No.26 樋口幸子様(済生会中央病院)前編「誇りが持てる看護」

No.26 樋口幸子様(済生会中央病院)前編「誇りが持てる看護」

  • 2017年7月26日
  • インタビュー
No.26 樋口幸子様(済生会中央病院)前編「誇りが持てる看護」
No.26 樋口幸子様(済生会中央病院)前編「誇りが持てる看護」

26回目のインタビューは、済生会中央病院へお邪魔させて頂きました。

看護師で副院長をされている樋口幸子様より看護師に対する思いをお伺いしています。

一期生から看護のメッカへ

 

まずは看護師になろうと思われたきっかけを教えて頂けますでしょうか。

 

樋口副院長:もともとは薬剤師になろうと思っていましたが、群馬大学に新設された医療短期大学看護学科に合格できまして、同じ医療系ということで1期生として学び始めました。

当時は聖路加が看護のメッカと呼ばれていて、群馬大学の中でも学ぶ資料が全て聖路加のものでした。

 

「一番プライドが高く看護師ということを教えてくれるところはどこか?」と思って、卒業後には聖路加国際病院に勤めました。

そこで、「看護とは何か」「患者さんのためとはどういう事か」「良い看護をするためにはどういうことが必要なのか」ということを、理論と根拠に基づいて日野原先生をはじめとする先生方に学ばせて頂きました。

その軸はブレることなく、そこからずっと看護の道を歩んで来ています。

 

看護業界のトップブランドに務める上で何か特別に大変なことはありましたか。

 

樋口副院長: 聖路加では看護物品や指示も、全て英語で書かれて出されていました。

それをリーダーのナースが読み取り、仕分けをし、チームナーシングをやっていく形でしたので、一番英語で苦労をしました。

でも医師と看護師の関係性、組織としての風通しは非常に良かったです。

患者さんを中心にして、医師とも看護計画について日常的にやり取りができました。

この経験は私にとっては、いわば基礎教育でした。

勤務しながらにして基礎教育を受けることができたのは、他では経験の出来ないことだと思います。

 

聖路加国際大学病院でご勤務された後はどのようなことがありましたか。

 

樋口副院長:色々な病院を見てみたかったので、小さな病院や温泉病院で勤務したり、日赤の献血車にも乗った事があります。

こちらへ来る前には、特別養護老人ホームの所長代理も経験しました。

これまで色んな管理職や医療施設を見て経験して、どこに行っても大変な事はありますが、看護職はさまざまな所で活躍できる事を学びました。

「様々な経験を積んできたからこそ、今があるんだなあ」と感じています。

 

副部長として入職した意味

 

副院長というポジションの方として、介護まで見ていらっしゃる方に初めてお伺いしました。

 

樋口副院長:普通であれば、中で育ってきている人たちを副院長職や管理職にしていくと思います。

私のように、色々な経験を履歴書の中に書いた人を受け入れてくれるこの病院がすごいと思います。

 

やはり病院側も副院長というポジションですから、経営ということを踏まえて視野の広い方を求めていたという部分もあるのでしょうか?

 

樋口副院長:元々私は副看護部長としてこの病院に来ました。

そしてしばらくして部長になり、4年後に副院長になりました。

今年は私が副院長になって2年目、この病院に来て10年になります。

 

今考えると、副看護部長で入職したのは良かったのかなと感じます。

そのポジションにいたからこそ、師長さんたちがどんな事をしているのか身近に見る事ができたのです。

改善しないといけない事は何なのか、病院・看護部としてどのように改善したらいいのか、という事を知る事ができました。

更に、病院の中で職位が上がっていきましたので、スタッフとの信頼関係を築くステップを踏む事ができました。

副院長になってリーダーシップを取らないといけない、という時に働いている中の人たちのことを分かっていることは重要ですから。

泣かない看護師を作りたい

 

管理職はいつ頃から意識され始めましたか?

 

樋口副院長:25年前に小さな150床ぐらいの病院にいる時でした。

ちょうどプライベートも充実して、結婚して子供にも恵まれた頃でしたが、当時は看護師の中には既婚者も子供がいる人もほとんどいませんでした。

そのためで、独身の時はリーダーや主任になっていたにも関わらず、結婚して子供を持った途端に「一人前じゃない」と否定されたように感じました。

その時に、「子供がいる事でどうして否定されちゃうのだろう?」とすごく不思議に思ったんです。

患者さんは色んな人生を歩んで来て入院しています。

その人たちに医療を提供しよう、良い看護をしようとする看護師の人生経験が浅いのはおかしい事だと思いました。

ですが、主任として働いていたある日、看護師がトイレで泣いていると報告を受けたのです。

理由は、そのスタッフの子供が熱を出していて心配だというものでした。

その時に私は「どうして帰らないの?」という声かけのできない看護師たちが居るのを知りました。

自分は一生ジェネラリスト、一般職でやっていくと思っていたのですけど、このような事をきっかけに、「管理職って、何をする人なのだろう?」「このような事は改善しないといけない」「泣かない看護師を作りたい」と管理職に対する関心を持ち始めたことを覚えています。

患者さんと接するのは看護師です。

その看護師が泣いたり辛い思いをしていたら、患者さんを笑顔にすることも支えることもできません。

彼らをどう支えるか、それを考えるのが管理職だろうと私は思います。

私は管理職でもありますが、やはり身近な先輩という存在で「何を困っているの?」と耳を貸せる存在でありたいと思っています。

 

そういう師長や部長のもとだと、子育て世代のナースたちも非常に働きやすいですよね。

 

誇りが持てる看護

 

「看護に誇りを持つ」ためにはどういった事が必要でしょうか。

 

樋口副院長:「看護師をやっていて良かった」と思う瞬間だと思います。

そしてそれは「ありがとう」と言われる瞬間です。

この病院には三次救急もありますので、「ありがとう」と言えない患者さんたちもいらっしゃいます。

例えば、会議の中で突然倒れて救急車で運ばれて、数時間後には息を引き取る方も見ていかなければなりません。

でも、そこの息をしていた瞬間を見てきているのは看護師です。

「こういうふうに頑張ってきましたよ」とお伝えすることができるのは看護師です。

そこで「あなたがいてくれて良かった」「あなたがやってくれて良かった」と言ってもらえる看護師になって、それが誇りにつながればと思います。

みな小さい頃から思い描いて来た看護師になりたくて、4年間あるいは3年間の厳しい勉強をして、国家試験に受かって、「こんな看護師になってみたい」と思ってこの病院へ来るわけです。

その思い描く看護師像は、時と共に変わっていくかもしれません。

それでも、それぞれの理想とする看護師になれるように支えることが私たち管理職の役割であり、看護師一人一人の誇りにつながっていくと信じています。

後編へ続く

 

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病院概要

東京都済生会中央病院

中 友美
A-LINE株式会社 代表取締役社長 シンカナース編集長
北区医師会看護高等専修学校 東京都立公衆衛生看護専門学校 東洋大学文学部国文学科 明治大学大学院グローバルビジネス研究科 経営管理修士(MBA) 日本大学大学院総合社会情報研究科 博士後期課程在学中 ニュージーランド留学 A-LINE株式会社/代表取締役社長 東京医科歯科大学非常勤講師 著書『わたしの仕事シリーズ2 看護師』新水社