No.23 荒尾都威子様(相模原赤十字病院)後編「 看護助手さんは先生!」

No.23 荒尾都威子様(相模原赤十字病院)後編「 看護助手さんは先生!」

  • 2017年7月21日
  • インタビュー
No.23 荒尾都威子様(相模原赤十字病院)後編「 看護助手さんは先生!」
No.23 荒尾都威子様(相模原赤十字病院)後編「 看護助手さんは先生!」

前編に続き、相模原赤十字病院の看護部長、荒尾都威子様のインタビューをお届けします。

後編では、チーム医療実践での取り組みや看護助手さんの役割などについてお伺いしています。

 

 一人の力の限界から見出した理念

「安全で温かく安らかなチーム医療」を実践するうえ、どのような取り組みをされていらっしゃいますか。

 

荒尾:こういうケアチームを作りますよとか、チーム活動を強化しましょう、とか看護部の重点目標は毎年立てています。

この目標の根底にあるものは、私の経験と看護観です。

例えば、昔は乳がんの手術をするのにアメリカまで行かなければいけない時代がありました。その時代、目の前の乳がんの患者さんに自分一人ができることは何か考えましたが、一人の力はとても小さくて・・・。

それでもチームで関わることで患者さんに安心して貰えたりすることがある、という実感を得ていました。

ですので、そういった取り組みはしていかないといけない。

別に特別なチームを作らなかったとしても、どんなところでも大切だろうな、という感覚が自分の中にはあったんですよね。

 

患者さんやご家族だけでなく、スタッフや先生方にも、「思い切りやれたね」とか、「できる限りのことをやりたいよね」とかそういうものを感じたり考えてもらうということが、チームとしてまとまって力を出すために一番大切な事だと考えています。

患者さんやご家族が中心なのは当然ですが、関わっている医療関係者にも思いっきりやって欲しいなという気持ちがあります。

そのやりたい事をやりきれる環境を整える、という目標が根底にあるわけです。

でも、本当にそのやりたいことが患者さんやご家族のためなのか、私たちの満足のためではないか、ということはちゃんと確認してからにして貰うようにしています。

そして結果だけでなく、途中でどういった反応を得られたのかも振り返りもしています。

それを続ければきっとスタッフ達も達成感を得られて、やって良かったと感じると思うんですよね。

そして、それは最終的には全部患者さんへ還元されて行くはずです。

そういった取り組みをしています。

 

部長の周りにいるとやりたい看護が継続できる、と感じますね。

今は医療が急性期化していますから忙しない空気があると思いますが、看護師としてやりたい事が少しでもできると楽しいと思えたり、看護っていいなと思う気持ちがより湧いてくると思います。

部長は患者さんのことだけでなく、その看護師側の気持ちも大切にされてらっしゃるのだなと感じました。

やはりそこは意識されているのでしょうか。

受け継がれる恩師の考え

荒尾:そうですね。教務部長になる前の恩師の影響があると思います。

厳しい方だったのでよく叱られたのですが、理由を考えてみると、私が学生のことをちゃんと考えてないときに叱られるんですよ。それで、学生を見ればいいのかと気付きました。

同じように、私は今スタッフのことを考える、スタッフは患者さんのことを考える。

スタッフが患者さんのことをちゃんと考えていれば私から注意することはありません。でも私に評価されたいということであるならばそれは違います。この考え方が皆に伝わっているのかも知れませんね。

スタッフは患者さんとご家族、私はスタッフを大事にすることでスタッフが患者さんを大事にできるのだと思います。

 

看護が楽しいと思える環境がここにはあるのだなという印象を受けます。

やはりスタッフを大切にしてくれる管理者下で働くのと、思っていても伝わらない場合とでは看護師達のモチベーションは違いますよね。

やはりスタッフも、患者さんやご家族をケアするのが自分たちの仕事だと頭ではわかっていても、その自分たちを見てくれる上司がいるところでは安心して働けると思います。

そういった職場を部長自らお作りなることによって、それが他の師長さんや管理者の方々にも継承されていくという仕組みが作られているではないかと思います。

 

荒尾:師長会議ですとか教育の企画に関しての話をする時に、私の考えを伝えていますので、共有してくれていると思います。

病院自体が病棟が3つと手術室と透析室と外来だけと小規模ですので、会議中も皆発言してくれますし、コミュニケーションはとりやすい環境ができていると思います。

 

他の師長さんや管理職の方々が部長にアドバイスを求めたり、お話することは日常的にあるんですか。

 

荒尾:よくありますよ、いつも居ますからね。

副部長の時に認定看護管理者の研修に行かせていただきました。幹部候補生時代は教育コースを選択しましたので、共通点はあったとしても看護管理上の経営を知らなかったからです。研修では経営や経済、組織分析の方法などをグループワークを通して学びました。その中で、私が見ているものとか、考えているものはそんなに間違ってないんだ、という自信が生まれました。

伝わるものしか伝わらないですが、このままのやり方でいいんだなと安心できましたね。

この病院に異動で来て、研修に出させていただいたからこそ得られたもので、管理者として働く上での助けになりました。

ここには他にも人脈もありますし、サポートも整っていますね。

 

看護師は皆、困ったときにぱっと聞ける人たちが増えたり、ふとした時に仲間の力を感じられるとよりパワーが出てやりたい看護もできるようになると思います。

その一方で技術や知識だけ、また別の方向にひとりだけで頑張ってしまった結果、周りが離れて一匹狼になっていってしまう方もあるかなと思うんですね。

そういった人間関係の問題で離職してしまうという話も聞いたりします。

そういう方々にアドバイスはございますか。

 

荒尾:みんながみんな社交的ではないでしょうし、付き合いが得意な人から得意じゃない人、自分と同じような人がどこかのグループにはいると思うんですね。

ひとりで頑張ってしまう方は、自分をさらけ出したときにほっとできた経験があまりないのかも知れませんね。

そういった経験を何度かすれば、少しずつ気が置けない仲間も増えてくるんじゃないかなと思います。

 

 看護助手さんは先生!

看護助手さんの役割についてお伺いいたします。

こちらの病院には看護助手さんは何人いらっしゃいますか。

 

荒尾:4対1はいるので病棟は看護師28人くらいで助手さんが7人、夜勤は50対1ですけれど看護師3人と助手さん1人が全部の病棟にいます。

もともと寝たきりの方が多い病棟には看護助手を配置していましたが、配置病棟を去年から増やしました。

術後の患者さんをみている病棟でもベッド配置や業務を考えると看護助手の方がいてくださると、看護師がより看護業務に専念できますから。

夜勤も一緒にすると、夜の空いた時間にスタッフ同士でも普段しない話とかできますね。

助手さんと親しくなって、コミュニケーションも活性化して言いにくいことも言えたりとかすると、仕事にもいい影響が出てくると思います。

実際、スタッフ間のコミュニケーションがよくなってきました。

若い看護師にとっては看護助手さん達自身の人生経験や社会経験に関するお話が、患者さん対応や理解をする時に知恵として役立ったりしています。

人間としての生活の知恵や患者さんとの対応の仕方も教えて頂ける教師だと思いますし、大事だと思います。

もちろん、看護助手さんには看護業務の補助をしていただいていますが、そういう意味では看護師の足りないところを補う役割を担ってくれていると思います。

 

看護補助者の役割の拡大や活用が検討されていますが、助手さんの役割は今後増えていったりすると思いますか。

 

荒尾:そうですね。近隣の施設でも看護師より介護士の方が多かったりしますしね。

看護助手の中でも社会介護福祉士、何も免許を持っていない人がいらっしゃいますが、それぞれの役割をきちんと整える必要はあるでしょうね。病院でも施設でも、場所が異なっても助手さんの役割は統一して、同じように看護の役目もしっかり決めていかないといけないと思います。

 

 必要とされる場所で活躍する赤十字病院

赤十字は格が高いですとか、規模が大きくて地域の人たちの中に入っていくというよりはその人たちが来るというようなイメージがあったので、そういったところも改革されているんですね。

 

荒尾:その土地で違いもあるのでしょうが、ここで生まれ育った人たちは最期まで慣れ親しんだ環境で、と思うと今やれる人がやるしかないと思います。

 

そうすると今後はもっと地域と病院が一体になって、2025年問題にも取り組んでいくということでしょうか。

こちらの病院は看護師は他から来るかたが多いですか。それとも地元の方が多いのでしょうか。

 

荒尾:新人の半分は地元からで、奨学金の関係で他方から来ましたという方もいます。

少し地元の人が多いですかね。結婚してこっちに来ましたという人もいます。

子育てしながらの方もいらっしゃるので割と働きやすい環境だと思います。辞める人も少ないですから、所謂中堅層が豊かになってきて嬉しいです。

新しい人、ものを受け入れる柔軟さを

看護師はどんどん新しいことを吸収していくことは必要な職業ですが、そこにどんなことをプラスする必要があるでしょうか。また、そのことについてどうお考えでしょうか。

 

荒尾:看護師は狭い世界ですから一般的な社会常識を学ぶ機会もあまりないんですよね。

看護師以外の友人をもつ事も良いと思います。

周りに視野を広げれば、知らないことがいっぱいありますから、色んなものを見たり聞いたりしたときに感動したりする気持ち、吸収できる余裕や柔軟さも持っていた方がいいでしょうね。

 

部長ご自身、色んなところに興味を持たれたり輪に入っていかれるのがお好きではないかと感じましたが、仕事以外で何か大切にされている時間や趣味はありますか。

 

荒尾:これといった趣味はないですが、やっぱり色んな人と会って、よく喋って聞いて、泣いたり笑ったりするのが好きなのもあってかカレンダーを見ると予定で埋まっています。

家族も楽しめるようになったので

大変な時期もありましたが、もうそういうのは通り超えて楽しめるようになりました。

専門書以外の本を読むのも好きですね。

 

看護師として働き始めたばかりの1年目から3年目までの、ちょっと不安定な人たちに対して希望はございますか。

 

荒尾:割と優等生で行った人ほど自分の弱みを認められない傾向がありますが、出来ないところもあっていいからそれを認めてプラスにするくらいの気持ちで上に登って行って欲しいなと思います。

弱いところはあっていいですし、1個叱られたからダメじゃなくてそれに立ち向かうくらいがむしゃらになって欲しいです。1個ダメなら全部ダメとかそういう事はあり得ませんから。

人間関係も、看護師はチームで働いていますから、もし師長さんがダメでも係長さんとウマが合えばやっていけます。みんなとやれなくたってウマが会う人は先輩が何人か居たら1人くらいいると思うんですよ、

自分の居場所をちゃんと自分で作って、自分のダメなところはきちんと反省して、いいところはちゃんとアピールしていくというのを堅実に行っていって欲しいです。

 

看護部のアピールがありましたらお願いします。

 

荒尾:看護師同士がフラットに一緒になって考えられて、色んなことを話し合って前に進める病院、看護部だと思います。

シンカナース編集長インタビュー後記

緑豊かな自然環境の中にある病院でした。

穏やかな環境下で、しっかりとした理念に基づいた看護が出来る!荒尾部長のお話を伺いながら感じました。

新しいものを受け入れる、周囲の環境から学ぶ、自らが進化する、どれも当然と思われながらも実際に行うことは難しいことばかり。

それを部長が実践され、スタッフの方々にもその背中を見せることによって、離職率の低い、働きやすい環境を作られているのだと感じました。

患者さんや、その家族からの評価を重んじるということも「看護」は誰に向かって行うものか?という明確な視点をお持ちだからこそのお言葉です。

看護補助者について「看護師がより看護に専念出来る」というお言葉は印象的でした。

看護をしたいと思っても、雑務に追われて看護ができないという話はよく聞きます。

一方で解決策がないまま、これも看護の仕事と、有資格者でなくても出来ることまで看護が担うことが多い現実。

そこで、看護補助者と協働しながら看護に専念出来る環境作りを行う!という明確な回答は非常に嬉しいお言葉でした。

問題を放置せず、解決のために柔軟に周囲と連携する。

荒尾部長、貴重なお話をいただきまして、誠にありがとうございました。

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病院概要

相模原赤十字病院

中 友美
A-LINE株式会社 代表取締役社長 シンカナース編集長
北区医師会看護高等専修学校 東京都立公衆衛生看護専門学校 東洋大学文学部国文学科 明治大学大学院グローバルビジネス研究科 経営管理修士(MBA) 日本大学大学院総合社会情報研究科 博士後期課程在学中 ニュージーランド留学 A-LINE株式会社/代表取締役社長 東京医科歯科大学非常勤講師 著書『わたしの仕事シリーズ2 看護師』新水社