No.19 メリック壽子様(ペックシティクリニック様)「全世界に目を向けてほしい」4/4

No.19 メリック壽子様(ペックシティクリニック様)「全世界に目を向けてほしい」4/4

  • 2017年5月14日
  • インタビュー 海外看護
No.19 メリック壽子様(ペックシティクリニック様)「全世界に目を向けてほしい」4/4
No.19 メリック壽子様(ペックシティクリニック様)「全世界に目を向けてほしい」4/4

1/42/43/4に続き、ペックシティクリニックの看護師、メリック壽子様のインタビューをお届けします。

最終回となる今回は、オーストラリアの医療制度や看護師ー医師関係に関するお話を伺っています。

 

総合診療が根付くオーストラリアの医療制度

 

日本人にとってはこのようなサービスは滞在中に安心できる存在ですね。

 

壽子:専門医での治療が終わって、あとは継続治療となればGPに戻ってきて治療していくことになります。

すぐに専門医に診て欲しいといっても診てもらうまで数週間かかることは多いです。

オーストラリアの医療制度がそうなっているので、開業医でできることはやってそれから専門医へ、という流れがしっかり定着しています。

 

採血や心電図といったこともあるかと思いますが、壽子さんが外来の処置介助につくこともありますか?

 

壽子:ほとんどないですね。

ドクター1人でやってもらっていますよ。

歳を重ねてだんだん図々しくなってきて(笑)。

ここでは他のクリニックよりも長く、1人の患者さんに20分の時間を確保しているので、そんなに忙しいことはありません。

だからできないはずはないんです。

ギプスを巻くことも縫合することもあります。

今日病院に行く、となると救急外来に受診することになるんですが、そうするとものすごく待つことになるので、ある程度GPでできるようにしておく必要がありますね。
総合医の概念が日本とまったく違うんでしょうね。なんでもといっても浅くではなく、ある程度深くまでやるわけですね。

 

壽子:そうですね。

全科対応する必要がありますからちょっと大変なんです。

「何でも」といってもGPはそれぞれ自分の得意分野がありますから。

検査もある程度やってその結果を持って専門医に紹介することになります。

 

幅が広いですね。

 

壽子:だからドクターたちにもいろんなところで勉強してもらう必要があります。

私も深くというよりは広く知っていないといけません。

前に勤務していたドクターは産婦人科系が弱かったので、そういう患者さんが来ると助産師の私の出番となることがありましたよ。

 

看護師ー医師間の高い信頼関係

 

臨機応変に対応できる能力が求められているのでしょうね。

 

壽子:みなさんそのように訓練されていると思います。

病院内でも回診があるんですが、受け持ちナースに主治医がいろいろ状況を聞いていますね。

普段ドクターたちは患者さんと接するのは5分くらいですから、患者さんに1番近いナースの意見を大事にしているんです。

 

日本との違いで驚いたのは、小児科に勤務していた時のことです。

医学的には退院できる状態にあるお子さんがいたのですが、ドクターが私に「あなたの意見は?」って聞いたんです。

それに対して「この子は今退院したらこういう理由ですぐ戻ってくる」と言うとそれならもう少し入院期間を延長することになりました。

何かがあってからではなくて、ある程度起こりうることを予想して動きますね。

 

ナースの意見が退院日の決定にも影響するということは大きいですね。

ナースとドクターの信頼関係もしっかりしているように思います。生活を見ているのはナースだからという視点ですね。

 

壽子:入院してきた日に退院計画をたてる、ということも昔からやっています。

1週間後に退院するとして、家族構成や生活背景も踏まえて退院計画を考えます。

家族が来た時に考えを聞いたりして。そうしないと、仮に退院後リハビリが必要になった時に退院の日にリハビリの手配をしたら遅いんですね。

退院後すぐにリハビリが開始できるように、途切れることなくケアがずっと継続していくわけです。

小児も成人もやり方は同じです。

 

そこはナースが把握していなければ進んでいかないということですか?

 

壽子:そういうことが多いですね。

医学的にはよくても医学だけでは治せないし、家族の協力を含めてトータルで回復しないとダメですからね。

 

それは重要な視点ですね。

日本は医療がメインで、医療だけでは治せないという概念が薄いのかなと思います。

家族は他の医療スタッフも含めて継続的にという視点がほしいですね。すごく重要で大きな違いですね。

 

壽子:あとは在院日数が少ないというのはありますね。

もともとオーストラリアは早く退院させる環境なので、どうしてもそうなりますね。

 

日本も昔に比べたら在院日数を削ってはいますが、その部分の教育が足りないですね。

ただ削るだけではなくて、削ったらその後どうなるのか、連携なしにただ出すだけでは意味がないですね。

 

壽子:そうですね。受け皿をきちんとしないと無理ですね。

完璧ではないですが、しっかりしています。

次に行くところ次の受け皿がしっかりしていないと、我々も患者さんを送れませんからね。

通院に関してもすばらしい環境が整っているんですよ。

リハビリで通院する必要が出てきた時に、病院に通う足がない人もいます。

そういう時は病院に登録されている何百人ものボランティアの中から、送迎専門の人がリハビリのために無料で送迎してくれるんです。

この国はボランティア精神がすごいんですよ。「息子が連れてきてくれなかった」ということがありません。

食事は日本、有給休暇はオーストラリアに軍配

 

日本にはあるけれど、オーストラリアでこうだったら、という点は何かありますか?

 

壽子:食事ですね。

病院食も含めてあまりよくありません。

いろいろな国の方たちが住んでいますから、自分の国の食事がしたい、という人も多いので家族が準備して持ってくることも多いです。

食事制限ある場合を除いて。

以前入院したことがあったのですが、スタッフや友人たちが交代で日本食を作ってくれました。

体調を崩すと日本食の方がいいですね。

栄養とらないと回復も遅いですから、そこは大きいですね。

 

オーストラリアで生活していて楽しんでいることはどんなことでしょう?

 

壽子:長期休暇ですね。

有給休暇としてだいたい年間4週間とれるんです。

それを活用していろいろな国に旅行行けるのがいいですね。

子供たちがドイツとアメリカにいるので、そこを拠点としてフランス、スペイン、プラハなどヨーローッパ方面に行くことが多いですね。

普段の休日は掃除洗濯など家事に追われて終わってしまうことが多いです。

 

最後に、日本の看護学生・看護師に向けてメッセージをお願いします。

 

壽子:看護学校・大学での勉強は基本中の基本です。

卒業したから1人前ではなく、卒業して初めて一歩その道を踏み出すことができる、という段階です。

そこからまだまだ勉強するんだ、先が長いんだという覚悟が必要ですね。

看護師は命を預かる大変な仕事ですから中途半端な気持ちではできません。

前向きな思考で毎日勉強して、そこから先は自分の道が始まります。

今は看護師も病院勤務だけじゃないですし、いろんな国で活躍している日本人看護師がいるので、日本だけにとらわれず、全世界に目を向けてほしいですね。

看護師は世界各地で必要とされていますから、道はたくさんあると思います。

ぜひ頑張って自分の道を切り開いていってほしいですね。

 

 

シンカナース編集長インタビュー後記

壽子さんは全身からエネルギーが溢れている!という雰囲気の方でした。

海外で看護を行うという部分のご苦労が沢山あるんだろうなと固定概念のあった私の考えを吹き飛ばしてくださるお話でした。

日本の看護、オーストラリアでの看護、両面の良い部分をうまくご自身で融合され、それを日常的に実践されているお姿はとても輝いていらっしゃいます。

壽子さんのように、住む場所が日本でも、海外でも自らの看護観、そして信念を持ち看護を提供することの大切さを学ばせていただきました。

壽子さん、大変貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました!

 

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病院概要

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中 友美
A-LINE株式会社 代表取締役社長 シンカナース編集長
北区医師会看護高等専修学校 東京都立公衆衛生看護専門学校 東洋大学文学部国文学科 明治大学大学院グローバルビジネス研究科 経営管理修士(MBA) 日本大学大学院総合社会情報研究科 博士後期課程在学中 ニュージーランド留学 A-LINE株式会社/代表取締役社長 東京医科歯科大学非常勤講師 著書『わたしの仕事シリーズ2 看護師』新水社