看護師✕子育て 〜妊婦生活と社会

看護師✕子育て 〜妊婦生活と社会

  • 2017年1月26日
  • コラム
看護師✕子育て 〜妊婦生活と社会
看護師✕子育て 〜妊婦生活と社会

優先席から見える景色

お腹が大きくなるにつれ、電車やバスの突然の揺れに備えるべく、これまで無縁だった「優先席デビュー」を果たしました。もちろん席が空いていれば座れますが立つこともしばしば。急ブレーキや急な揺れにはいつもより緊張してしまいます。「つわりなし、腰痛なし、体力あり」という恵まれた身体状況ということもあって困ることはありませんでしたが、つわりの中通院等で電車を使う妊婦さんはさぞ辛いだろうと思いながら揺られていました。

ある日の仕事帰り、人身事故で電車がしばらくの間止まり、運転再開したものの通勤ラッシュと重なりものすごい混雑の中で乗らざるを得なかったことがありました。もちろん席は空いておらずかろうじて座席前のつり革を確保。10分ほどで斜め前の席が空いたのですが、社会における暗黙のルールでは「空いた席の前に立っている人」が座れる権利を持っています。「あぁ〜惜しい、座れないや」と残念な気持ちになっていたところに、私が妊婦と気づいたのか隣の人が権利を放棄して私を座らせてくれました。あの時自分も疲れているはずなのに「どうぞ座って」と言ってくれた会社帰りであろうおじさまには感謝を伝えたいです。優先席に座ることで今まで見えてこなかった景色をたくさん見ることができました。こういう場面でこそ、その人の人となりや本性が集約されるのではないでしょうか。

仕事としばしのお別れ

出産が近づくにつれ1つ、また1つと仕事が産休に入っていったのですが、「世の中に必要とされなくなった」という気持ちになっていることに気づきました。やることが何もないよりは少しでも予定があった方が生活リズムが整うと思ってギリギリの38週まで仕事をしていましたが、実は本心は仕事にしがみついていたかったのかもしれません。出産を経験した人の中には同じ思いを抱いた方もいらっしゃるのではないでしょうか?これまでずっと社会の一員として微力ながらも役割を果たしてきたつもりなのに・・・仕事をしなくていいうれしさと社会から切り離される寂しさと、複雑な気持ちがジワジワとこみ上げてきました。社会とつながっていることで自分の存在価値を見出していたのでしょう。 もちろん今は「母になる」という最重要課題を抱えているのですが・・・。

これまでの転職経験から「無職を満喫すること」を楽しんだことはありましたが、それは「次の就職」という保障があったからできていたこと。しかし今回は違います。無事に出産できるのか、産まれた子供は順調に成長するのか、そして産休後本当に現場に戻れるのか、さらに私が戻る場所はあるのか、ホルモンバランスのせいもあってか不安と期待が入り混じった複雑な気持ちで毎日を過ごしたのでした。

高山 真由子
シンカナース副編集長
慶應義塾看護短期大学  東海大学健康科学部看護学科 看護学士  早稲田大学大学院政治学研究科 ジャーナリズム修士  ニューヨーク留学  慶應義塾大学看護医療学部 慢性看護学実習指導  東海大学健康科学部看護学科 在宅看護学実習指導  東京都御蔵島村 保健師  シンカナース副編集長