 

今看護補助者さんは何名ぐらいいらっしゃるんですか?

井上:看護部全体で69名です。

国際基準認定に向けて一致団結

病院が東京の真ん中にありますし、オリンピックに向けていろいろな患者さんがいらっしゃるでしょうね。

井上:JCIの受審を受けましたのでホームページ上も載ります。

患者さんが来たときに、JCIを受けているのに私たちが対応できない、ではいけません。

病院に来られるということは何かしら健康を害しているわけで、来ればやはり救わないといけない使命があります。

国際事業部がありまして、そこに通訳のボランティアを呼んだり、事務でも英語が堪能な者がいたりするので一致団結しています。

 

国際的な基準を取るとスタッフや職員の意識がグローバルになっていくという側面もありますか?

井上:去年初めて取りましたので、それはまだ何年後かでしょうか。

例えば聖路加国際病院のように国際病院となるようなところはもともと違うと思うのですが、まだ若手の集団なので比較的そういったことには順応しやすく、苦手意識が大きくないように私自身は感じています。

これはチャンスだと思います。

当院も数年をかけていますけれども、職員全員で作り上げたものが、職員の末端までそれが周知されて浸透していき、患者さんがいらしたときに同じサービスが同じようにできないといけないですよね。

そういう意味ではまだまだですが、毎年見直しながら人が変わってもずっと継続してやっていかないといけないですよね。

医療の質ですから。

ベンチマークしながら自分の病院を数値化して可視化していくということですが、みんな疲れ切っています。

 

きっと膨大な時間や作業が必要だったのでしょうね。

井上:気付けば夜12時という日々が続いていました。

私自身も知らないことがあって勉強していきましたが、やはり大変でした。

 

そのときの看護部の担当者は副院長自らがされたのですが?

井上:診療科の副院長がリーダーで、サブリーダーが私という立場です。

ドクターや職員を巻き込んでみんなでやらないとできません。

私たちは「行くぞ」と旗を振ることはあっても一線で働いている人たちが一番大事なところです。

本当にたくさんの職員が診療科の垣根を越え、いろいろなコメディカルの人たちも気持ち良く対応してもらいました。

 

継続していくというところですよね。

井上:そこが大変かと思います。

 

それもチームワークの一つにつながりますね。大変なものをみんなで乗り切るという。

井上:タイプが外科系なんでしょうかね。病院全体が急性期なので「一気にやるぞ」という。私がそのようにあってほしいと願っているのですが。

管理も楽しんで

副院長も外科系ですね。

井上:若いときに急性期を回りたいと思っていたので、タイミングよく脳神経センター、循環器、ERと将来どうするかは決めていなくて、でもクリティカルなところに頭も体も心も動かなくなる日は当然くるわけです。

30歳前後は自分がどういった領域をしていくのかなと思っていました。

三井記念病院に来たときに外科病棟でがんの領域だったので、そこで出会った医師に感化されて乳がんの認定資格を取りました。その医師が書いたカルテに感動しました。「夫リストラ、長男大学受験」この一行でこれから治療を受ける患者の背景がイメージできる。看護師の記録はとにかく情報を埋めている。その情報をどのように実践でリアルタイムに活かしていくのか悩みました。

自分はこの領域に進むんだろうなと思っていたのですが管理をすることになりました。

 

楽しまれているんですね?

井上:そうですね。

私が楽しんでいないと伝わるんですよね。

師長さんたちにも嫌でも伝わります。

 

よく師長さんの疲れている姿やネガティブな印象をスタッフの方が見てしまうと、あとに続いていかなくなることもあるのでしょうか。

井上:そうだと思います。

 

ストレス解消に心がけていること

今お仕事以外でのご趣味はありますか?

井上:昔はオートバイ乗っていましたが、管理職になったときに乗らなくなりました。

これは事故をしたときに責任を負えなくなると思って、それでやめました。

 

どのようなバイクに乗られていたのでしょうか?

井上:400ccまでの免許を持っています。

 

バイクのイメージがあまりにも遠くて驚きました。

井上:今は気の合う友人と温泉に行ったりおいしいものを食べに行ったり、私はストレスでお酒を飲むことは絶対にしないと決めています。

お酒を飲んでいるそのときは仕事の話はなしです。

師長さんともそうしています。

そうは言いながら愚痴を聞くこともあるんですけど、それはそこに捨てて帰ろうと思っています。

選ばれる病院であるために

今後こちらの病院で副院長がどのような看護部を作っていきたいとか、新たに考えていらっしゃる最終的なビジョンをお聞かせ下さい

井上:やはり選ばれる病院でなければ生き残れないわけです。

当院は地域支援病院という認定も受けていますので、医療者として使命にこたえないといけません。

当院は急性期病院として先端の治療をやりますが看護がついていけないでは困りますので、よく学んでほしいですし、チーム医療の中で看護師が看護師として発信することは専門職として果たしてほしいと思っています。

師長になって管理をするということに限らず、その人個人個人がどういった看護をしていくのかというところをきちんと自分で考えられる看護師が育ったらいいなと思っています。

離職は困りますが、離職した後に看護を続けてくれていることがとても重要ですので、それは旅に出たと思っています。

私は去る者追わずなんですけれども、そういうスタンスはずっと変わらないでいたいなと思います。

人が足りないのは困るということで引き留めることは、あまり私はしないようにしています。

その人が自分で意思決定をして考えたのであれば、それは応援したいと思っていますし、出て新たに学ぶことがあってひょっとしたらまた新しい風を送ってくれることもあるかもしれないという淡い期待がある。

それぞれが自立していってくれたらいいなと思っています。

看護管理にも生かせるビジネス書

こちらの本は井上副院長の本ですか?

井上:前にいらした部長が置いていかれたものもあります。

 

ドラッガーや本田宗一郎が。

井上:ビジネス本はよく読みます。

看護管理者は重要だと思っています。

 

看護管理者は看護の本だけではなく一般のビジネス本も?

井上:重要です。

戦略やいろいろな人の経験値から事業展開する話もありますし、それはまさしく管理なので面白いなと感じます。

 

組織を動かすとか、人をどう見ていくか成長させるとかという一般企業のお話も?

井上:とても面白いです。

特に人事考課の話は参考になります。

看護職って何となく優しさや情というイメージがあって、師長の考課について「いい子だということといい仕事ができたかは違うよね」と聞きます。

差別はしてはいけないけれども区別はするといったことを教わることもあります。

 

ビジネス書がたくさんありますね。

井上:師長さんたちにもぜひ読んでほしいと思います。

シンカナース編集長インタビュー後記

井上副院長は、以前、バイクでツーリングをされていたというお話を伺い大変驚きました。

驚いた理由は二つ。

一つ目は、井上副院長の雰囲気、お話されている声のトーン、穏やかさなどからイメージとのギャップがあったこと。

二つ目は、私自身、以前バイクに乗っていたので、バイクの機種等のお話が出来る看護管理者にお会いしたのが初めてだった!ということです。

自らの信念をしっかりと貫きつつ、周囲からの要請や、声掛けにも柔軟に対応されるしなやかさを、井上副院長から学ばせていただきました。

看護部は病院の中でも一番大きな部署であるため、副院長として病院運営、経営に関わりながら、大所帯である看護部をまとめていくことはとても多くの能力を要することだと容易に想像できます。

その中で、地域や未来の医療を鑑みながら職を全うされているお姿は、看護管理者の未来を身近で拝見できている気持ちになりました。

井上副院長、この度は本当にありがとうございました。

 

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病院概要

社会福祉法人 三井記念病院

中 友美
A-LINE株式会社 代表取締役社長 シンカナース編集長
北区医師会看護高等専修学校 東京都立公衆衛生看護専門学校 東洋大学文学部国文学科 明治大学大学院グローバルビジネス研究科 経営管理修士(MBA) 日本大学大学院総合社会情報研究科 博士後期課程在学中 ニュージーランド留学 A-LINE株式会社/代表取締役社長 東京医科歯科大学非常勤講師 著書『わたしの仕事シリーズ2 看護師』新水社