発達障害の理解は深まった??

発達障害の理解は深まった??

  • 2017年2月23日
  • コラム
発達障害の理解は深まった??
発達障害の理解は深まった??

発達障害という言葉はいつから使われているの??

皆さまは、発達障害という概念をどのようにとらえられているでしょうか。あくまで、筆者個人的感想ですが発達障害という言葉ここ何年かの間に広く周知されたと感じるようになった一方で『発達障害の理解についてはむしろ誤解されて広まってしまっているように思えてなりません

発達障害という概念が医療やメディア業界を中心に急速に話題に上がるようになったのは、まだ10年もたちません。あまり知られていませんが、発達障害については早くから論じられており、欧米では1963年に法律用語として誕生、そのことわが国で1970年代初頭に紹介されています。また、医学では少し遅れて1987年にDSM-Ⅲ-Rではじめて概念化されています。このように、何十年も前から発達障害という言葉が使われており、そして議論・研究されているわけですが、いわゆる“専門家”であっても、発達障害に対する“考え方”や“捉えかた”は様々である印象を受けます。まっさきに理解しておかなければならない立場である私たち臨床の看護師でさえも未だに十分な知識を持ち合わせていません換言すれば、“解釈に混乱が生じている状況にある”ともいえるでしょう理解のむつかしさの背景を探るため、少しだけ掘り下げてお話を整理します。

発達障害の理解を難しくさせている背景には解釈を複雑にさせている背景がある

解釈の混乱を招いている要因の一つ診断基準の観点から論じてみたいと思います。アメリカ精神医学がつくっているDSM(精神障害の診断と統計マニュアル)は、2013年にDSMTRからDSM5に改定されました。改定によって、広汎性発達障害(PDD)という概念自閉症スペクトラム障害/症(ASD)という概念に置き換えられたことは最も大きな変更点の一つと言えます。さらにDSM-5ではNeurodevelopmental Disorders(神経発達障害群)という疾患群のなかに、ADHDやLD、知的能力障害の診断が含まれるようになったことも画期的な変更点と言えるでしょう。このような診断基準の見直し自体は、じつは非常に合理的な部分が多いのですが、『臨床の看護師が発達障害を理解する』という観点に立てば、解釈の混乱を招く要因になっているともいえるでしょう。

診断基準にみるような(とりわけ発達障害の概念の理解など)時代によってとらえ方が大きく変更される解釈が非常に複雑な情報は、現場の看護師にいきわたるには時間がかかります(DSMの英文をどのように訳すのかという議論なども要因の一つです)実際、一定の教育を受けたベテラン看護師からも、「よくわからない」という声をききます。このような広まりの遅さが専門家と臨床看護師(あるいは教育現場)との間に理解や認識のズレを引き起こし、医療現場の混乱を招いているのではないかと筆者は考えています。診断基準以外にも、さまざまに発達障害が定義されていることも理解を複雑にさせています発達障害者支援法に規定されている定義のほか、日本発達障害連盟が規定している定義、さらには、各専門家が考える定義なども多岐にわたるのが現状です(定義のばらつきについては、それぞれの立場から必要なことをより適切に伝えるために別枠で定義づけしているという背景もありますから、それ自体を否定するものではありません)。

発達障害に関する話を具体的に掘り下げて本質を理解するには、かなり複雑で時間のかかる作業です。また、発達障害か発達障害でないか、といったような一見単純に見える議論の背景にも超複合的な要素があるため、様々な角度から論じる必要があります。このコラム欄を通じて、読者のみなさまにもすこしでも発達障害を理解していただきたいとおもいますので、次回以降、インターネット上や一般的な成書ではほとんど論じられていない視点から深く踏み込んでお話ししていきたいと考えています

参考文献

日本発達障害連盟(2016発達障害白書2017年版(CD-ROM付き),株式会社明石書店,東京.

田邉 友也
医療法人聖和錦秀会 阪和いずみ病院 大阪府立大学大学院看護学研究科博士前期課程修了 精神科認定看護師 精神科における薬物療法の看護や発達障害に関する講演依頼・実績多数