No.18 溝呂木大介様・鈴木夕輝様(ローズ療養通所介護様)「笑顔で働いていられる場所」4/4

No.18 溝呂木大介様・鈴木夕輝様(ローズ療養通所介護様)「笑顔で働いていられる場所」4/4

  • 2017年5月22日
  • インタビュー
No.18 溝呂木大介様・鈴木夕輝様(ローズ療養通所介護様)「笑顔で働いていられる場所」4/4
No.18 溝呂木大介様・鈴木夕輝様(ローズ療養通所介護様)「笑顔で働いていられる場所」4/4

1/42/43/4に続き、ローズ療養通所介護の溝呂木大介施設長、鈴木夕輝看護主任のインタビューをお届けします。

最終回となる今回は、印象に残る利用者さん、療養通所介護の未来について伺っています。

 

職種を越えて

 

鈴木さんは他職種との関わりでどのようなことに気をつけていますか?

 

鈴木:ここではいろいろな職種が働いていますが、役割は違っても「看護」「介護」といった線引きがないので、「他職種だから」とは思わないですね。

ケアマネさんや主治医とは、気になったことがあればマメに報告するようにして、こまめなコミュニケーションを心がけています。

会って話すと変わってくることもあるので、対面で会える機会を有効にしたいとも思います。

 

利用者さんのケアをする上で気をつけていることは?

 

鈴木:朝ここに来た時よりもきれいになって帰っていただきたいということですね。

利用者さんが自宅に帰った時にご家族が安心できる、まかせてもらえるようにと心がけています。

 

そのためにどのような工夫をされていますか?

 

鈴木:入浴後の処置を確実に実施することや、皮膚トラブルの確認や口腔ケアの実施ですね。

ベッドで寝て過ごされる方は、必ず洋服やタオルが乱れていない状態でいられるようにしています。

苦痛を訴えられない方も多いので、利用者さんがいる場所になるべく不快がないようにしたいですね。

ただ、点滴や吸引など、時に苦痛があってもやらなければならないこともあるので、苦痛を最小限にできるよう実施しています。

また、状態に変化があった時には家族を通して主治医への連絡もしています。

家族に伝えれば大丈夫なケース、こちらから主治医やケアマネに伝えた方がいいケース、それぞれ見極めをして判断するようにしています。



家族の思いが利用者に伝わる時

 

これまでの関わりで、印象に残る利用者さんについて教えてください。

 

溝呂木:90歳代の男性の利用者さんで、彼は非常に頭がよく、自律心が強く、痛いとか辛いとか悲しいとか何も言わない方でした。

ここに通っていたのですが、だんだん食べられなくなってだんだん弱ってきて、主治医からあと1ヶ月くらいという話があった頃でした。

普段何も言わない人が初めて「ひたちなかの海を見たい」と言ったんですね。

それを聞いたスタッフは、彼の最後の望みを叶えてあげたいと思って海を見に行く計画をたてました。

下見として、スタッフがひたちなかの海の動画を撮って帰ってきたその日に亡くなったんです。

最期は撮ってきた海の波音を聞きながら旅立っていかれました。

実際にひたちなかに行くことは叶いませんでしたが、我々の思いが届いたのだと思いたいですね。

鈴木:もう1人は80歳代女性の利用者さんです。

家族の介護力に課題があり、食事介助が困難な状況にありました。

病院で最期を迎えることになる予定だったのですが、主治医・家族と話し合いの場を設けて、我々が家族を応援する形で週5日の通所が始まりました。

ここで朝・昼ごはんと水分摂取、入浴を実施して、土日はとにかく寝て過ごすという生活を2年間続けたんです。

いよいよ食べられなくなってきて、1週間ほど食べない・飲まない時間が続いたでしょうか。

たまたま息子さんが連休をとっていた日に亡くなったんです。

息子さんは、「最期は自宅で自分で手を握って旅立たせてあげたい」という希望があって。

木・金・土曜日と自宅で一緒に過ごして、日曜日に手を握られて旅立たれました。

家族の思いを叶えようという利用者さんの強さですよね。

そういうのを見ると人ってすごいな、命ってすごいんだなと思います。

家族の力の強さを感じますね。

 

寄り添うことで利用者・家族の思いを知る

 

溝呂木:利用者さんに何をすることが正しくて、どういうケアをすべきかを我々が決めることはできません。

我々にできることを知るためには、本人や家族がどうしたいか、その思いをいかに理解するかにかかっていると思っています。

我々が1番大事にしていることですね。

 

こちらがよかれと思っても相手にとっては違うこともありますね。価値観が同じとは限りませんから。

 

溝呂木:それを知るためにはどれだけ寄り添うかなんですよね。

最期は何ができるんだろう・望んでいるんだろうとわかるためには、その手前でどれだけ寄り添っているかにかかっているんです。

 

鈴木さんは普段から自然と利用者さんに寄り添っているんでしょうね。

いてくれてよかった、と思ってもらえるといいですよね。

 

鈴木:そうだといいですね。

 

5年後の予想図について教えてください。

 

鈴木:5年後もここで働いているはずなので、ずっとみんなが笑顔で働いていられる場所を維持していきたいなと思います。

みんなが穏やかで笑顔で働いていれば、利用者さんも笑顔になってくれると思うので、その環境を整えることは私の役割でもあります。

溝呂木:僕も含めて介護福祉士という資格を持って働いている人たちが、自分たちが何をして、どう変えようと思っているのか、何を確立しようと思っているのか、自責性を持たないとどうもならないんだぞというところを5年間かけて訴えかけていきたいと思っています。

療養通所介護の5年後という部分で言うと、ここにいるスタッフは全員同世代(30代後半)なんですね。

仕事でやっていることは身体的になかなかハードな内容です。

5年10年経って、同時高齢化を迎えていくと、今のまま事業を維持することは困難になることは明らかですから、後進育成は必至です。

今働いてくれているスタッフたちが、ここでの勤務が難しくなった時に次に行く場所を作るのが僕の使命だと思っています。

「昨日腰を傷めました」という人が働けなくなる会社ではなく、「それならここに配属ね」と言ってあげられる環境を作ることが目標です。

そのためには会社として事業拡大を考える必要があります。

療養通所介護をもう1つ作ればいいと思う部分もありますが、全体のバランスを考えるとなかなか難しい現状もあり、引き続き検討していきたいと思っています。

現状をよりよくするという視点も大切ですが、「今」を継続することはもっと大事だなと思います。

「今」が良くなければ明るい未来はやってきませんからね。

 

最後に看護学生・看護師へのメッセージをお願いします。

 

鈴木:在宅は病院では知ることができない、対利用者・家族との関係性の理解が深まるので、大変なことも多いですが、自分自身の成長になると感じています。

ここで勤務するようになって、利用者さん・家族だけでなく、ケアマネさん等職種を越えていろいろな人たちと親密に関わることで、多くの学びを得ることができていますね。

家族の関係はもちろん、考え方など、何が正しい・悪いという捉え方ではなく、たくさんの価値観に触れることで、そこからいろいろなことを感じたり考えたりする機会に恵まれています。

病棟勤務の頃は、患者さんから過去の仕事のことや考え方などの深い部分は聞けことが多かったのですが、今こうして1対1でしっかり向き合ってコミュニケーションを重ねることで、その人の人生を支えてきた揺るがないものを知ることができます。

私も経験を重ねながら、それをここでのケアに反映できるように努力していきたいと思います。

 

利用者さんの思いに寄り添って、ということをまさに実践されているのですね。

 

鈴木:大変ですけどやりがいがある、楽しくて魅力的な職場ですよ。

溝呂木:今、日本の医療は在宅を推進する方向で流れができつつあります。

病院で「治す」「健康になる」という目的を果たして退院した後、患者さんがどういう場所でどのように過ごしているのか、というところにぜひ興味をもって、「だから安心して退院してもらえる」と思ってもらいたいですね。

また、療養通所介護という「医療に特化したデイサービス」としての情報を十分活用してもらいたいとも思います。

関係各所と連携をとりながら、協力しあいながら、それぞれに求められている役割を果たしていきたいですね。

 

病院で勤務していると、どうしても「退院=ゴール」になってしまいがちですが、患者さんにとっては「退院=スタート」ということを看護師がしっかり意識して関わっていくことが必要ですね。

どうもありがとうございました。

 

 

シンカナース副編集長インタビュー後記

眼力強い溝呂木さんと、柔らかな雰囲気漂う鈴木さん。

対照的なお2人の存在によって、この居心地のいい場の空気が維持されているのだとお話を伺いながら感じました。

国の政策が在宅へと大きく舵を切ろうとしている日本の医療において、療養通所介護が担う役割はますます大きくなっていくことは間違いないでしょう。

病棟勤務をしていると、在宅での介護サービスの実際を知る機会はそうありません。

患者さんが退院後どのようなサービスを利用して療養生活を送るのか、具体的なイメージを持ち、退院に向けてお互いが「連携」していくことができたら、より充実した医療・介護の提供が可能になるのではないでしょうか。

病棟勤務では、短い入院期間・多忙な業務等によってつい後回しになってしまいがちだけれども、最も重要なことの1つである「寄り添うこと」「思いを知ること」を改めて教えていただいたように思います。

多くの課題と向き合いながらも、患者さんや利用者さんにとってベストな選択ができるよう関わっていくことは、病院でも在宅でも共通している部分だと感じました。

溝呂木さん、鈴木さん、楽しくも熱いお話をありがとうございました。

 

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施設概要

ローズ療養通所介護の概要はコチラから

 

高山 真由子
シンカナース副編集長
慶應義塾看護短期大学  東海大学健康科学部看護学科 看護学士  早稲田大学大学院政治学研究科 ジャーナリズム修士  ニューヨーク留学  慶應義塾大学看護医療学部 慢性看護学実習指導  東海大学健康科学部看護学科 在宅看護学実習指導  東京都御蔵島村 保健師  シンカナース副編集長