看護師を守るのは誰だ?〜柏市立柏病院に関する報道を振り返る<前編>

看護師を守るのは誰だ?〜柏市立柏病院に関する報道を振り返る<前編>

  • 2017年3月27日
  • コラム
看護師を守るのは誰だ?〜柏市立柏病院に関する報道を振り返る<前編>
看護師を守るのは誰だ?〜柏市立柏病院に関する報道を振り返る<前編>

患者さんが亡くなったのは看護師のせい?!

 

今月初旬こんなニュースが流れたのをご存知でしょうか。

 

パーキンソン病患者 病院に配車断られ…男性遺体で発見

千葉県柏市内の老人ホームに入居していたパーキンソン病患者の男性(72)が昨年12月、市立柏病院で介護タクシーを呼ぶよう頼んだところ断られ、約1カ月後に別の場所で遺体で発見されていたことが病院関係者らへの取材で分かった。男性は要介護3で歩行にはつえが必要だったが、直線距離で約3キロあるホームまで歩いて帰ろうとした可能性があるという。

病院関係者らによると、男性は昨年12月下旬に同病院で診察を受けた後、介護タクシーを呼んでホームに帰ろうとした。電話をかけるのに必要な現金を持ち合わせていなかったため、病院案内窓口で電話を依頼したが看護師から「対応は難しい」と断られたという。

男性は「そうですよね」と言って立ち去ったがその後行方が分からなくなり、ホーム側はその日のうちに病院と警察に連絡。1月下旬になって病院から約1.5キロ離れた川の近くで遺体で見つかった。死因は凍死で、行方不明になった日が死亡日とされたという。現場は空き地や草むらが広がる道路からは少し離れた場所だった。

病院の対応と男性の死亡の因果関係はわからないものの、6日にあった市議会一般質問では病院の対応を疑問視する声が上がった。市保健福祉部の佐藤靖理事は「男性には個々の患者の要望に応えるのは困難と伝え、理解もいただいた」と説明。質問に立った末永康文市議(護憲市民会議)は取材に「1人で帰るのが無理と気づかないのは問題。丁寧に対応すれば命は奪われなかった」と批判した。

病院は取材に「外来患者は1日500人以上おり、対応には限界がある」と話している。

(毎日新聞3月7日掲載記事より http://mainichi.jp/articles/20170308/k00/00m/040/136000c)

 

末永市議のコメントをはじめ、SNSでは「悪いのは看護師だ」「電話くらいしてあげればいいじゃないか」という論点で議論が進められているようです。

今回の報道に限らず、1人をとことん叩いて悪者にし尽くすという傾向は近年よく見られる姿です。

 

でもちょっと待って。

 

看護師の対応は本当に悪いものだったのでしょうか?

対応した看護師についての詳細は語られていないため、真実がどこにあるのか、現時点で明らかにすることはできません。

考えられる可能性としては以下の2つ。

 

1.外来で日頃からこの患者さんを対応している看護師 

2.たまたま窓口にいて、この患者さんとは初対面だった看護師 

 

「1人で帰るのが無理と気づかないのは問題」とありますが、皆さん想像してみてください。

 

杖を使っているとはいえ、1人で歩いている患者さんを前にして、仮に2の状況にあった看護師だった場合、タクシー依頼のやりとりだけで「1人で帰るのが無理」と看護師はアセスメントできたでしょうか?

また、1の状況にあった看護師だったとして、この患者さんがその後「1人で帰る」と予測できたでしょうか?

 

結果として患者さんは「1人で帰る」ことを選択したわけですが、その選択は正しかったと言えるのでしょうか?

市立病院の規模であれば、病院の玄関には客待ちのタクシーが停まっていることが多いと考えられます。

なぜそれを利用せずに歩いたのか。どこか立ち寄る場所があったのか。

1.患者さん

2.看護師

3.病院

今回の報道からこの3者の問題が浮かび上がってきます。

 

病院の見解は

 

柏市立柏病院はこの件に関し「私ども病院としましては当時の状況を次のように認識しております」として院長名でホームページ上に説明文を発表。

 

患者様は2週前から傷の処置で当院に通院されており、12月21日午前、来院されました。院内での移動は杖を利用していたとはいえ、介助もなくお1人で移動されていました。診察後、診察案内カウンターでタクシーを頼まれ、応対した看護師は「お1人、お1人に対応するのは難しい」旨、返答いたしました。患者様は「そうですよね」と述べられ、その場を立ち去られました。

日ごろから患者様を思いやる気持ちを忘れないようにと、病院の理念に掲げてまいりましたが、このような結果になってしまったことを大変残念なことと受け止めております。

当院といたしましては今回の出来事を真摯に受け止め、更に職員教育等に取り組んでまいります。

(柏市立柏病院ホームページより http://www.kashiwacity-hp.or.jp/news/detail.php?action=news&id=10108)

多くの問い合わせや非難等が病院に寄せられたのでしょう。

状況説明のみにとどめていますが、今回の件について病院という”組織”の対応はどのようなものだったのでしょうか?

今後、柏病院で行われる職員教育等はどうなっていくのでしょうか?

「患者様を思いやる気持ち」に沿った行動は、1日の外来患者500人、1人1人の要望すべてに応えることなのでしょうか?

 

みなさんがこの看護師だとしたら、看護部長だとしたら、患者の家族だとしたらどのような対応をしますか?

 

高山 真由子
シンカナース副編集長
慶應義塾看護短期大学  東海大学健康科学部看護学科 看護学士  早稲田大学大学院政治学研究科 ジャーナリズム修士  ニューヨーク留学  慶應義塾大学看護医療学部 慢性看護学実習指導  東海大学健康科学部看護学科 在宅看護学実習指導  東京都御蔵島村 保健師  シンカナース副編集長