インタビュー#6 シリーズ心肺蘇生実践編〜登山や駅伝大会中に人命救助できますか? <後編>

インタビュー#6 シリーズ心肺蘇生実践編〜登山や駅伝大会中に人命救助できますか? <後編>

  • 2017年2月20日
  • インタビュー
インタビュー#6 シリーズ心肺蘇生実践編〜登山や駅伝大会中に人命救助できますか? <後編>
インタビュー#6 シリーズ心肺蘇生実践編〜登山や駅伝大会中に人命救助できますか? <後編>

<前編>に引き続き、鈴木崇史さん・咲子さんご夫婦のインタビューをお届けします。インタビュー後編では、国際山岳看護師に関することや、その後お2人が駅伝大会中に遭遇したAEDを使用して救命したケースについてお話を伺いました。

命を助けたその先の人生も考えて

救助された方は助かったのでしょうか? 

咲子:手術を受けて回復されたようです。後日ご本人からお礼の手紙を頂きました。「もう少ししたら山に登れそうです」とありましたが、小学生が書いたようなつたない文字だったので、何かしら脳にダメージが残ったかもしれません。そこから先、本当に登山に復帰されたのかはわかりません。

一命をとりとめたことはよかったですが、しっかりと頭部保護した状態でヘリコプターに収容されていたら状況は変わっていたかもしれませんね。 山岳救助において、助けた後のその人の人生ができるだけ負傷前と変わることがないように、という視点が加わるといいですね。

↑普段お2人が使用している登山グッズ

新たな資格「 国際山岳看護師」

日本登山医学学会認定の「国際山岳看護師」が誕生しましたが、この経験から資格取得を考えたことはありますか? 

咲子:そうですね。この救助をしてから山岳看護師にも興味が湧いて、いろいろ調べました。理論・実技・実習など国内山岳看護師を取得するだけでも最短で78時間の講習を受けることが必要ですし、国際山岳看護師を目指そうとすると海外遠征する必要も出てきて、講習の時間数はさらに増えます。仮に今資格を取っても子供が小さいので山には行かないし、受講するにも休みが取れないし・・・と調べてみたら課題がたくさん出てきて結局資格を取らずにいますね。

資格を取るにも時間の捻出などの調整が必要ですし、ただ資格を作っても、その資格をどうやって活用するかまで考えないと、取たいと思う人が出てこないでしょうね。取る人の努力に頼るだけでは限界がありますね。 

国際山岳看護師に関する情報についてはこちらをご参照下さい → http://www.jsmmed.org/pg69.html

駅伝大会中に人が倒れた!

その後も何か救助活動に携わったことはあったのでしょうか? 

咲子:登山中ではないのですが、2年前2015年3月に出場した駅伝大会で、参加者が倒れた現場に出くわしてAEDを使ったことがありました。私は走り終わって沿道から仲間を応援していたのですが、20〜30代と思われる男性が目の前でものすご勢いで倒れたんです。すぐに痙攣していたので近づいたら、意識がなく脈が触れなかったので気道確保後私たちは心臓マッサージを始めました。ちょうどすぐそばに救急車がスタンバイしていたことが功を奏してAEDを実施して心拍が戻りました。病院外で初めてAEDを使いましたが、医療施設ではないことや、いろいろな人がいる場所でスムーズに救命処置を行うのは難しいと感じましたね。

この経験をしてからは、普段ジョギングで走るところのどこにAEDが設置されているのかを確認するようになりました。また、周囲の人の誰にAEDを頼むか、といった視点も持つようになりました。

たまたま咲子さんの目の前で倒れて、たまたま救急車がそばにスタンバイしていた。「たまたま」が生んだ奇跡ですね。全員がAEDのトレーニングを受けているとは限りませんし、とっさのことに動けるかどうか、動ける人を見極める目を私たちが持つことが重要ですね。 

最後に山が好きな、もしくはこれから登山を始めようとしている看護師・看護学生に向けてメッセージをお願いします。 

崇史:普段仕事でずっと人と向き合う仕事をしているので、登山をしていると人の少なさを楽しめるところがいいですね。ずっと自分を相手にしていられる時間を大切にしたいです。大自然と向き合えるのも楽しみの1つです。登山でエネルギーチャージしてまた仕事を頑張れる。これに尽きますね。

シンカナース副編集長インタビュー後記

登山とスノーボードとランニングが大好きなお2人の救助経験は、救命救急センターでの勤務経験が活かされていました。本格的な登山でなくても、例えば高尾山でも同様のことが起こる可能性は十分あります。ケガをしないように登山者本人が注意を払うことは大前提ですが、目の前で起こってしまった時に自分がどんな行動をとれるかを考えておくことも登山者に求められているのだと思いました。使い捨ての手袋は救助活動以外にも様々な場面で使えますから、登山には必須の携行品と言えそうです。

また、マラソン大会や駅伝大会では救護スタッフが充実していることが多いですが、それでもすべてを網羅できるわけではありません。誰かの助けを呼ぶこと、周りに協力を求めること、これらは医療職者でなくても誰もができることです。

さらに、山岳救助の問題点も浮かびあがりました。救助ヘリコプターの現状については日本登山医学会でも課題に挙げられているとのことでしたが、解決には多くの壁がありそうです。

倒れている人がいたら「意識を確認する」「協力者を集める」。登山中に起こったことでも交差点で起こったことでもやることに変わりはありません。私たちが楽しく登山や駅伝を続けるためにも「たまたま助かる」のではなく「当たり前に助かる」世の中であってほしいと願わずにはいられません。

鈴木崇史さん・咲子さん、貴重なお話をありがとうございました。

鈴木崇史さん・咲子さんのインタビュー<前編>はコチラ

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高山 真由子
シンカナース副編集長
慶應義塾看護短期大学  東海大学健康科学部看護学科 看護学士  早稲田大学大学院政治学研究科 ジャーナリズム修士  ニューヨーク留学  慶應義塾大学看護医療学部 慢性看護学実習指導  東海大学健康科学部看護学科 在宅看護学実習指導  東京都御蔵島村 保健師  シンカナース副編集長