看護師✕子育て 〜妊婦生活と仕事

コラム

女性が9割を占める看護の職場。必然的に妊娠・出産・育児を経験するスタッフも多いことでしょう。しかし一方で、妊娠後も仕事を継続し、切迫流産・切迫早産といったトラブルを経験する看護師も多くみられる現状もあります。

出産まで元気に働くぞ!・・・あれ?!

昨年待望の妊婦になった私。妊娠しても産休まではいつも通り仕事する気マンマンでした。患者さんを体位変換したり、車いすに移乗したりといった負荷の高い仕事はしていなかったので、「私に限って切迫流産等になることはない」と見込んでいました。つわりもなく「妊娠している」こと以外は他の人と何ら変わらない生活。しかし順調に経過していてもいつ何が起こるかわからないのが妊娠中常に隣り合わせにあるリスクです。

切迫流産と仕事

妊娠2ヶ月目に突然の出血に見舞われ、切迫流産の診断を受け自宅安静となりました。当日から1ヶ月間すべての仕事をキャンセルするという、今までに経験したことのない事態に陥ります。当時フリーランスの看護師として様々なフィールドで勤務していた私は、いわゆる「1人職場」の勤務先がいくつかあり、そこに迷惑をかけることを最も恐れていました。結局社会人として最もしてはならない、仕事の「前日のキャンセル」「当日のキャンセル」をしてしまったのです。また、妊娠直前に決まった新しい就職先も泣く泣く辞退することになりました。1週間前のキャンセルならまだしも当日キャンセルは職場に多大な迷惑をかけることになります。また、切迫流産という理由ではありますが、いわゆる「ドタキャン」は職場からの信頼も失うのです。周りの人たちに迷惑をかけて申し訳ないやら悲しいやら、赤ちゃんが無事かどうか心配になるやら、頭のなかはグルグルグルグル、いろいろな思いが駆け巡りました。

結局1人職場の勤務先は、何かあった時の代わりいないことがネックとなり、退職の道を選びました。病院では少ないですが学校保健室・産業看護等では1人職場であることが多いフィールドです。こういう時、1人職場は一瞬で危機的状況に陥る可能性があることを思うと、採用面接で妊娠希望の有無を問うのもしょうがないのかもしれない、と考えるようになりました。決してハラスメントではなく、企業や学校の運営を考えると必要なことなのかもしれません。妊娠中何も異常が起こらずに経過することがいかに奇跡的なことなのか思い知らせれました。

看護師である前に1人の妊婦  

私にできることはただただ静かに過ごすこと、そして神様に祈ることでした。こういう時にスマホで情報収集するとネガティブなことばかりが目について、あることないことを妄想してしまうため心身ともによくないということも身にしみてわかりました。私自身看護師・保健師として働いてきて、妊婦さんや子育て中のお母さんに関わることは多くありましたが、自分の妊娠となると看護師の自分はどこかに行ってしまうものです。この時が妊娠経過の中で最も妊婦らしい日々だったと感じています。不安・焦りに心のほとんどを支配された私を助けてくれたのは出産を経験した友人たち。  話を聞いてくれるだけでとても救われましたし、経験からくる言葉はとても信頼できるものでもありました。

切迫流産をなんとか乗り切り、安定期に入った時の安堵感はなんとも言えないものでした。その後は慎重になりつつもマタニティスイム、マタニティヨガをはじめとした妊婦生活を楽しみ、細々とではありますが38週半ばまで仕事ができたのでした。